主に社会問題などをテーマにしたアイロニックかつポップな作風のアートワークでシーンを席巻する覆面アーティストのBanksy(バンクシー)。正体を含め未だその多くが謎に包まれた存在だが、本稿ではそんな彼(もしくは彼女)による新作アートワークをご紹介。
今回のアートワークは2016年頃に世界を騒がせたイギリスのEU離脱、通称ブレグジット(Brexit)をテーマにしたもの。その作品は絆創膏で補修された薄汚れたハート型の風船と“Vote to Love(愛に投票を)”の文字が描かれ、その下には“EU Referendum(欧州連合人民投票)”の文字、更に実際にイギリス国内において欧州連合離脱是非を問う国民投票が行われた2018年6月23日を指す“Thursday June 23rd”の文字が配されたポスター調のデザインに。ちなみにこの作品は現在、イギリス・ロンドン中心部にある国立美術学校/美術館の『Royal Academy of Arts(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ)』にて8月半ばまで開催中の展覧会“250th Summer Exhibition”にて展示中となっている。
とまぁBanksyらしく社会を風刺した作品と言えばそうなのだが、この作品に関して彼(正確には性別も不明だが便宜上“彼”と表現する)らしい面白さがより発揮されるのはここからの情報。彼のInstagram投稿によると、彼はこの作品の“250th Summer Exhibition”での展示を検討してもらうべく、最初“Bryan S. Gaakman”という偽名の名のもとに『Royal Academy of Arts』にこの作品を送ったとのこと。(その“Bryan S. Gaakman”という名は“Banksy Anagram”のアルファベットの順番を入れ替えたものであり、Anagram=アナグラムとはまさに単語や文章の文字を入れ替えることによって、全く別の意味に変える言葉遊びのこと)そしてその検討の結果、“250th Summer Exhibition”での展示は却下された。しかしその却下から1ヶ月後、作者“Bryan S. Gaakman”の正体が実はBanksyであったことに気づいたのであろう、『Royal Academy of Arts』は再び彼に接触。Banksyは前回と全く同じ作品を再度『Royal Academy of Arts』に送付し、今度はBanksyによる作品として“250th Summer Exhibition”の一環として展示されるに至ったのである。
一度は無名アーティストの作品として展示を断ったにもかかわらず、世界的アーティストに判明するやいなや手のひらを返したとも見て取れるこの一連の流れ。Banksyがこの全てを予測して偽名を用いたのかどうかは不明だが、(彼は直接的に何も語らないにしろ)そのInstagram投稿の文章の行間からは皮肉をしっかりと感じることができる。ちなみに本稿執筆時点で『Royal Academy of Arts』公式webサイト上の“Exhibitions&Events”のページには、Banksyによるこの最新作も写っている画像をデカデカとトップ画像として掲載中。
『Royal Academy of Arts』によるこの“250th Summer Exhibition”は現地時間で8月19日まで開催中となっているので、会期中にロンドンを訪れる予定がある方は足を運んでみてはいかがだろうか。『HYPEBEAST』によるその他のアート関連トピックの数々もお見逃しなく。
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Source: HYPE BEAST