連載「憧れの逸品」No.24 ハッピーエンドを演出するティファニーの紙コップ。

ホーム＆アクセサリーコレクションがネットでも大いに話題になっている。分度器、定規、ストロー、紙コップ…およそラグジュアリー・ブランドとは相容れない、いわゆる日用品をモデルにしているのだから（しかも素材の多くはスターリングシルバーだ！）、それももっともだろう。

奇を衒ったコレクションにみえて、〈ティファニー（TIFFANY & CO.）〉にそのような気持ちはさらさらない。

実業家ダイヤモンド・ジム・ブラディが女優リリアン・ラッセルへの贈り物としてつくらせたゴールドのオマル！が最たるものだが、〈ティファニー〉には酔狂なカスタマーが多かったようで、ほかにも手錠を模した懐中時計やミニチュアの馬車などその手の注文は枚挙にいとまがなかった。これに嬉々として応えてきたのは、美しいものは特別な機会に限定されるべきではない、という〈ティファニー〉の思いゆえであり、ホーム＆アクセサリーコレクションはそういう背景があって生まれた。

イヴまでに残された時間はあとわずかだが、ウィットを理解する彼女なら贈り物としてもいい。

些細なことで仲違いしたふたり。あなたは勇気を振り絞って呼び出し、おもむろにスターバックスの紙コップを掲げる。怪訝そうな彼女。受けとった彼女は紙コップのなかにもうひとつのコップが入っていることに気づく。それが〈ティファニー〉とわかって…なんて往年のハリウッド映画のようなハッピーエンドが待っているかも知れません。