昨年オープンした渋谷の新名所「TRUNK(HOTEL)」。ラグジュアリーな宿泊体験ができるホテルとしての役割はもちろん、音楽イベントやパーティなどが連日開催され、夜の遊び場としても注目を集めているのはご存知の通りです。
今回の【FOCUS IT.】では先日公開した記事「コーヒー編」に続き、「TRUNK(BAR)」の熱い夜を演出する「カクテル編」をお届け。「これは芸術だ…!」と舌を巻いたカクテルの数々を、バーテンダーの話を交えてご紹介します。
最高のカクテルを提供してくれるのは、齋藤隆一さん。コンペティションで世界3位を獲得したワールドクラスのバーテンダーです。
前回の記事でも紹介しましたが、「TRUNK(HOTEL)」の信念は “ソーシャライジング” 。そのなかには「文化」「健康」「環境」「多様性」「ローカルファースト」の5つの要素が込められています。なんとTRUNK(BAR)の新しいカクテルメニューは、このコンセプトに一つひとつに紐付いてつくられています。
それも、強引にとってつけたような考えでなく、リキュールの生産地、製法から、それぞれの食材のルーツや言葉遊びなど、一杯のカクテルに信じられないくらい様々な要素が込められています。そして何より驚くのは、その全てが格別に美味しいこと。
まず、「文化」のカテゴリーに属されるカクテル「ONDEN GUARDIAN DOG」。ソルティードッグをベースにつくられた飲みやすい柑橘系の一杯です。ローカルファーストの考え方にも繋がりますが、「TRUNK(HOTEL)」の裏にある神社「穏田神社」から着想を受けていて、少し濁ったような深みのある色味は、境内に明治時代から祀られている「穏田狛犬」とその時の移ろいが表現されているのだとか。
カクテルで表現されるソーシャライジングの概念。少しずつ興味が湧いてきませんか?続いては「健康」。
「SALSA SMASH」は、「TRUNK(BAR)」のコンサルティングを手掛ける「LIQUID WORKS」の齋藤恵太さんによるレシピ。ハラペーニョとオレンジのリキュールを掛け合わせたサルサなカクテルで、コリアンダーが発汗作用を促します。メキシコの伝統的なメスカルというテキーラに近いリキュールも入っていて、飲む人をディープな世界に誘います。どうしてこのような組み合わせが思い浮かぶのか、という疑問をぶつけてみると齋藤さんはこう答えてくれました。
「数ある食材をカクテルにどう活かし、いかにコンセプトの通ったものをつくれるかを常に考えています。」なるほど。あらゆる食材や料理を、カクテルにどう活かすか間断なく思考し続ける齋藤さん。バーテンダーとは、まさしくクリエイティブな職業なのです。
続いて「環境」が表現された「FLOATING IN THE AIR」。このカクテルに使われる「Makers Mark 46」は、製造過程で出るバイオガスをエネルギーとして再利用している環境への配慮がなされている蒸留酒。一杯のカクテルに澄んだ空と汚れた空が描写されていて、環境へのメッセージが隠されています。カクテルひとつが自然の行く末という壮大なテーマを考えるきっかけに繋がると考えると、これまたすごい話ではありませんか?
「多様性」のカクテル「MY THAI」はご覧の通りフォトジェニックで人気のある一杯。サンフランシスコ発祥といわれている「MAI-TAI」というトロピカルカクテルが、タイ風にアレンジされています。ネーミングのシャレもさることながら、工夫ひとつで国境を超えるという思考にあっぱれの一言。
「外国ではよくありますが、お客さまから “Surprise me!” “Something wow!” と声をかけられることがあります。つまり、“カクテルで僕らを楽しませてくれよ!” という要望です。だから、僕らはただそのニーズを超える驚きを提供するために日々努力するんです。」と齋藤さんは楽しそうに話します。
5つ目のテーマ「ローカルファースト」に基づくのは、この麗しいカクテル「GOTHIC&LOLITA」。御察しの通りかつて原宿・新宿を中心に栄えた文化「ゴスロリ」がテーマの女性をイメージした一杯です。主となるリキュール「Bobby’s Gin」からスパイス、チョコレートからスイートがそれぞれ表現されています。日本ならでは、そして地域性を掬い上げたこれまた粋なカクテルと言えるでしょう。
最後に登場するのが「TRUNK(BAR)」のシグニチャーカクテル。マグカップで提供される一風変わったスタイルが面白いカクテルです。小笠原のラムにほうじ茶が混ざっていてスターアニスが添えられています。アルコールも少し強めで、「Getting Drunk=酔っ払う」とかけて名付けられた名前は「Getting Trunk」。ローカルの素材リサイクル陶器のマグを使用した、ソーシャライジングを体現するカクテルです。
カクテルに1800円と聞くと高く感じますが、吟味された世界中の多彩な食材が、文化や哲学、概念として具現化された芸術品に触れる素晴らしい体験と考えると、値段以上の価値があると確信できます。
「日本のカクテル文化は、暗いバーカウンターでしっぽりとお酒を嗜むという外国にはない独自の発展をしました。それに比べていまは開放的にカクテルを楽しむという、本来そうであるべきメジャーな考えが浸透してきましたね。」
次々と登場したカクテルのストーリーを聞いていると、バーテンダーという人種はハイレベルな “知的な遊び” をファンタジーとして提供している。そんな印象を受けました。そんな感想を伝えると、齋藤さんからはこんな返答が。
「この「TRUNK(HOTEL)」はそういうひらけた環境で気負うことなくカジュアルにカクテルを楽しむことができる数少ない空間。最終的には難しいことは抜きにして楽しんで欲しい。ただ、それだけなんです。」
いかがでしたでしょうか。「TRUNK(HOTEL)」のまたその一角「TRUNK(BAR)」で提供されるドリンクには、こんなにもクリエイティブかつ、芸術的な創意工夫がなされていたんですね。洒落た空間を楽しむのも一興ですが、今度はぜひ「TRUNK(BAR)」が誇る素晴らしいサービスを体感してみてください。
Photo_Taiyo Nagashima
Text_Rei Kawahara
TRUNK(HOTEL)
住所:東京都渋谷区神宮前5-31
電話:03-5766-3210
trunk-hotel.com
Source: フィナム