先日、試写会プレゼントの募集をしたところ、多くのひとから応募メールが殺到したのが、映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』。
現時点ではDVD等になっていないので、いまなお多くの人が観たいと切望する青春映画『アメリカン・スリープオーバー』、新しきホラー映画と評判になった『イット・フォローズ』を手がけたデヴィット・ロバート・ミッチェル監督によるこの最新作は、10月13日(土)から全国公開します。『アンダー・ザ・シルバーレイク』の主役を務め、アメリカを代表する俳優のひとりであるアンドリュー・ガーフィールドに、フイナムは単独でオンラインインタビューを敢行しました。
アンドリュー・ガーフィールドってどんなひとだっけ? と、ド忘れしている方に説明しますと、デビッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク」』(10)でゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネート。窪塚洋介や浅野忠信など数多くの日本人が出演したやマーティン・スコセッシ監督『沈黙 サイレンス』(16)で主人公のロドリゴ神父を演じ、メル・ギブソン監督の戦争ドラマ『ハクソー・リッジ(原題)』(16)でアカデミー主演男優賞にノミネートされています。
つまりは、多くの著名監督も認める演技派であると同時に、『スパイダーマン』シリーズをリブートした『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(12、14)でスパイダーマンを演じるなど、イギリス育ちにしてアメリカを代表する顔とも言える俳優なのです。
本作では、独特かつ強烈な世界観が最初から最後までぶっ通されるのですが、そのジェットコースターに合わせて、アンドリュー・ガーフィールド自身も新しい境地へと踏み込んでいます。
頭はいいのにちょっと情けないこの主人公サムと、似ても似つかないはずの“ハリウッドスター”こと、アンドリュー・ガーフィールドが、「サムと共通点がある」というその真意とは? 役作りというセンシティブな世界の一端が垣間見えるようなお話を伺いました。
ー本作は、コメディのようであり、サスペンスのようにも感じました。演じる側はどんな気持ちでしたか?
アンドリュー・ガーフィールド(以下、アンドリュー):確かに本作は、コメディでありサスペンスであり、ミステリーでスリラーでもあります。いろいろな要素が混ざっている映画ですが、ある種のシンプルさもある。例えるなら、『グーニーズ』とデイヴィッド・リンチ監督の作品が一緒になったようなところがあると僕は思います。ただ、演じる側としての気持ちは、他ジャンルの作品を演じるのとまったく一緒です。
つまりは、「リアルに演じたい」ということ。本作は、非常に変わっていてクレイジーな映画ですが、僕が演じたサムをリアルな人物として観客に感じてもらいたいという想いでした。物語の中で、サムが直面する「奇妙だけどリアルな出来事」というのは、実際の人生で起こりうる事と同じですよね。理解できない変な事が起きても、とりあえず直面しなければいけない、というのは、僕たちの人生と重なるので、そいういったところをリアルに演じたいと思っていました。サムを演じるのは本当に楽しかったですし、デヴィット・ロバート・ミッチェル監督の作品がとても大好きです。
ー出演の決め手となったものは、なんでしょうか?
アンドリュー:これがデヴィット・ロバート・ミッチェル監督の作品だから、ということに尽きます。あとは脚本がすばらしかったから。とてもユニークな脚本だったんですよ。最近では、本作のようなストーリーが映画として製作されにくい状況だと思いますし、これほど非常にクリエイティブなヴィジョンがはっきりしている脚本も珍しい。僕は、監督のヴィジョンが大好きで、ぜひ一緒にやりたいと思ったわけです。ただ一方で、なぜやりたいと思ったのかうまく説明できない部分もあるんです。決め手をうまく語れないミステリアスさは、どこか本作が持つミステリアスな部分に通じている気がします。
ー感情移入が必ずしも必須ではないとは思いますが、サムとアンドリュー・ガーフィールドさんが共通するものはありますか?
アンドリュー:僕とサムはよく似ている部分があると思うんです。例えば陰謀論の類などは大好きなところとか(笑)、目には見えないけれど、何かを感じるというものにすごく興味があって、そこはサムと同じだと思います。サムがロサンゼルスの神秘的な世界の中心に存在したいと考えるように、僕自身も、色々な事とコネクトして、あらゆるものの中心に存在し、探り、何かを知りたいという風に思っています。「これは何の意味があるのだろう」「人生の意味は何だろう」「私たちは何をすべきだろう」等と考えることが二人とも大好きなんです。
ー役のキャラクター像というものは、その役に対してだけでなく、アンドリューさんのさまざまなものへの好奇心によって生まれるのかもしれませんね。監督とはどんなやり取りをしてこの役を作り上げたのでしょうか?
アンドリュー:脚本にすべて書かれていたので、役についての話は、実はあまりしませんでした。監督がどうしてサムというキャラクターを描いたのか、どういう気持ちで物語を書いたのか、というのはあまり話さなかったんです。恐らくミッチェル監督は、僕なりの解釈で演じてほしいと思っていたんじゃないかな。会話自体は色々しましたし、素晴らしい話もたくさんありました。それはキャラクターについてではなく、むしろお互いを信頼するため、共通点を見つけるための話がほとんどだったと思います。ただ、脚本にも、劇中でサムが住んでいる部屋の中にも、彼のバックグラウンドについてはあまり描かれておらず、それについては監督は話をしてくれました。サムのバックグラウンドを知ることは、僕にとってとても重要なものでした。
ーたしかに、サムがこの映画で描かれる状況より以前には、どんな生活やキャラクターだったのかは、描かれないですね。ファミコンや音楽などさまざまなカルチャーが凝縮されているので、監督はオタクなんじゃないのかなと思ったのですが…?
アンドリュー:ミッチェル監督は、オタクというかすごくこだわりが強い方です。ヴィジョンにしても、プロットにしても、セットデザインにしてもそうなのですが、自身の考えとちがうと、何度でもやり直して完璧に自分のヴィジョンを築き上げようとする。監督のそうした妥協しない部分はすばらしいと感じましたし、すごくインスパイアされました。
ー本作のストーリーに関するお話ですが、なぜサムは、数時間過ごしただけのヒロイン・サラに固執するのでしょうか?
アンドリュー:それは、サムが子供だからだと思います。だから、本当の意味の固執ではなく、未熟で子供っぽい恋愛に対する彼自身の考えに固執しているんだと思います。
ーサムのように、アンドリューさんご自身が、これだけは固執してしまうというものはありますか?(笑)
アンドリュー:僕はもう35歳なので、そういった未熟な固執は傍から見ても麗しくないので、なるべく大人でいようと思っています(笑)。
ー今回のような、三枚目の役、スパイダーマンのような二枚目な役、演じたいのはどちらでしょうか?
アンドリュー:好みは特にありません。ムードによって毎回変わる気がします。朝食もムードによって変えますよね? 「今日はベーコンエッグがいいな」とか「今日はグラノーラにしよう」とか、「今日はあまりお腹が空いていないな」とかって。同じように「今回はヒーローをやってみたい」とか、「今回はヴィランをやってみたい」とか、その日、その時の気分で「自分のどんな局面を探りたいか」を僕は考えます。俳優というのは、ある意味色々な自分の側面を探ることができる職業なので、僕はすごくラッキーだなといつも思っています。
役と向かいながら、自分の新しい局面を掘り下げることで、役へとつながるトンネルを探そうとする、アンドリュー・ガーフィルドは、自分自身と世界に対する探究心と好奇心が人一倍なのかもしれません。そして、あらゆるものを知りたいというその欲求こそが、なにか新しいものを生み出す源泉なのかもしれません。そんなことを感じるインタビューでした。
Text_Shinri Kobayashi
『アンダー・ザ・シルバーレイク』
10月13日(土)公開
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル(『イット・フォローズ』)
出演:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ ほか
http://gaga.ne.jp/underthesilverlake/
Source: フィナム