〈ルルレモン(lululemon)〉は、どんなブランドにも似ていない特別な存在です。そう言い切ってしまえるほど驚きに満ちたインタビューでした。
1998年にカナダのバンクーバーでヨガウェアのブランドとして誕生し今年で20周年。いまや世界420店舗を持つ〈ルルレモン〉について、日本法人の社長早瀬京鋳さん(文中表記:ケイジュさん)が語る言葉には新しい希望が宿っていました。
「〈ルルレモン〉はスポーツブランドやアパレルブランドではなく、「ライフスタイルブランド」と定めています。より健康に、ハッピーに、楽しく過ごす、そのためにアクティブな生活の後押しをする存在である、という考え方ですね」
2010年代以降、「ライフスタイル」という言葉が象徴するように、モノとコトにまたがった消費活動が活発になりました。〈ルルレモン〉はまさしくその先駆け。世界中で濃いファンを獲得する理由にもう一歩踏み込むと、そこには「コミュニティ」というキーワードがあります。
「私たちは、みんなで汗をかくことを“スウェット”と呼んで、日本では無料のヨガやランのイベントを毎週二回開催しています。共通のプログラムはなし。全世界すべてのストアごとに内容が異なります。東京にも銀座、新宿、原宿と計3つのストアとショールームがありますが、それぞれやっていることが違うんですよ。DJがくるかもしれないし、食事を考えるイベントかもしれない。様々な分野で活躍する人々といっしょに、各ストアが主体的に考えててプログラムをつくっていくんです」
“一日一汗”というフレーズのもと、カフェに行くように気軽にスポーツすることを提唱していきたい、とケイジュさんは付け足します。実際にルルレモンのコミュニティに参加する人々はとにかくその活動を楽しんでいて、初対面でも驚くほど打ち解けることができるのだとか。
「日本人の共通感覚に「部活」というものがあると思うんですね。仲間ともに活動を共有してきたからこそ心が通い合って、最後の試合では泣けるんですよ。私たちのランイベントの根底にもそんな感覚があります。ただし、私たちの場合はスポーツの得意不得意で区分けせず、みんなでいっしょに取り組みます。アスリートのためのものではなく、いろんな人がいっしょにやれるほうが楽しいですから」
部活というキーワードは、ルルレモンが入居するシェアオフィス「Nagatacho GRID」にも共通するとケイジュさんは続けます。
「「GRID」も部活っぽいんですよね。いろんなものが置いてあって、いろんな会社が集まって、それぞれの仕事を一生懸命している。たまにみんなで集まってパーティしたり。ルルレモンチームがいるとオフィスがにぎやかになるし、パーティには必ず来てね、と言ってもらえますね(笑)」
近年急速に広がりつつあるシェアオフィス。その魅力は入居者の目線から見るとどう映るのでしょうか。
「ルルレモンはお客様とのストアでのつながりがすべてなので、組織は逆三角形です。本社オフィスは一番底。ストアを支える立場なんですね。人数も少なくして、フットワーク軽く動ける体制を考えると、経営的な観点から見てもシェアオフィスがベストなんです。ルルレモンの会議はほとんどみんなテレカンで遠隔ですし、オフィスに私一人だけ、もしくは誰もいないなんてこともザラにあります。正直言って私は一般的な企業から来たので、ギャップを感じることもありましたが、ピラミッド型の組織よりも今のほうが健全だと思いますね。みんな上に乗ってね、というような気持ちです」
既存のブランドや企業とは全く異なる経営理念を実践し、そこで育まれた価値観を貫く〈ルルレモン〉。スタートアップ・マインドを持つ企業が集まるGRIDは最適だったのでしょう。そんな〈ルルレモン〉のストアには、ひとつだけ明確なルールが存在するのだとか。
「ルルレモンのコミュニティでは、何を着ているかということを最初から最後までまったく気にしません。絶対に聞かないんです。私たちはストアのスタッフをエデュケーター(アドバイスする人)と呼んでいるんですが、「物を売ろうとしてはいけない」ということを一番大切にしています」
ストアのスタッフでありながら物を売ろうとしてはいけない。一体どういうことなのでしょうか。
「ストアにきたお客様には、まず「なんのスポーツされてますか?」と聞くことが多いですね。「何が欲しいですか?何を探しに来ましたか?」ではないんです。「今度ヨガクラスにきてくださいね〜」という話ができたらそれでいいんです。もしかすると、私たちのイベントでルルレモンを着ている人は10パーセントくらいかもしれません。お客様のほうから謝られる場合もあるんですけど、本当に一切気にしていないんですよ」
固定概念を覆し続けるルルレモン。極め付けは、全ての社員がファーストネームでお互いを呼び合うという文化です。
「入ったばかりの新人のエデュケーターにも、「ケイジュって普段なにしてるの?へー!ケイジュって社長なんだ!」って話しかけられます(笑)。ここには大きな意味があって、「ケイジュ」っていう下の名前は個人に与えられたもので、名字という家のものとは意味が異なるんですよね。下の名前で呼び合うほうが声をかけやすくなるんです。早瀬社長!って言ってハグはしづらいじゃないですか(笑)。日本の文化・社会の中でファーストネームで呼び合う会社が存在するというのは、とてつもなく大きな意味のあることです。これからルルレモンが成長していって人が増えても、この文化は絶対に変えません。社長に威厳はないけど、親しみだけあればいいんです(笑)」
ビジネスとして、そして文化として、今までの日本にはない新鮮で風通しのよいスタンスを貫く〈ルルレモン〉。ブランドのルーツであるヨガは、他者と比較するのではなく、自分と向き合うスポーツ。個人を尊重するのびのびとした風土はヨガに通底する価値観だと言えるでしょう。
これからの社会における新しい生き方を提案する、こんなに特別で魅力的なブランドは他にありません。
以下には、バンクーバーのセレクトショップ「ローデングレイ(Roden Gray)」とのコラボレーション・コレクションをご紹介します。
ミリタリーライクな4つのトップスと3つのボトムスからなる特別なコレクション。反射材を使用した“LXRG-9807”というアートワークには、1998 年創業の〈ルルレモン〉と2007年創業の「ローデングレイ」の結びつきが表現されています。
発売は、「lululemon GINZA SIX」にて。思想に共感する方は、ぜひ遊びに行ってみましょう。
lululemon GINZA SIX
住所:東京都中央区銀座6丁目10−1
電話:03-5537-5387
info.lululemon.com/stores/jp/tokyo/ginza-six
※コラボレーションコレクションは、GINZA SIXのみで販売。
Source: フィナム