Exclusive Vintage Meeting
古着サミット スピンオフ 50周年を迎えるリーバイス®のサードモデルを徹底フォーカス!
1967年、前身となる「557」の後継モデルとして発表された「70505」は、その品番の末尾が示すように、プレシュランク(防縮加工)デニムを採用した名ボトム「505™」と対となるデニムジャケットとして誕生しました。いわゆるセカンドモデルまでに見られたフロントプリーツを撤廃し、フラップポケットからウエストラインへと流れるV型ステッチを採用することで、よりモダンな趣きへと進化。一切の無駄がない洗練されたデザインはデニムジャケットの完成形とまで謳われ、その後多くの人たちに愛されました。この歴史的名作「70505」がデビューしてから今年で50年。これを記念し、今回の「古着サミット」はスピンオフ企画として〈リーバイス®(Levi’s®)〉のサードモデルを徹底フォーカス! お馴染みの有識者4名が自身の私物を持ち寄って存分に語り尽します。「70505」はもちろん、前身モデルである「557」、さらにはデニム以外の素材を使った派生モデルに至るまで、サードモデルの型を軸に幅を広げてお届けします。ヴィンテージ愛好家であれば誰もが手にしたことのあるサードモデル、お馴染のモデルですが、しかし知れば知るほど奥が深い。定番にして究極のアイテム=サードモデルの世界をとくとご堪能ください。
- Photo_Takeshi Kimura
- Text_Takehiro Hakusui
- Edit_Yosuke Ishii
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今野智弘(写真左)
〈ネクサスセブン(NEXUSVII.)〉デザイナー。1977年生まれ。2001年 N.Yより〈ネクサスセブン〉を始動。オフィシャルウェブストアではオリジナルアイテムに加え、ヴィンテージ古着も一部展開。所有ヴィンテージアーカイブは業界随一を誇る。
藤原裕(写真中左)
「ベルベルジン(Ber Ber Jin®)」ディレクター。1977年生まれ。業界内でも屈指のヴィンテージマスターとしても知られ、特にデニムに関してはパンツ、ジャケットともに圧巻のコレクションを誇る。501®XXのオフィシャルブック『THE 501®XX – A COLLECTION OF VINTAGE JEANS(ワールドフォトプレス刊)』も監修。
栗原道彦(写真中右)
ヴィンテージバイヤー。1977年生まれ。2011年よりフリーでの活動を開始。古着屋のみならず、セレクトショップなどからも絶大な信頼を集める、日本屈指のヴィンテージバイヤー。一年の約半分をアメリカで過ごすというストイックなバイイング生活はInstagramでもチェック可能。
阿部孝史(写真右)
ビームス オンラインショップ スタッフ。1976年生まれ。長年にわたり編集・ライターとしてメンズファッション誌に携わり、多くの古着関連の記事を扱ってきた有識者。現在は自社サイトなどでライティングなどを担当し、ヴィンテージバンダナのコレクターとしても名を馳せる。
第一講 今野智弘
デニムよりも異素材や派生モデルに惹かれる。
今野さんにとっての初サードタイプとその印象って?
今野最初に手に入れたのは、確か高校1年の頃だったと思うんですが、ネイビーのコーデュロイに白のボア襟が付いたモデルだったと記憶しています。価格もまだ学生でも手の届く範囲でしたし。ただ、やっぱりあの当時ですから、憧れ的にはファーストやセカンドでした。意識してサードを見るようになったのは、自分が服を作るようになってからかと。着丈やシルエットなど、そのバランスの良さを何度か参考にさせてもらったり。個人的には一般的なデニムよりも異素材や派生モデルに興味を惹かれますね。
Konno’s Pick up_01
今野ではさっそく自分から。3、4年ほど前にブラウンダックのマイブームがあって、ちょうどそのタイミングで裕くん(藤原)からお声掛けいただき、かなり安めに譲ってもらったダック素材の「70519-0937 E」を用意しました。僕はブラウンを所有していて、同じ品番で検索したら白と水色は確認できたので、少なくとも3型は存在すると思っているんですが。
藤原ありますね、確かに。
栗原パンツも「518」の品番でコーデュロイではなく、ダック地のモデルがあるし、ジャケットだとピケやカツラギ、サテンはよく見るけど、ダックは結構珍しいですよね。
阿部やっぱり出ないものなの?
藤原じつは今野さんに譲ったもの含め、今まで通算4、5着しか出てきた記憶はないですね。
今野同じ年代だと思うんだけど、「70505 E」より若干丈が短いよね。
藤原たぶん素材的に乾燥機とかで詰まっちゃうんだと。
今野ああ、なるほどね。
栗原それに(フラップポケット内側のポケット縁のステッチを指差し)ここも2本だから、「70505 E」よりもより「557」に近いモデルなんでしょうね。着丈が短い要因のひとつとして。
阿部へえ、そうなんだ。「70505 E」は2本じゃないの?
栗原1本の紺のステッチに代わって、同じくカンヌキも黄色から紺に代わってるんですよ。
阿部そうなんだ。今までパッチで判別してたわ。大きめのパッチは「557」、小さくなると「70505」って感じで。まあ、もちろんイレギュラーもあるんだろうけど。
藤原でも、概ねその判別法でも間違っていません。ただ、パッチが完全に欠損してしまっている場合で、しかも縫製跡すら残っていなかった場合は、ポケット裏のステッチで判別可能と。
阿部なるほどね。
Konno’s Pick up_02
今野続く2つめは、以前に同企画でも紹介させてもらったサード型ムートンジャケット。あのとき、栗くん(栗原)が教えてくれたように1980年にアメリカで開催されたオリンピックのオフィシャルらしく、とにかく球数が少ない。それにサイズもバラバラみたいで、僕が持っているのはL表記なんですが、実際はSぐらいのサイズ感ですし、前に「ベルベルジン」でMを見つけて試着したら僕のLよりも全然大きかった。
栗原この個体に限らず「70505」移行後も、実はサイジング含め細かな調整が進んでなかったと思うんですよ。その時々の流行なども影響しているんだろうけど。
今野そうなのかもね。それに素材がムートンだから、どうしても肩が立っちゃう。僕はたまたまイイ具合に肩の馴染んだ個体に出会えたけど。
阿部オリンピックモデルとはいえ、一般販売されたものなのかな?
栗原1980年ってアメリカがボイコットしたモスクワオリンピックと混同されがちですが、あの頃は今と違って夏季と冬季が同じ年に開催されていて。このムートンはレークプラシッド(ニューヨーク州)で開かれた冬季のオフィシャルみたいですね。ネットで検索すると、しっかり当時の選手団が着用している画像も出てきますから。
阿部選手団とか一部のスタッフのみに支給されたものってこと?
栗原これだけ玉数が少ないってことは、おそらくはそうなんだと思いますよ。
今野内タグにも「MADE EXCLUSIVELY FOR THE USA 1980 OLYMPIC TEAM」ってありますね。
藤原このムートン、前にこの企画で阿部さんから「ベルベルジンだったらいくらで販売する?」って質問に、僕が「サイズが良ければ12万8,000円くらいです」って答えてるんですが、あの企画がローンチされてすぐ、委託に持ち込んだ方がいらして、「いくらになります?」って聞かれたので、「9万8,000円ですね」って答えたら、「12万8,000円じゃないんですか?」って(笑)
栗原まあ、実際そう言っちゃってるから仕方ないよね(笑)
一同(笑)
Konno’s Pick up_03
今野3つめは地方出張のときに見つけた「SLIM FIT」表記のボア襟付きコーデュロイ。そんなに高いものではなかったけど、見つけたタイミングでしっかり裕くんに相場の確認とって(笑)
藤原そうでしたっけ(笑)
今野これはもう単純に色に惹かれて。前にも何度か見たことはあったんですけど、気が付いたらめっきり見かけなくなっていたので。
藤原「SLIM FIT」だと太畝、しかもこのオリーブとブラウンの2色しか僕は見たことないですね。
栗原後期になるとボアが厚手になり、コーデュロイも細畝が主流ですもんね。それに、このモデルにはウエストベルトもないので、若干デザインされた仕様になってますよね。
阿部年代的には70年代ぐらい?
藤原はい。「941 E」(557のピケ仕様)が市場から消えたタイミングで同じく「SLIM FIT」ラインからピケのジャケットがリリースされているので、年代的には’70初頭頃かと。
栗原「SLIM FIT」はアメリカだけじゃなく、ヨーロッパ生産もあるよね。でも、「SLIM FIT」っていうワリには言うほどスリムでもないんだけど(笑)
今野そうなんだよね(笑)
栗原そう言えば、この企画にあたって、今野さんって毎回1着はデニムを持ってきてますけど、今回ひとつもないってことは、やっぱりサードだとデニム以外ばかりを探している感じなんですか?
今野一応「557 E」とか王道的なモデルは持ってるけど、その辺は裕くんにお任せして(笑)。個人的には変わったものをと思って倉庫を掘り返したら、デニムだとパッチワークのモデルしかなかった。自覚はしてなかったんだけど、デニムじゃないものばかりを見てるんだろうね。
阿部今まさに探してるモデルとかは?
今野最初に紹介させてもらったダックのもうちょっと(色が)濃いやつがあれば。あとは黒系とかですかね。
阿部そういえば今野くんが今日着ているサード型コーデュロイも驚くくらい値上がりしてるんだってね。
今野そうなんですよ。ピンクに限っては玉数が少ないこともあって。ともに3万9,800円くらいで出してるところもありました。
阿部ホントに! それはヤバイね。僕らが学生時代には数千円で買えた印象だもん。