“アイビー” や “アメトラ” ついて隅々まで知っている人ってどのくらいいるのでしょうか。
1度魅了されたものはのめり込んでいってしまう奥深い世界。昨年誕生したブランド〈ローイング ブレザーズ(ROWING BLAZERS)〉を立ち上げたジャック・カールソンも、その世界に魅せられた1人です。
今回、フイナム編集部が気になったモノをピックアップする連載企画【Focus It.】では、アイビーの新星〈ローイング ブレザーズ〉を紐解く手がかりになったトークショーに潜入してきました。
会場になった「ビームス プラス 有楽町」で開かれたこの催し。登壇したのは、ジャック・カールソン氏と、2015年に発売され全米で話題になった『AMETORA 日本がアメリカンスタイルを救った物語』の著者、デーヴィッド・マークス氏です。2人の会話から飛び出したアイビーの歴史や〈ローイング ブレザーズ〉について切り取ってみました。
デザイナーのジャックさんは、学生時代に米国のボートチームに所属し国際大会で優勝を飾ったほどの人物。さらには考古学者としての顔を持つ異色の経歴の持ち主です。好きがこうじてジャックさんはブランド名になった著書『ROWING BLAZERS』を刊行したのち、昨年自身のブランド〈ローイング ブレザーズ〉をスタートさせました。
“ローイング” とは、あまり耳馴染みがないですがボートレースやレガッタを意味する言葉。世界中の誰しもが触れたことのあるブレザー、ひいてはアメトラやアイビーの発祥はローイングだとジャックさんは語ります。
「ブレザーというものは、もともと大学のローイングチームがきていたユニフォームが起源。ネイビーのブレザーがスタンダードだけれど当時は鮮やかな色のものが多くて、それは観客が自分の応援するチームを識別するためだったんです。」
続いてデーヴィッドさん。「姉の彼氏がローイングの選手だったんですけど、その彼氏から貰ったTシャツを大学のパーティに着て行ったら本物の選手に遭遇して “誰だお前” って注意されたんです。そのくらいユニフォームにもプライドを持っているってことなんですよね。」
19世紀の初め頃、水の上以外ではスウェットやアウター感覚としてカジュアルに着られていたというブレザー。そこにローイングの文化が加わり、ステータスの象徴としてブレザーの価値はどんどん上がっていったんですね。
「そして、段々とローイングの選手以外にもブレザーという言葉を使いはじめ、真似て着用するように。それから時を経て1960年代からのアイビーブームに繋がっていきます。」
なるほど。アイビーというムーブメントはまさにローイングからきているですね。そして議題はブランドの立ち上げの話に移ります。
「『ROWING BLAZERS』という本をつくるにあたって、世界中のブレザーのディテールや生地に触れ「ブレザーとはこういうものだ!」という本質を感じたんです。でも、いまは歴史を重んじてブレザーをつくっているところが少なくなっています。ディスカウントショップで売られているものにリボンを叩きつけたようなものが、ローイング、アイビーの世界に出回っているのを寂しく感じたんです。だったら自分がその文化をもう一度復活させ、盛り上げるためにとブランドを立ち上げました。」
「ブランドの一番の信念はオーセンティックであること。また、自分が見てきた本物のブレザーのディテールに忠実であることです。アイテムの生産は全てブランドの拠点でもあるニューヨークで行っています。それは作り手と綿密な意思疎通をしながら本物をつくりたいと考えているからです。」
いまでは、本の出版や口コミの影響もあってケンブリッジやイェール大学、さらにはアメリカ代表のボートチームのアイテムを製作しているのだそう。ブランド設立からまだ1年ほどという事を考えると、どれだけ〈ローイング ブレザーズ〉のクリエイションに信頼があるのかが良くわかります。
「いまアイビーやアメトラは少し下火かもしれませんが、日本での流行を見て本家アメリカが自国の文化の素晴らしさを再認識し始めました。そんな時代のループから生まれた新時代のブランドがまさに〈ローイング ブレザーズ〉なんです。」そうデーヴィッドさんは最後に語りました。
アイビーの起源をイチから学び、計り知れない知識と熱量に裏打ちされて完成した〈ローイング ブレザー〉というブランドは、“本物” に違いありません。実際に手で触れてみればその奥深さにすぐ気づけるはずです。
「ビームス プラス 有楽町」ではポップアップショップを2月25日(日)まで開催中。ぜひ一度実物を確かめに店頭に足を運んでみてください。
Photo&Text_Rei Kawahara
ROWING BLAZERS
rowingblazers.com
www.beams.co.jp/shop/bpy/
Source: フィナム