ハーレムでの生活、街、人を切り取った血の通った写真集Once in Harlemが発売。

マンハッタンの北部に位置する街ハーレム。今でこそ改善されたといいますが、1980年代のこの地域には治安の悪さからくる張り詰めた緊張感があったようです。当時、確実に特別な空気が流れていたハーレムに移り住み、街との対話を繰り返した写真家・内藤カツの「Once in Harlem」が発売されました。

ニューヨークに住み始めて3年が過ぎようとしている頃、ハーレムに探索に出かけた。当時の生活環境からすると肝試しという言い方が適切かも知れない。バックパックには35ミリカメラとレンズ2本。露出計とTRI-Xが数本。安全のためカメラは撮りたい衝動に駆られた時のみ周りを見渡して、身の安全を確保してから取り出す。その行動が途中から嫌になった。隠れて撮影しているようだ。何か不自然。無性にハーレムを撮影したいと思った。（中略）

内藤の2冊目の作品集となるこの『Once in Harlem』。凍てつくような空気と、妙な高揚感が同時に横たわっていた26年前のハーレムに住んでいたからこそ切り取ることのできた、特別な作品と相成りました。