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What the hip think about? 注目の人物にインタビュー。greenz.jp・鈴木菜央

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What the hip think about?

注目の人物にインタビュー。greenz.jp・鈴木菜央

その道のプロや識者に話を聞き、「なるほど!」と膝を打つこと。あまりに規格外のひとを見て「何だ、これは!」と既成概念がぶち壊されること。こういった体験に勝ることはありません。アート、メディア、ライフスタイル、デザイン、マーケティング、政治など、さまざまなジャンルのなかで、鋭い視点と発想、卓越した技術と知識を武器に世の中をにぎわす、要注目の人物たち。雑誌『フイナム・アンプラグド』で毎号掲載してきた同企画が、ウェブのフイナムでもスタート。第三回目は、greenz.jp編集長の鈴木菜央さん。数年前に千葉県いすみ市に移住。その後、同市内でトレーラーハウスに家族で引っ越しを果たします。現在は、いすみ市にある築100年以上の古民家を改装した「パーマカルチャーと平和道場」を舞台に、“消費者”から“文化の創造者”へと変わるための実践的なワークショップを多数開催しています。いすみ市への移住と、どんな思いで活動しているのか。「パーマカルチャーと平和道場」の敷地内を散策しながら、鈴木さんに伺いました。

  • Photo_Aya Tozaki
  • Text_Satoru Kanai
  • Edit_Shinri Kobayashi

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鈴木菜央
76年バンコク生まれ。NPO法人グリーンズ代表理事、greenz.jp編集長。6歳より東京で育つ。高校卒業後、阪神淡路大震災のボランティアを経験、99年よりNGOアジア学院にて1年間自給自足コミュニティでの農的生活を経験。2000年より外資系建築コンサルタント会社に勤務、02年より3年間「月刊ソトコト」にて編集・営業として勤務。05年に独立、フリーランスとなり、06年「ほしい未来は、つくろう。」をテーマにしたWebマガジン「greenz.jp」を創刊。千葉県いすみ市在住。家族4人で35㎡のタイニーハウス(車輪付き)+小屋にて、小さくて大きな暮らしの実験中。2016年、築百年以上の古民家と2600坪の敷地で暮らしづくり、社会づくりを学ぶ「パーマカルチャーと平和道場」プロジェクトを開始。著作に『「ほしい未来」は自分の手でつくる』(講談社 星海社新書)。


土地の力や命の力が上回る場所に住みたかった。

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「パーマカルチャーと平和道場」プロジェクトとなる場所。

鈴木そもそもの話をすると、ぼくは大学卒業後の1年間を栃木のアジア学院(アジア農村指導者養成専門学校)で過ごしたんです。そこでは、食べ物はだいたい自給していて、仲間と一緒にいろんなものつくったり、直した。エンターテインメントも含めてDIYする暮らしがめっちゃ面白くて。東京に戻ってきてからは、ああいう暮らしがしたいとずっとチャンスを探ってました。アジア学院から数年経って、子どもが産まれたんです。子どもを抱いた瞬間に感じたのが、「かわいい」じゃなくて「おれ、このままではやばい」だったのね。この子が大きくなってお金がかかるようになってから「おれ、仕事辞めて好きなことで生きていくわ」とか言ったら、妻に飛び蹴りされるだろうなって想像できて。それではじめたのがgreenz.jp。立ち上げはすごく大変だったけど、好きなことを仕事にするのはなんとかカタチになった。で、次は東京じゃないところで面白おかしく生きたいというのは夫婦で一致していたから、子どもが小学校に上がる前には移住しようと。それで、あちこち探して回っているうちに、いすみにたどりついたんです。

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広さは35㎡、車輪の付いたタイニーハウスに暮らす。

いろいろな場所があるなかで、なぜいすみ市だったのでしょう。

鈴木まず距離感がぴったりだった。東京から1時間半圏内で、東京の文明というか、資本主義文明が力尽きて、土地の力とか命の力が上回る場所に住みたかったんです。もうひとつの条件は、土地が安いこと。土地が高いと、なにかを始めるにしても銀行にお金を借りて、事業としてやる以外になくなっちゃう。つまり、みんなから経済的価値がないと思われている場所に行きたかった。あとは、地域のコミュニティかな。やっぱり閉鎖的なところには行きたくなかったんですよ。それでいろいろ見ていたら、この地域の人はオープンだし移住促進を目的にしたNPOもあった。東京からの距離の近さ、土地の値段が安いこと、自然の力、そしてコミュニティが、ぼくの中では重要でしたね。

鈴木さんがgreenz.jpを始められたのは2006年。いすみ市に引っ越されたのが2009年ですね。

鈴木いすみに引っ越してきて、アジア学院でやっていた生活に向かっていきたいと思っていたんだけど、まぁなかなか思い通りにならない。ただ家が遠いだけ、という状態が数年続いて。「これじゃいかん!」と一念発起して、小さな暮らしをはじめたり、パーマカルチャーを学び始めたところでソーヤー海くんという、すごい仲間に出会ったのも大きい。海くんと一緒に、アメリカにある「ブロックスパーマカルチャー農園」に行ってしばらく滞在したんだけど、自然がつくり出す豊かさに圧倒された。テントで寝ていると、果物が木から落ちる音が聞こえるくらい、食べ物が豊富。保存食をつくってもつくっても追いつかないくらいフルーツがなることが、住んでいる人の最大のストレスらしい(笑)。家は自然素材で自分たちでつくる。資本主義経済にはほとんど依存していないから、時間も自由になる。だから、災害や経済危機が起きても大丈夫だし、人生の自由度が大きい。

東京に限らず、消費社会への依存度が高いと、災害や経済危機に対してすごく脆いんだけど、自然からのいただきものを多くもらう暮らし、仲間となんでもDIYでつくる暮らしは、安心度が高いし、すごいハッピーなんだよね。こういう暮らしと、文化を学べる場所を日本にもつくりたいと思っていたら、海くんもいすみに引っ越してきてくれて。そうしたら海くんの仲間経由で「パーマカルチャーと平和道場」プロジェクトのこの土地が見つかって、大家さんも地元のために役に立つならぜひ、ということで、はじまったという感じかな。

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この場をつかって実現したい3つのこと。

この『パーマカルチャーと平和道場』という場で、どんなことを実現しようと考えているのか教えてください。

鈴木ぼくらは、ここで3つのことやろうとしています。まず、自分とつながる技術。ぼくも含めてだけど、高度な消費文明社会のなかにいると自分がなにを求めているのか、どう生きたいのかを考えずに日々を暮らしている人がすごく多い。

惰性で生きている部分があるのは否めないですね。

鈴木ニュースサイトばかりを見ちゃったりとか、SNSにどっぷりつかったりとかね。そういう毎日を送っていると、人生で本当に大事なこと、大事なチャンスを見失ってしまう。そういう自分と、ちゃんとつながる技術――瞑想とかマインドフルネスを学ぶ場にしたい。

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鈴木ふたつ目が、暮らしをつくる技術。食べ物のつくり方は当然として、醤油や味噌づくりから物の修理、薪ストーブの設置、電気の自給から果ては小屋をつくれる技術までを学ぶ。3つ目が、社会をつくる技術。自給自足って一人でやると辛いだけだけど、仲間とつながりの中でやれば、難しくない。地域通貨をつくれば、支出も減るし、環境負荷も減るし、友だちが増えて楽しい。にわとりを共同で飼えば、ラクにたまごを自給する暮らしができる。旅行にも行ける。オリジナルの盆踊りをつくったり祭りをDIYすれば、地域がつながって、最高に楽しい。地域のZINEをつくれば、誰にでも地域をプロデュースできる。そうした社会のつくり方をここで実践しながら学ぶということをやりたい。そのためにも、ひとが来やすいように駅に近くて広い場所ということで、ここを選びました。

クラウドファンディングも活用されていますが、これだけのプロジェクトだと予算面で頓挫することはないのでしょうか?

鈴木びっくりすると思うんだけど、ここは予算ゼロなんですね。かかっている経費は今のところ家賃だけかな。都心だったら風呂なしワンルームも借りられないような金額です。体を動かしたい人はそういう作業で参加するし、クラウドファンディングみたいにお金で支援する人、また違う形で貢献したいという人もいる。いろんな人たちが集まって何ができるかをいま、実験しています。

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しかし、ものすごく広いですよね。

鈴木ぜんぶで2,600坪あります。ここは割と開けた場所なので、エディブルフォレストにしようと考えてます。エディブルフォレストというのは、見て楽しんで食べられる森のこと。高木から中くらいの木、つる性の植物、低木、草木、地面の下までたくさんのレイヤーで、いろんな食べられる果樹やら木の実、食べられる植物が育つ。今この足元に生えてるサラシナエンドウは食べられるけど、地面に空気中の窒素を固定してくれる植物だし、雑草だと思ってもすべての生き物に意味があって、それを活かせる知識や知恵があればいろんなことできるんです。

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この缶は、何ですか?

鈴木イノシシ除けですね。ここはずっとお隣さんが借りていて、ぼくらが来たことで畑を引き払うと言われたんだけど、いやいや一緒にやりましょうと。地元の人と共にパーマカルチャーをやりたい。お互いに活かしあう関係性をつくりたいので。地元のおじいちゃん、おばあちゃんたちって、ほんとになんでもできるんですよ。ひとりで開墾もするし、炭づくりもできて、あらゆる植物の植えどき、食べ方を知っている。おいしい漬物の漬け方や郷土料理も詳しい。そうした地元の方々に先生になってもらえれば、ぼくらがこじんまりとやるよりもずっと意味があるじゃないですか。

東京は“足りない不安”で攻め立ててくる。

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(さきほど庭を見せてくれた隣人から野菜のプレゼントが無造作に置かれているのに気がつく)なんだか昔話のようですね。

鈴木これが豊かさなんだよね。アメリカのブロックス農園なんかでも、とくに手間をかけずに食べきれないくらいの食べものが取れるわけですよ。そういうところで生きていると、余りがいっぱい出るからギフトしたくなるんです。

自然と人に分けたくなるんですね。

鈴木東京にいると、「お前にはスキルが足りない」「貯金が足りない」「仕事をクビになったら危ない」「自立しろ」とか、常になにかが足りないんじゃないかという不安に追い立てられて生きているような感じ。つい“東京”と言っちゃうんだけど、東京だけじゃなくて、地方都市もそうだし、田舎だってそういう経済に組み込まれていればそうなっちゃうんだよね。だけど、土地があって食べものが育てられたら、そこで暮らしのベースがつくれるわけだから、自分のスキルはそこまでなくても、仲間と助け合いながら生きていくことができる。ぼくが体験した、いつも不安に思わなくても生きていけるんだっていう自給自足の感覚をみんなにも知ってほしいし、ぼくももっとできるようになりたいんです。

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これまで以上に、持続可能生活には注目も集まっていますね。ただ、タイニーハウス然り、オフグリット(自家発電など、ライフラインに頼らない暮らし方)然り、どこまでやるかのバランスが難しいなと思うんです。

鈴木そうなんですよね。ぼくもトレーラーハウスに暮らしているけど、ミニマムな暮らしが得意なわけじゃないので。でも、実際に住むことによって本当にやりたいことができてきた。要は支出が少ないんですよね。家がまず安いでしょ。トレーラーハウスを480万、土地は150万で買ったんだけど、東京だと2人が住む部屋の家賃くらいの金額で、もうすぐローンを払い終わっちゃう。水道代、光熱費もとくに節約しなくても自動的に半額になる。インターネットもポケットWi-Fiで十分だし、物を買わないということはゴミも出ない。たしかに工夫しないと暮らせないけど、クリエイティブという意味では面白い。

そうした暮らしを実現するためには、コミュニティやそれを構成する仲間が一番大事である、と。

鈴木何をするにも自分ひとりだと辛いだけだからね。薪割りにしてもみんなでやった方が楽しいし、近所の6家族で30升(1升瓶30本分)の醤油もつくっているんです。実際に食べられて、近所の人とも友だちになれて、作業に行く度に楽しくて、子どもの教育にもいい。醤油も田んぼも薪もみんなでつくるし、コミュニティ内で完結させれば負荷は下がって得られるものが増えるから誰にとってもいいんですよね。

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鈴木あとは、駅まで送ってほしいとか、うちのニワトリにエサやりにきてほしいとかちょっとしたことを頼むために、地域通貨も取り入れてます。ぼくも10日間くらい犬を預かったことがあるんだけど、めっちゃ楽しかったですよ。飼い主はペットホテルに預けるよりも安上がりで、ぼくらは犬を飼うという初めての経験ができたし、その人とも仲良くなれた。要は、自分の生活の一部をサービス化して預けているわけです。消費文明の外部サービスも便利なんだけど、どんどん外に預けていった結果、生きていくためのつながりも、生きる知識も力も、何も残らないわけ。僕らもそうだったけど、それに気づくのは、だいたい子どもが生まれた時。子育てって本当に大変だよね。あんな大変なことはコミュニティでやらないと、そもそも成立しない。子育てに悩んでる人はいすみに来ちゃいなよ、といいたい(笑)。

周りと一緒に楽しめるというのはベストですね。

鈴木地元の人たちにパーマカルチャーとか言っても上手く伝わらないから、ここは“暮らしの学校”ですと言っています。今はこうしてぼくが代表してしゃべっているけど、ものすごいたくさんの人が関わっているプロジェクトなので、そうしてみんなで学べる場をつくっていければいいかな。

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Source: フィナム

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