タンキストというネーミングをご存じだろうか。〈カルティエ(Cartier)〉を代表する「タンク」に惚れ込んだ人々のことをこういう。名だたるタンキストのなかでも公式サイトで紹介されている人たちの愛は筋金入りだ。
最後の出演作品となった『熱砂の舞』でアラブのプリンスを演じるにあたり、自身の「タンク」をすべてのシーンで着用したいと直談判したルドルフ・ヴァレンティノ。あるいは、私がこれを身につけるのは時間を知るためではないと語り、一度もリューズを巻き上げることがなかったアンディ・ウォーホル。
とりわけ印象に残ったのはファッションデザイナー、ジャン・シャルル・ドゥ・カステルバジャックだった。彼は次のように「タンク」を評した──もしもすべてのタンク(戦車)が〈カルティエ〉でつくられるなら、私たちはずっと平和に暮らすことができるのに。
三代目、ルイ・カルティエが自らも愛用した「タンク」は第一次世界大戦でデビューしたルノー製戦車の平面図から着想を得た。ストラップのラグをケースに一体化させた2本の縦枠は確かにキャタピラを彷彿とさせる。レクタンギュラーのシャープなフォルム、丸みを帯びたアタッチメントをまとい、1917年に完成させた同モデルはアール・デコの先駆けとして評価された。
ルイ・カルティエは戦争の道具だったタンクを腕時計という名の芸術に昇華することでその能力を無効化した。さすがフランスのメゾンだけあってやり口がウィットに富んでいる。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa
Edit_Ryo Muramatsu
カルティエ カスタマー サービスセンター
電話:0120-301-757
www.cartier.jp
Source: フィナム