ヴィンテージ古着の魅力とステットソンハットの歴史
歴史的背景を持つ、ヴィンテージ古着。人気が高く希少なアイテムの価値は高まり続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第45回は「ステットソン(STETSON)」ハット編。
“古き良きアメリカ”の象徴、ステットソンの歴史
皆さんはハットを被る機会がありますか?最近は街でハットを被っている人を見かけることもめっきり少なくなりましたが、中折れ帽やボーラーハットなどのドレスハットは、19世紀から20世紀前半にかけて男性にとって洋服と同じくらい重要なアイテムと見なされていました。特に都市部で生活する中産階級や上流階級の男性にとって、ハットを被ることは身だしなみや社会的地位、エチケットを示す手段で、目上の人に会う場面ではハットを脱ぐなど、人間関係を円滑にするための役割もあったんです。

現在、ハットのブランドで最も広く知られているのは、イタリアの「ボルサリーノ(Borsalino)」でしょうか。また、ジェームス・ボンド(James Bond)をはじめとした映画「007」の登場人物にハットを提供し、英国王室御用達ブランドでもあるイギリスの「ロック&コー(Lock & Co. Hatters)」もハットの名門ですが、今回紹介するのは「ステットソン(STETSON)」。1865年にアメリカ・フィラデルフィアで創業した歴史あるブランドです。

ブランドがスタートしてすぐに発売されたのが「ボス・オブ・ザ・プレーンズ(The Boss of the Plains)」というハットです。つばが広く、冠(クラウン)が高めで、前後左右を雨や日差しから保護する機能的なデザイン。軽量なフェルト生地で作られており、防水性も高いことから、荒野の作業にも適した頑丈なハットとして、カウボーイの間で評判となりました。このモデルがきっかけで、ステットソンは西部を象徴する帽子ブランドというイメージを確立したんです。

カウボーイは、アメリカの西部開拓時代を象徴する存在です。カウボーイが活躍する西部劇は、巡業ショーや映画、テレビドラマなど、時代を超えたカルチャーとして人気を博していましたが、その多くの登場人物がステットソンを被っていたので、ステットソンは「アメリカらしさ」を表すアイコンになりました。

20世紀に入ると、大統領を務めたセオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)やハーバート・フーバー(Herbert Clark Hoover)をはじめとする政治家や、ジャズミュージシャン、ハリウッドの映画スターたちがステットソンを愛用するようになり、ステータスやカルチャーといった側面も持つようになりました。また、第二次世界大戦時には軍人向けの帽子を製造したので、ミリタリーの要素も備えるようになったのです。ステットソンは今もブランドを継続しており、オーセンティックなカウボーイハットだけでなく、街着向けのフェルトハットやストローハットなど、多様なラインナップを展開しています。古き良きアメリカの象徴でありながら、現代でも広く愛され続ける、アメリカを象徴するハットブランドだといえるでしょう。
日米の大スターも愛用、今のファッションとの相性も◎
ステットソンを語るうえで欠かせない人物が、ジョニー・デップ(Johnny Depp)です。ウエスタンジャケットの記事でも触れましたが、彼は大のウエスタン好きで、ステットソンのハットも頻繁に被っています。また、日本を代表するスターである木村拓哉さんも、ステットソンの