「綱渡りをする芸術家は常に落ちそうな状態にあるように見えます」とJ.Kimの創設者であるJenia Kimは考えます。しかし、彼女は「その行為にはかなりの力が必要です ─ 何もない空間上を歩くという明らかな脆さの裏には、「優れた技術と機敏さ、不屈の精神」が隠されています。それは繊細なバランスであり、それがJ.Kimとアントン・ベリンスキーとのコラボレーションでの新しいコレクションの中心的な比喩となります。彼らにとって、ウズベキスタンの綱渡り「ダルボジ」は、Kimによれば、「強さと脆さの間、アントンと私の間、異なる視点と考え方の間」といったバランスの象徴となりました。

5月の曇り空の日に、この象徴がタシケントのアブル・カシム・マドラサの静かな中庭で実現しました。中央アジアのワンダリング・サーカスからの文字通りの綱渡りをする者たちの下で、J.Kim x Anton Belinskiyのデビューコレクションが披露されました。そのバランスを保つ体を下に、モデルたちが新しいコレクションを披露しました。サーカスのテーマ（円錐形の帽子や多色の旗のモチーフなど）に加え、J.Kimのシグネチャーペタルのカットアウトやウズベキスタンの伝統文化へのオマージュを多層に取り入れています。

正直なところ、「伝統的」という言葉はウズベキスタンの首都であるタシケントでは複雑なものです。この都市の歴史は、13世紀にチンギス・ハンによって破壊され、シルクロードで中心的な拠点としての復活、そして数十年にわたるソビエト時代までの激動の中で定義されています。今日、中央アジアで最も人口の多い都市として、これらの革命の証拠をその表面に示しています。伝統的なウズベク工芸が施された邸宅は、高層のブルータリスト建築物とイスラム建築と並んで立ち、そのすべてが、丸天井、テーマ別の壁画、多色のタイルで繋がっています。

この多文化のミックスポットの背景とは異なり、J.Kimのスタジオは異色です。控えめな中庭の外れに位置し、その空間は明るく白くて風通しも良く、通常のテクニカラーな装飾はありません。代わりに、キムの作業場に飾られたムードボードには地元のアイコンが散りばめられており、パンの輪、金の歯、そしてベカサムの切れ端が重なっています。そしてもちろん、最新コレクションの衣類「友情の綱渡り」は、オーバーサイズのシルエットとベリンスキーの得意とする写真プリントとを融合させたものです。

Kimによれば、「コレクションのほとんどはタシケントでの生活からインスパイアされています」。ここでの「インスピレーション」とは、ウズベキスタンのファッションを取り入れることを意味し、縞模様の絹や宝石の布地から、J.Kimの目を引く”Lazat”シルエットで再構築されたスリムなヘッドカバーやスカートにレイヤーを加えています。しかし、それはまた、都市の風景や音のより抽象的な解釈も含んでいます。

例えば、このコレクションのアクセサリーは、タクシーのリアビューミラーに掛けられたお守り、ロザリオ、空気清浄機から直接インスピレーションを得ています。タシケントではほとんど至る所で見ることのできるシボレーは、現地の工場と高い輸入率のため、シルクのシャツに抽象的にプリントされた車や車のヘッドライトに反映されています。