セレクトショップとブランドが手を取り合う理由とは?ÉDIFICEが考えるコラボレーションの真のカタチ。
フレンチシックを標榜するセレクトショップ「エディフィス(ÉDIFICE)」が今シーズンも気鋭のブランドと別注ラインを展開している。特定のアイテムを別注するのではなく、あえて“ライン”という手法を取り入れる真意。そして、それがブランドにもたらす影響とは一体どんなものなのか? 今回は〈イッティビッティ(ITTY-BITTY)〉のブランドディレクター・大島隆之さん、〈アレッジ(ALLEGE))〉のデザイナー・山口亮さん、「エディフィス」のストアMD兼バイヤー・大瀧北斗さんを迎え、セレクトショップとブランドが手を取り合う理由について語ってもらった。
- Photo_Kazunobu Yamada
- Text_Yuichiro Tsuji
- Edit_Ryo Komuta
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他にはないストーリーを背景に、上質なクオリティのアイテムを届けたい。
先シーズンに展開した〈イッティビッティ〉との別注ラインが好調だったようですね。
大瀧そうなんです。〈イッティビッティ〉と「エディフィス」のイメージを上手にミックスすることができて、ありそうでなかったものをつくることができたのがよかったんじゃないかと。
大島お店に伺うとスタッフの方々が着てくれていて。すごく励みになりましたね。ぼくのなかで、クリーンでやや細身という印象が「エディフィス」にはあって、逆に〈イッティビッティ〉はボリュームのある服も展開している。それをどう上手く融合させるかというのが鍵になったわけですが、結果的にいいものができあがってホッとしました(笑)。
そして、一方では〈アレッジ〉とのラインも今季からスタートさせています。
大瀧お取り扱いをはじめたのは先シーズンからなんですが、今回も異例のスピードでラインの制作をお願いしました。〈アレッジ〉はずっとお店に置きたいと思っていたブランドだったんです。
山口ブランドのPRをしてくれるショールームが〈イッティビッティ〉と同じということもあって、展示会にいらしてくれてましたよね。
大瀧山口さんがデザインする服が素敵なのはもちろんなんですが、〈アレッジ〉のコレクションはカルチャー的な背景がある。山口さんの人間性がウェアに宿っていて、そこに魅力を感じていたんです。
他にも“ライン”という形でコラボレートしているブランドはあるんですか?
大瀧あとは〈ラッピンノット(WRAPINKNOT)〉というニットアイテムでコレクションを展開しているブランドともつくっています。
「エディフィス」はどうして“ライン”にこだわるのでしょうか?
大瀧うちはもともとメーカー上がりの会社なんです。だからゼロからモノを作るというDNAがある。インラインにあるアイテムの生地や色を変えただけの効率的な別注ではなく、ブランドと一緒に服をつくるというのは大変だしリスクもありますが、メリットも大きいんです。
なるほど。
大瀧いまは似たようなアイテムが飽和していますよね。だからこそ、他にはないストーリーを背景に上質なクオリティのアイテムを届けたいという気持ちがあるんです。
ブランドサイドにとって、こういった取り組みはどんな影響があるんでしょうか?
山口単純にデザインするのが楽しいですよ。インラインとは切り離したモノの考え方ができるので。それにお店との距離感がグッと縮まりますよね。
大島うん、距離感というのはすごく大事なキーワードですね。
距離感というと?
山口ラインというまとまった入荷の仕方をすれば、お店のスタッフさんの意識がおのずと高まりますよね。深く認知してもらえますし。インラインだけの展開だけでは、そのブランドのことをよっぽど気に入っていないと認識が薄れてしまうと思うんです。
大島“別注ライン”と銘打っていますから、我々はお店のことを考えながら服をつくらなければならない。すごくピンポイントなところに照準を合わせて、デザインや投入時期まで考えているんです。それをするために大瀧さんとコミュニケーションを取って、お店の状況を教えてもらったり、ブランドの得意なことを理解していただいたりすることで、深い部分で繋がることができるんです。
先程大瀧さんが仰っていた“他にはないストーリー”ができあがるわけですね。
大瀧そういったプロセスを経てできあがったアイテムですから、お店のスタッフたちも“語れること”が多くなるんです。
答えが見えないからこそ楽しい。
コラボレートをする際にみなさんが大事にしていることはありますか?
大瀧ブランドのインラインとショップのオリジナル。その中間にあるアイテムをイメージしています。ひとつのラックに、インライン、別注、オリジナルが違和感なく並べられるのが理想です。どこのセレクトショップを見渡しても、そういったちょうどいい服が意外とないんですよね。
大島大瀧さんのオーダーはざっくりしているんです(笑)。一緒につくるための余白をあえて残してくれているというか。
山口単品の別注だと「この生地でインラインのあのコートを作ってください」とか、設計図が用意されている場合が多い。でも「エディフィス」の場合はちょっと違うんですよね。しかも、ブランドの特長を理解してくれた上でオーダーを投げてくれる。例えば〈アレッジ〉の場合だと、ぼくが音楽が好きだということを知った上で話をくれるので、こちらとしても作業がしやすいし、すごくやりがいを感じるんです。
大島イメージを二人でつくるほうが時間がかかるし大変ではあるんですけど、そのぶん意志の疎通がしやすいですし、結果的にいいものができますよね。
大瀧さんは意識して余白を残しているんですか?
大瀧そうですね、柔らかくてふんわりとしたボールを投げるようにしています。「ああいうアイテムがあったらいいな」という願望は個人的に持っているんですが、はやる気持ちを抑えてまずはざっくりと(笑)。
大島我慢してますよね、きっと(笑)。
大瀧…、はい(笑)。でも、大島さんや山口さんとキャッチボールをしながらつくったほうがお互いの魅力が上手に混ざりやすい。それが本当の意味でのコラボレーションだと思うんです。
なるほど。見えないものをつくる感覚ですね。
大島こちらとしては試されている感覚もあるんですが、それも楽しいんです。
山口要望がありすぎるとやりづらかったりしますよね。単品の別注ならアリですが、こういったラインではじめから明確なイメージがあると逆効果な気がします。
トレンドの要素を加えつつも、あくまで長く着れる服に。
それぞれの別注の話に移ります。まず〈イッティビッティ〉とのライン〈サーティーン イッティビッティ エ エディフィス(13 ITTY-BITTY et ÉDIFICE)〉は、パリに住む日本人をイメージしているんですよね。
大瀧そうですね。ただ、今回はそこにブリティッシュの要素もプラスしました。
大島このあいだまでパリって言っていたのに、半年経って今度はロンドンって言い出して。どうしようかと思いましたよ(笑)。
大瀧ロンドンがトレンドというのもあるんですが、フランスに住む人にとってロンドンって意外と身近なんじゃないかと思ったんです。ユーロスターに乗ればすぐに行き来できますから。そうすると、ロンドンで買い物をするだろうし…、と想像がどんどん膨らんでいったんです。
それを受けて大島さんはどんなことを考えていったんですか?
大島イタリア人から見たアメカジという解釈があると思います。今回はそういった考え方をしたらいいんじゃないかと思いついたんです。フランス人がイギリスの服を選ぶなら、こういうのをチョイスするだろうな、というのをイメージしていきました。あと、イギリスといえばやっぱり柄ですよね。それを上手に落し込めればなと。
具体的にこだわった部分はありますか?
大島素材やシルエットですね。やはりコレクションっぽい見え方は大事だろうということで、かなりいい生地を使いました。綿100パーセントの細番手の糸を高密度に織っています。上質なネル素材です。
大瀧着れば着る程にいい味がでる生地ですよね。
大島そうですね。デザインとしてトレンドの要素も入っているんですが、生地自体はクラシックなので長く愛用できます。
シルエットに関してはいかがでしょうか。
大島「エディフィス」のお客さんに合わせてアレンジをしました。〈イッティビッティ〉らしい空気感は残しつつ、トップスのアームホールやパンツの裾幅をインラインのアイテムよりも細くしています。
大瀧このコラボレートは2シーズン目ですが、すごくパワーアップした感じがしますね。
大島男の人ってものの選び方がすごく繊細なんですよね。クラシックかトレンドか、地味か派手か、高いか安いかなど、いろんなベクトルを交差させて納得のいくものを購入するじゃないですか。それでつまるところ“服のムード”が決めると思うんです。ぼくはいつも“いいムード”を探しながら服をつくっていて、手に取ったときに「この服、なんかムードがいいな」と思ってもらえたらいいですね。
大人が着れるヤングな服をイメージ。
一方、〈アレッジ〉の別注ライン〈エディット アレッジ&エディフィス(EDIT ALLEGE&ÉDIFFICE)〉はどんなやり取りがあったんですか?
大瀧先程も話した通り、山口さんのものづくりは音楽の香りがするんですよね。一方で、「エディフィス」はフレンチシックを提唱しているとはいえ、カルチャー的なところは無味無臭な部分がある。そこを上手く補えたらいいなと思ったんです。
なるほど。
大瀧「エディフィス」のお客さまは他のセレクトショップに比べて年齢層が高い。だから、音楽や映画といった趣味を大切にしている人も多いんです。そういう方々に向けてアプローチできればと。
山口はじめに音楽の話をしましたよね。ぼくと大瀧さんは年齢がひとつしか変わらないということもあって、共通項となるキーワードがたくさん挙がって。
大瀧2000年頃に流行った音楽の話とかしましたね。あとは“スポーツ”というワードも出ました。
それでスエットとトラックパンツがあるわけですね。
大瀧そうです。レトロなスポーツをイメージしました。いわゆるジャージとかはスポーツブランドのアイテムがあるので、それとは違う目線でできたらいいですね、というお話をして。
山口素材を変えたら面白い見え方になるんじゃないかと思って、ジャージ素材ではなくあえてウールでつくりました。こういうアイデアはひとりでデザインしていると出てこないので、コラボレートという表現方法の醍醐味を感じましたね。
細かな部分でこだわったところはありますか?
山口「エディフィス」のお客さんをイメージしてつくったところですね。年齢層が他に比べて高いという話がありましたが、そういう人でも着れるヤングな服というか(笑)。具体的にいうと、ステッチの色やパンツのサイドラインの素材とか。
というのは?
山口ステッチは、普通ならこういうアイテムだと白とかにするんですよ。そうすると服の雰囲気がキリッとして、音楽っぽさやカルチャー感が出てくる。でも、大人のひとにはトゥーマッチなのかなと。程よくカルチャーの香りを感じつつ、なおかつ大人が着やすい服にするために、あえてブラウンにしてなじみやすくしました。パンツのサイドラインも同じ考え方です。普通ならサテンを使って光沢を出すと思うんですけど、今回はグログランテープにして合わせやすくしたんです。
大瀧絶妙ですよね。微妙なニュアンスが変わるだけで雰囲気がガラッと変わる。山口さんとはじめて一緒に服をつくらせてもらいましたが、一回目にしていい着地点に持って行けたと思います。
いろんなブランドと合わせてほしい。
大瀧さんにお聞きしたいんですが、できあがったアイテムをご覧になられて思うことはありますか?
大瀧両ブランドともすごくいいものができあがった実感があります。ひとつのブランドだけでコーディネートするのもいいんですが、ミックスして着れるように、実は素材や色を調整しているんです。
山口ミックスしたらおもしろそうですよね。
大島「そうきたか」と思わせるような着こなしをショップスタッフの方々がしているときがあるじゃないですか。自分では思いつかないようなコーディネートを見てみたいですね。〈イッティビッティ〉や〈アレッジ〉に関わらず、いろんなブランドと合わせてほしいです。
大瀧ゼロからつくっているぶん、こういった別注ラインという取り組みは簡単にできる試みではないのですごく特別感がありますし、それがお客さまにも伝わるといいですよね。あと、次回はもっとラインナップを広げてやりたいです。大変だと思いますが…(笑)。
エディフィス 新宿店
住所:東京都新宿区新宿3-31-9 1F
電話:03-5366-5481
営業時間:11:30~21:00(不定休)
13 ITTY BITTY et ÉDIFICE
edifice.baycrews.co.jp/13itty_bitty/
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Source: フィナム