松陰神社前駅の線路沿いに、木造アパートをリノベーションした建物があるのを知っていますか? 大きな階段が特徴の建物の1階に、フラワーショップ「ドゥフト(duft)」があります。
モルタルが敷かれた床と白壁の店内には、シルバーで統一されたドイツ製の什器が並び、ソリッドな空間の中には様々な種類の花が飾られています。
オーナーの若井ちえみさんは北海道出身。地元札幌の花屋で働いたあとに中目黒の「ファーバー(farver)」で修業し、2016年から自身が営むショップ「ドゥフト」をスタートさせました。
「美術館やギャラリーのように、静寂があって心が静まるような空間が好きなんです。なので、四方が花に囲まれたようなイメージではなく、モノをあまり置かずに花やフラワーベースを見せる場所にしています。ゆったりと見てもらって、花の香りを楽しんでもらいたいと思っています」
25歳のときに上京した若井さん。「ファーバー」で働いていたころはとても忙しく、家と職場を往復するだけの生活だったと言います。
「東京に出てきて感じたことは、みんなが忙しくしている土地だなと。私自身も季節を感じたり、香りをかいだりする余裕がなくて。でも、ふとした瞬間にいい香りがして、四季を感じることがあるんです。お客さんにもお花や植物の香りをかいで、季節を感じることを思い出してほしい。なので、「ドゥフト」は純粋に花を楽しめる空間にしたかったんです」
上京してから住み続けている松陰神社が様変わりしていく様子を見てきた若井さん。新しい店も増え、若い方も訪れる場所になりましたが、町の空気感そのものが変わることはないそうです。
「松陰神社は都心に近くて便利なのに、高い建物も少なく、ゆったりとした時間が流れています。それが地元札幌の雰囲気と似ていると感じて、現在の場所にショップを構えました」
多くのフラワーショップがそうであるように、「ドゥフト」のお客さんは女性が多いそうですが、それでも若井さんが想像していたよりも多くの男性がお店を訪れ、花を買っていくそうです。
「男性で来てくださる方の多くが、お一人で来られます。若い方からお年を重ねている方まで幅広い年齢層の方がお店に来てくれて、嬉しいことに週1とか2週に1回くらいのペースで継続的に通っていただいています」
来店する男性は欲しい花が決まっている人や普段から花を嗜んでいる人ばかりではなく、若井さんと話をしながら花を選んでいく方が大半。たまたまお店を見つけて、買ったことがないけど花を始めてみたいという方もいるそうです。
「男性がお花を部屋に飾るのはすごく嬉しいですね。みんながお花を飾ればいいのになと思います。シンプルに一輪から飾ってもらって、枯れたら次を買ってみるみたいな。通ってくださる男性の方はしっかりと手入れをしてくれそうな方が多いですね」
いまはインスタグラム等でショップのことを知って、お店に足を運んでくれる若いお客さんが多いそう。「若い方が、長期的に花を飾ることを続けてくれたらうれしい」と若井さんは語ります。
「花を飾るということを難しく考えすぎている人が多いと思いますね。そんなにいっぱい飾ろうとは思わずに、一輪からでも気軽にお花を飾ってもらいたいと思います。むしろ一輪の方がお花を飾りたい初心者の方にはおすすめです。複数本になってしまうと花の組み合わせとか、フラワーベースの合わせ方、丈のバランスとか色々と悩みだしちゃうので。あと、お手入れも大事。毎日新しいお水に替えてあげて、お花の茎の部分を少し切ってあげる。複数本だとこの作業が面倒くさくなってしまうので、気になったお花一輪を気軽に飾ってあげるのがいいと思います」
店内には、花だけではなくフラワーベースも。ベルギーの〈ヘンリーディーン(Henry Dean)〉やオランダの〈フィドリオ(Fidrio)〉、さらにはアンティークなど、色や形が変わっているものが厳選して置かれています。好みのものが見つからなかった場合は家にあるコップに飾っても良いそうです。
オーナーの若井さんが提案してくれた、3パターンの花のスタイリングは1輪からでも飾ることができ、長持ちします。特徴的なシルエットのものが多く、かわいくなりすぎない。男性の部屋にも自然と馴染んでくれる花です。
「ドゥフト」の仕入れの日には、約30種類以上の花が並ぶことも。週3回のサイクルで花が入れ替わるので、訪れるたびに新しい花との出会いがあります。肩肘張らずに気軽な気持ちで、お店に行ってみてください。
Photo_Shota Matsumoto
Edit&Text_Masato Saita
duft
住所:東京都世田谷区世田谷4-13-20松陰PLAT #B
電話:03-6884-1589
営業:13:00~19:00/不定休(定休日はインスタグラムを参照)
duft.jp
www.instagram.com/chiemiwakai_duft
Source: フィナム