SNSは交流としてのツールのみならず、ファッションの重要な指標でもある。地球上に張り巡らされたデジタル環境によって文化的な会話と発信が影響力を増し、その結果、ファッションへの熱量は時差なく世界中に波及していくようになった。もちろん、この業界ではランウェイなどを紐解く雑誌/メディアも今なお影響力を持っているが、(シャッターを切った人がプロか素人かにかかわらず)ストリートで何気なく撮影した写真やスクリーンショットでさえトレンドを作る可能性を秘めている。
本稿ではファッションにおいて非常に重要な役割を担う2017年のトレンドを総括。中には中期的な流行を期待できるものもあるので、来年への予習を込めて、以下からスタイリングのヒントを探してみてはいかがだろうか。
目次
- 1 CLUNKY SNEAKERS
- 2 CLUNKY SNEAKERS
- 3 SIDE-STRIPE PANTS
- 4 SIDE-STRIPE PANTS
- 5 BUSINESS CASUAL 2.0
- 6 BUSINESS CASUAL 2.0
- 7 PUFFER COATS
- 8 PUFFER COATS
- 9 SIDE BAGS
- 10 SIDE BAGS
- 11 MODERNIZED WORKWEAR
- 12 MODERNIZED WORKWEAR
- 13 LOGOMANIA
- 14 LOGOMANIA
- 15 RAVE REVIVAL
- 16 RAVE REVIVAL
- 17 SOCCER SCARVES
- 18 SOCCER SCARVES
- 19 OFF-KILTER STYLING
- 20 OFF-KILTER STYLING
CLUNKY SNEAKERS
CLUNKY SNEAKERS
まだまだ続くスニーカーへの購買意欲。もちろんカジュアルなフットウェアが人気なのはストリートの常だが、高感度なストリートクラウドの今年のインスピレーションをまとめるならば、キーワードは“dad(お父さん)”。〈Nike(ナイキ)〉、〈adidas(アディダス)〉、〈New Balance(ニューバランス)〉といった万人に愛されるスポーツブランドにとって、ちょっと“clunky(ブサイク)”なスニーカーシーンはある意味得意分野だが、今年は有名ファッションブランドのランウェイでもいたるところに“clunky”エレメントが出現。#dadcoreが各地のファッションウィークを伝えるSNSで跋扈した。〈Balenciaga(バレンシアガ)〉のTriple-S、YEEZY BOOST 700 “Wave Runner”、〈Acne(アクネ)〉の“Sofiane”、〈Gucci(グッチ)〉の“Rhyton”、〈Vetements(ヴェトモン)〉と〈Reebok(リーボック)〉のコラボモデルなど、2017年はスニーカーが大きく、ゴツく、“立派なブス”に仕上がった年だった。
SIDE-STRIPE PANTS
SIDE-STRIPE PANTS
全てのパンツをカッコよく履きこなすのは、正直なところ常人には困難だ。しかし今年は、パンツスタイルをなんだかオシャレに見せてくれるサイドストライプがアツい年となった。言わずと知れたスリーストライプスの〈adidas〉ほか、〈Needles(ニードルズ)〉、〈Vetements(ヴェトモン)〉x〈Champion(チャンピオン)〉、〈Palm Angels(パーム エンジェルス)〉などのサイドストライプパンツでスタートした2017年、〈Gucci(グッチ)〉、〈Alexander McQueen(アレキサンダー マックイーン)〉、〈Neil Barrett(ニール バレット)〉、〈Calvin Klein(カルバン クライン)〉などのブランドも、ドレスパンツなどにスポーティーなサイドラインを加えたアイテムを発表。細身やワイドなどのフィットの差はあれど、ドレスパンツとスニーカーとの組み合わせを楽しむなど、サイドストライプによるHigh & Lowの美学が、ボトムスの楽しみ方を再確認させてくれることとなった。
BUSINESS CASUAL 2.0
BUSINESS CASUAL 2.0
スーツはいつの時代も紳士服の顔である。が、ストリートファッションが現代の時代精神となっているここ数年は、ビクトリア王朝まで歴史を遡る伝統的なテーラードピースや革靴をトレンドセッターおよびファッションメディアが取り立てることも少なくなっていた。しかし2017年に入り、〈Balenciaga〉、〈Vetements〉、〈Gosha Rubchinskiy(ゴーシャ ラブチンスキー)〉といった時代を牽引するブランドがモダンなひねりやそれぞれのブランド哲学を落とし込んだスーツをリリースするなど、一気に注目が集まった。それはリバイバル、というよりも会社員が着用するその衣服を風刺的に再創造し、トレンドに見事復活したと解釈する方がしっくりくるだろう。ブルー、レッド、ベージュ、グレーなど会議室のカラーパレットが用いられ、“ビジネスカジュアル 2.0”とでも呼ぶべき今年のスーツルックでは、肩パッド入りのショルダージャケット、ダボっとしたトラウザー、ゴツめのスニーカー、マトリックスを彷彿とさせるサングラスなどが見るものに一層強い印象を付与していた。
PUFFER COATS
PUFFER COATS
オシャレに我慢は付き物。しかし、 近年はパッファーコート(日本ではダウンと言うべきだろうか)がトレンドとして認識され、誰しもが心の底で喜んでいたはず。そのダウンジャケット/コートは2017年に新境地を見せ、マストハヴのアウターとなった。〈Raf Simons(ラフ シモンズ)〉や〈Balenciaga〉の2016年秋冬コレクションで登場して以来、高い防寒性を誇る同アイテムはハイファッション、ストリートウェアにおいて重要な位置づけにある。それを得意分野とする〈Stone Island(ストーン アイランド)〉、〈Moncler(モンクレール)〉、〈The North Face(ザ・ノース・フェイス)〉のみならず、〈Vetements〉、〈Supreme(シュプリーム)〉、〈Palace(パレス)〉、〈ALYX(アリクス)〉といったブランドもこぞってパッファーコートを製作し、更には〈Urban Outfitters(アーバン アウトフィッターズ)〉、〈H&M(エイチ アンド エム)〉、〈Zara(ザラ)〉などのファストファッションもそれに続くようにそのトレンドアイテムを売り出し、完全にメインストリームの存在へと早変わりした。
SIDE BAGS
SIDE BAGS
ボディバッグ、ウエストバッグ、バムバッグ、ヒップパックなどとブランドやカルチャーによってその呼び名は多数あれど、一続きのベルトが小ぶりなボディ部分に繋がったサイドバッグは、今年のファッションシーンにおいて散見されたファッションアイテムのひとつ。ここ数年前までは単なる“オジさんっぽい”アイテムとして敬遠されがちだったサイドバッグだが、近年はその市場に〈Gucci〉や〈Balenciaga〉、そして2017年最大のファッショントピックと言っても過言ではない〈Supreme〉x〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉タッグが参戦。デザイン性に長けたアイテムが複数誕生したことによって、シーン最前線のファッショニスタたちの傍らにその姿を現すようになった。もちろん、その使い勝手の良さも多くの人を魅了した理由のひとつだろう。
MODERNIZED WORKWEAR
MODERNIZED WORKWEAR
ジーンズをはじめとするワークスタイルが長きに渡ってファッションシーンに影響を与えてきたことは言うまでもないが、2017年は更にそこから一歩踏み込んで現代的なデザインに昇華させたインダストリアルなテイストを持つアイテムの数々が持て囃され、世界のファッションシーンに大きな影響を与えた。このトレンドを牽引した代表的なブランドとして〈OFF-WHITE(オフホワイト)〉や〈A-COLD-WALL*(ア コールド ウォール)〉、〈ALYX〉、〈Heron Preston(ヘロンプレストン)〉、〈Landlord(ランドロード)〉などといったコンテンポラリーブランドが挙げられるが、〈Vetements〉や〈Junya Watanabe(ジュンヤ ワタナベ)〉といったブランドが〈Carhartt(カーハート)〉や〈Leviʼs®️(リーバイス)〉といったブランドとのコラボレーション展開をしたことからも、その傾向はストリートウェアの範疇に収まらず、ハイエンドなファションシーンにまで広がったことが見て取れる。
LOGOMANIA
LOGOMANIA
シティボーイの影は何処へやら、一時代を築いたミニマリズムはストリートへの移行と共に喧しいグラフィックとロゴにその政権を剥奪されてしまった。〈Gucci〉のブートレグTシャツを筆頭に、スポーツ文化へ傾倒する〈Gosha Rubchinskiy〉と〈Kappa(カッパ)〉、〈FILA(フィラ)〉、〈Sergio Tacchini(セルジオ タッキーニ)〉のコラボレーション、〈Vetements〉と〈Champion〉および〈Reebok(リーボック)〉のチームアップ、街で多くのパロディを見かけた〈Balenciaga〉のプロダクト、そして時代を動かした〈Supreme〉x〈Louis Vuitton〉の豪華共演など、2017年は着る者がどのブランドを支持するかひと目でわかるロゴものの着用が正義だった。
RAVE REVIVAL
RAVE REVIVAL
少しニッチではあったが、オールドスクールなレイヴのトレンドはメンズウェア全体に多大な影響を及ぼした。若者が新たな音楽体験を求め、1980年代後半にイギリスのナイトクラブやディスコから発祥したこのアンダーグラウンドカルチャーは、スポーツウェアや良い意味でブサイクなスニーカー(特にAir Maxシリーズ)とも関係性が深く、今年は〈Gosha Rubchinskiy〉や〈Vetements〉、〈Balenciaga〉、〈Dior〉、〈MISBHV(ミスビヘイブ)〉といったヨーロッパファッションの雄がその魅力を再提案していた。該当するアイテムを列挙するのであれば、〈Vetements〉のバイオハザードダウン、〈Gosha Rubchinskiy〉と〈SUPER by RETROSUPERFUTURE(スーパー バイ レトロスーパーフューチャー)〉のコラボレーションピース、〈Heron Preston〉が秋冬で展開する黒のレザートレンチコートとフレイムスカルのロングスリーブ、〈ALYX〉のOリング付きベルトやハーネス、ウォレットチェーンなどだろうか。無論、A$AP Mob(エイサップ モブ)、Virgil Abloh、〈Midnight Studios(ミッドナイト スタジオ)〉を手がけるShane Gonzales(シェーン・ゴンザレス)の三者が主催したイベント“Midnight Rave”とそれに付随するTシャツコレクションも忘れてはいけないトピックだ。
SOCCER SCARVES
SOCCER SCARVES
〈Vetements〉のストールや〈Palace〉のサッカーボール、『KITH(キス)』と〈adidas〉によるユニホームなど、現代のファッションシーンを賑わすブランドたちがこぞってサッカー文化を取り入れた根底には、Gosha RubchinskiyやDemna Gvasalia(デムナ・ヴィザリア)といった東欧デザイナーたちのバックアップがあったように思える。これまで、バスケットボールやランニングなど、多様なスポーツが注目を浴び定番化していった流れを見ると、2018年はサッカーカルチャーがファッションシーンへ浸透して、引き続きその姿を見届けることができるだろう。
OFF-KILTER STYLING
OFF-KILTER STYLING
〈Louis Vuitton〉や〈Dior(ディオール)〉を筆頭に、メゾンブランドたちによるスタイルの変遷で訪れた空前のストリートブーム。巷には、〈Balenciaga〉を代表とする大きな肩パッドを用いた四角張ったジャケットや裾の一部分だけをタックインしたシャツ、Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)が手がける〈Off-White™️〉の腰からぶら下がったロングベルトなど、到底予想もつかない着こなしが溢れ、如何に着崩して自分流のスタイリングを構築できるかという個々のファッション能力が試される一年となった。
Source: HYPE BEAST