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Anti Social Social Club の商品が届かないと1,000人以上がクレーム!?

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実はここ数週間、Neek Lurk(ニーク・ラーク)の手掛ける〈Anti Social Social Club(アンチ ソーシャル ソーシャル クラブ)〉はブランド始まって以来の危機に直面している。それは深刻な納品遅れ。数日前、英語版『HYPEBEAST』がInstagramでアンケート投稿を実施したところ、少なくとも1,320名のユーザーが、〈ASSC〉が7月4日(アメリカ現地時間)にオンライン発売したはずのアイテムを受け取っておらず、500人以上のユーザーが商品受け取りまで2ヶ月の遅れがあったことなどがレポートされた。コメントの分析から、商品を受け取れていない購入者たちの平均購入金額はおよそ380ドル(約42,000円)。ざっと50万ドル(およそ5600万円)ぶんの商品がシッピングされていないという計算になる。ファウンダーNeek Lurkは、この事についてのコメントを拒否しているようだ。

コメントのうちのいくつかは、問題なく商品が到着したというポジティブなフィードバックなのだが、その他多くのコメントは、この7月4日発売分の遅れについてなどのネガティブなものだった。そもそも〈ASSC〉のウェブサイトは、商品到着に要する時間が長くかかる事を注意書きとして明記している。オーダーから発送準備をするまでに14〜24営業日、そして発送されてから配達まで7〜10営業日、つまり、商品が手元に届くまで最大で34営業日かかることが記されているのだ。しかしそれでも納品の遅れは発生しており、60営業日が過ぎた今も尚、商品を受け取れていない購入者が多数存在している。

Anti Social Social Clubの2017年7月4日発売アイテムたち

『HYPEBEAST』も加担していると言うべきストリートファッションで起きる“ハイプ” -いわゆる炎上や興奮や熱狂のようなもの- は、シーンを盛り上げると同時に、レアなアイテムの発売を待つ時間さえこのカルチャーの一部としている傾向がある。人気アイテムを手に入れるために店頭に長時間並んだり、海外サイトの発売時間に合わせてパソコンやスマートフォンを繰り返しリロードし、その到着を辛抱強く待つというのが“常識”のようになってはいるが、セレクトショップ『Bodega』のファウンダーOliver Mak(オリバー・マック)はこう話す。「ASSCは届くのに時間ががる事で有名だよ。でも、ホントに自分のアイテムが翌日にでも欲しいのか、それとも、NeekがInstagramで高級車を転がしたり、ダッドハットを被ったスーパーモデルたちと一緒にタバコを吹かしてる姿なんかを眺めていたいのかっていうハナシだ。」

Makのコメントにつながる投稿は『HYPEBEAST』のInstagramにも寄せられていて、〈Anti Social Social Club〉のデリバリーは遅いというのは知っているが、いくらなんでも……という意見が多数。そしてここで思い出したいのが、ストリートウェアという市場を動かしているもの・各ブランドの人気の裏側にあるのもは、ブランドに関わる人物の人間性や、その人間性を形作ってきた経験・ストーリーであるということ。それに魅了されてしまったら、遅いシッピングでもやはり辛抱強く待ってしまうのというのが常なのだ。

ASSCは届くのに時間ががる事で有名。でも、ホントに自分のアイテムが翌日にでも欲しいのか、それとも、NeekがInstagramで高級車を転がしてる姿を眺めていたいのかっていうハナシ。

「ハイプというものがストリートウェアの流行を左右し、あえて希少に作られたものについて触れ回る事で、それをみんなが欲しいアイテムとして変換させるんだ」と話すのはRobleh Jama(ロブレー・ジャマ)。彼はレアアイテムをリリースするモバイルマーケットショピングアプリ・『Frenzy』を開発した会社・「Shopify」で、シニアプロダクトマネージャーを務める人物だ。確かにハイプとはブランドや小売店にとって便利なマーケティングツールであり、それによって買う価値があると信じた人々は、長時間店の外に並んだり、海外からの送料もいとわずオンラインショッピングをしている傾向のストリートファッション業界。しかしその一方、外側の世界を見てみれば、世の中はより早く、便利に商品が届く時代になっている。「Amazon」や「ASOS」といったグローバル企業は1時間でも早くデリバリーをする事に重きを置き、オンラインショッピング利用者はその便利さに慣れてしまっているのが現状のはず。「当日配送や当日配達が当たり前の事になっている今、消費者は売り手のビジネスの規模や状況なんて考える事はない。そんな時代でオンラインショッピングを運用するっていうのは、規模の小さなストリートウェアブランドにとっては過酷なはずだ」とJamaはコメントしている。

また、カスタマーサービスという点に於いても、大企業は体制が整っている場合がほとんどで、クレームに対応する部署などがあるのが常識だが、ストリートウェアブランドではどうだろうか? 今回の〈ASSC〉については、しびれを切らした購入者たちが問い合わせや催促、または返金を求めたメールを数多く送っているようだが、大半は返信されないまま放置されている現状らしい。

HYPEBEASTのInstagramに寄せらせた納品遅れについてのコメント

〈ASSC〉からの声明や説明が未だされていない現在、この大幅な遅れの理由は様々な憶測がささやかれるだけだが、ひとつ予想されるのは、生産が追いついていないのでは? という事。オーダーが入った分を生産する、受注生産という体制のため、オーダーの数が多すぎて遅れているのではないかと言われている。業界関係者たちの話では、バイヤーやセレクトショップを介さず、直接消費者とやりとりをする小規模なストリートウェアブランドの場合、受注を受けてからプリントするという方法が経済的な理由で好まれている。それは、売り上げの立っていない状態でブランドが生産資金をつぎ込み、多くの在庫をかかえなければいけないというリスクがないためだ。しかしこのストラテジーでは、納品に時間がかかるという大きなリスクも付いてくる。〈Anti Social Social Club〉Terms and Conditionsページでは、「オンラインの掲載アイテムは全て在庫があるもの」だと書きつつ「掲載されていても売り切れている場合がある」と相反する内容が書かれているので、結局のところ在庫があるのかナイのか、定かではないのだ。

さらに体制の整っていないこじんまりとしたストリートウェアブランドにとって厄介な存在がbot(ボット)である。人気が出てきたブランドのオンラインショッピングサイトに、転売屋やファンなどがbotを仕込み、自動プログラムされたbotによってたくさんのオーダーが一挙に押し寄せると、小さなブランドのオーダー処理能力は格段に低下してしまう。bot対策として、『Frenzy』のようにApple IDや指紋スキャンなどのテクノロジーを使い、botをはじくシステムを導入する事も可能ではあるが、実際のところインディペンデントで小さなストリートウェアブランドがそのようなシステムを導入しているケースはほとんどないようだ。そしてbotの存在により、ブランドはウェブサイトのクラッシュや、転売価格の高騰などを経験する事になる。ある意味では、それが人気ブランドになった証として人々の目に映るのだ。

しかし一体、どこまでがそのハイプによって起きる現象として許され、どこからが非難・クレームの対象になるのだろうか? Instagramのコメントから察するに、少なくとも今の〈ASSC〉は、間もなく発売予定という『Playboy』とのコラボレーションリリースを盛り上げる前に、現在滞っているオーダーの処理とデリバリーを優先していただいきたいものである。

Jay Wills

今回の〈ASSC〉のように、消費者直結の小規模ブランドには、購入者に多大なストレスを与えるかもしれないリスクがつきまとっている。一方『Bodega』のMakは、リテーラー(小売店)として駆け出しの小規模ブランドからもバイイングをする側の人間。然るべき時期に商品を店頭やオンラインに並べ、消費者に届けるという立場だ。納品の遅れがリテーラーから忌み嫌われるのは、発売時期を見込み、売り上げを予測し、予算を割くというリテーラーのシステムを大きく狂わせてしまうから。ロジスティックが整っていない駆け出しのストリートウェアブランドとビジネスをするという事は、リテーラーにも大きなリスクである。しかしMakは、「僕らは、たくさんのインディペンデントなアーティストや集団が作っているアイテムをサポートしている。それは、彼らの作っているものが純粋なクリエイションへの情熱から生まれたピュアな作品とも言えるものだから。僕らはそういうアイテムが好きだし、そういうものに価値があると思う。彼らのほとんどにとって、僕らとの取引が初めてのビジネスだったりするから、時には予定通りにアイテムが届かない時もある。でもそれで彼らとの関係性が壊れる事はないんだ」と話し、若いブランドの納期遅れは珍しい事ではないと踏まえた上で「どんな場合でも、お互いのオープンコミュニケーションと誠実さが最も大切だ」と語っている。

客の満足度というのは、期待と現実とのバランスなんだ。たとえ待たされるとしても、相手がそれをわかってくれていれば、辛抱して待てるもの

ファッションコミュニケーションエージェンシー「FACTORY」のファウンダーMark Silver(マーク・シルバー)もこれに同意見で、「小さなブランドにとって、正直でいる事がカギなんだ。状況を説明し、解決するために動く事」と話すが、いくらファンやリテーラーが小さなブランドをサポートするつもりでも、コミュニケーションが成されなかったらその支援というものは消えてしまうと述べ、「物事には結末というものがある。客の満足度というのは、期待と現実とのバランスなんだ。たとえ待たされるとしても、相手がそれをわかってくれていれば、辛抱して待てるもの。ただ、Xという期間まで待つ覚悟ができていたものが、Zを過ぎても届かない、連絡もないということでは、不満やフラストレーションを産んで当然。結果、ブランドは失望されてしまうことななるんだ」と語った。

〈Anti Social Social Club〉は待たされる – これがブランドを知る人々にとっての常識だったとしても、それはブランドへのサポートの気持ちがあってはじめてよしとされるもの。少なくとも『HYPEBEAST』にフィードバックを寄せてきた人たちの大半は、そのサポートの気持ちを失いつつあるのが現状のようだ。皮肉にも、ストリートファッションと“待ち”や“並び”は切り離せない現象である。しかし、“待ち”や“並び”をいとわずこの市場を支える一人一人のファンたちにも、当然のごとく限界があるのだ。全ての“ハイプ”の裏側には、ブランドのキャラクターや世界観が大きく影響しているが、このコアでアンダーグラウンド、アンチソーシャル(非社交的)な世界観を打ち出し、数々の“ハイプ”を繰り広げてきた〈Anti Social Social Club〉は、今後どんな展開をみせるのだろう?

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Source: HYPE BEAST

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