アメリカのスミソニアン博物館にはFAXが骨董品として展示されているそうです。一方、日本国内では未だに年間100万台単位でFAXが売れているのだとか。
ガラパゴス市場たる日本には、未だ不思議な慣習が残されているけれど、世の中はどんどん便利な方へ流れています。例えば流通などのインフラが整備されたり、SNSの登場によってメディア環境が大きく変化していたり。中間コストやしがらみがなくなって、自由市場に拍車がかかっているわけです。
そんな流れをファッションの観点から眺めると、「スモールショップ/ブランドの台頭」という動きに気づきます。風呂敷を広げすぎましたが、伝えたいのは、個人が営む小さなお店が個性的でおもしろい!ということ。まずご紹介するのは、下北沢に居を構える「F.P MART」という古着屋さんです。
下北沢南口から徒歩7〜8分の位置に「F.P MART」はあります。下北沢の古着屋「フィルム(FILM)」と、幡ヶ谷の「ペールタウン(PALETOWN)」、二つの人気古着屋が共同で運営する、珍しい形態のショップです。
「もともとこの場所に「フィルム」があったんですけど、都市開発に伴って建て壊しになるってことで、向かいの店舗に移ったんです。その後しばらく貸しスペースとして運営していたようなのですが、縁あってもう一度お店を出してみないか? という話が持ち上がって、そこで「ペールタウン」の谷川さんと一緒にやることになったんです」
「フィルム」のオーナーである島田さんはそう語ります。「ペールタウン」の谷川さんとは、旧知の仲というほど古くからの間柄ではないけれど、お互いの感覚的な部分を共有できたことが決め手だったのだとか。
「偏ったものが好きなんですよね。いわゆる古着屋のような価値観じゃないと思うんです。言語化しにくいかもしれないですね、なんとなくこの辺がいいよね、みたいなことは。この置物とかも古着屋さんで扱うようなものじゃないんだけど、面白くていいなと」
世界各地の民芸品などが並びますが、ポップさを備えたものばかり。古さや希少性、製造技術といった側面だけではない、軽やかさのあるセレクトが魅力です。
人気バンドのメンバーやアーティスト、イラストレーター、そして近隣のショップとの関係性も魅力の一つ。先日は、「THIS IS MY CAPE SHOULDERS」という企画で、様々な人が手がけるカスタムダービージャケットを展示・販売し、人気を博しました。とにかくかわいい!
「「THIS IS MY CAPE SHOULDERS」は反響がありましたね。元々関係性の深いアーティストやショップの方にダービージャケットのカスタムをお願いしました。もともと「フィルム」はSNSをやっていなくて、「F.P MART」として初めてインスタグラムを開設してみたんですけど、ありがたいことにそれを見て来てくれる人も増えましたね」
ショップにはD.A.Nやneveryoungbeachのメンバーをはじめ、さまざまなアーティストが足繁く通うのだそう。音楽との深い関係性は、下北沢という町ならではかもしれません。
軽やかさが感じられる古着のセレクトも魅力。あくまでリアルな視点に基づく、細やかな審美眼が感じられます。ヴィンテージの希少なウェアが揃うわけではないのですが、絶妙なツボを突く、まさしく今身につけたいアイテムが並びます。
「建て壊しの話はなくなったわけではなくて、いつ通達が来るかわからないんです(笑)。いつまで続けられるかわかりません。だからこそ楽しく気楽にやれるのかもしれないですね」
「F.P MART」が営業を続けているうちに、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。しっかりと個性の立ったセレクトが待ち構えています。
Text_Taiyo Nagashima
F.P MART
住所:東京都世田谷区代沢5-30-12
www.instagram.com/fp_mart
Source: フィナム