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Uncaged Hero Spotlight:TIN が音楽を通してアジア人の固定観念を打破する術とは

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Brandon “TIN” Mai(ブランドン・TIN・マイ)は、彼が活動するニッチなサークルから突如頭角を表した才能ではない。ブルックリンのベッドフォード=スタイベサントで生活するTINの類稀なクリエイティビティは、広告業界で培った経験が大きく起因している。しかし、急成長を続ける同アーティストは、ここ数年で彼の音楽的才能を開花させることに成功したのだ。

既述の才能は、休息と仕事という相反するものが逆説的にバランスを取る彼の寝室なしには語れない。洗練されたTINの部屋には、ベッドの真横にマイク、シンセサイザー、PC、その他録音機材が設置されている。これらのツールは、彼が夢の中で感じた音のイメージを起床後すぐに記録するためのものであり、これによって彼は2017年から今日に至るまで、自らの才能を急速に磨いていくことができたのだ。

アーティストとしてのキャリアはお世辞にも長いとは言えない。それでもTINはすでに雑誌の表紙を飾り、「Tiger Beer(タイガービール)」の“Uncaged”へと参加、そして「88rising」が主宰するツアーへの参加権も獲得している。我々はそんなTINと彼の自宅で落ち合い、“創造性”をキーワードに様々なことを聞き出してみた。

父がかけた音楽はまるで、島民全員にとってそれが全てだったように感じたよ。

TINは椅子に腰掛けながら、音楽は人間の日々のコンディションと切っても切り離せない関係にあると語る。音波は一種の物語を表現すると同時に感情を宿し、時に文化的変化を生み出したり、人と人を結びつける役割を担うという。つまり、音楽の存在は、彼にとって彼自身が存在するというその事実を世界へ伝達するためのツールなのだ。

「僕の両親は70年代にベトナム戦争を逃れ、避難者たちが集まる島で出会ったんだ」、アジア系アメリカ人一世である彼は自身のルーツを喋りだす。彼の父と祖父はキャンプ地の気を紛らわすべく、手の空いた時間を有効利用してラジオ設備を作り、それを通して音楽を発信していた。「父がかけた音楽はまるで、島民全員にとってそれが全てだったように感じたよ」。後発的ではあるものの、彼の父はこの行動に端を発して視野が広がっていき、リスナーの中から才能のある人々を彼のラジオに参加させるディレクター的役割を担うことになる。そして、ラジオから発信されるTINの父の声がTINの母に伝わり、結果として2人は結婚することとなったのだ。


音楽によって結ばれた2人はその後、アメリカ・オレゴン州に新居を見つけるための恩赦を得た。新居に住んで5年の歳月が経過した時に生まれたTIN少年は、両親と過ごした環境を「音楽性を育むためには素晴らしい両親だったよ。日常にクリエイティビティを養うための要素が普通に存在するんだ」と振り返る。それゆえ、アーティスティックなものへ対する関心が表れたのも早く、彼は家にある楽器の多くをまるで日用品のように扱っていた。TINが小学5年生の時、彼の父がTINのために違法でPhotoshopをダウンロードした、というストーリーを聞けば、彼がどれだけ若い頃から才能があったかはお分りいただけることだろう。

TINのアート性の高いものへ対する情熱と才能は、趣味であると同時に、学業で良い成績を収めることや経済的成功にも直結した。そのことについて、彼は「アートは趣味。学校での成績はAだったし、お金も稼いでいたよ。本当に特殊な家庭で、得たものはすごくアーティスティックだったけど、同時に実用的でもあったんだ」と説明する。移民の息子として、TINは彼の両親が叶えられなかった夢を実現するために尽力し、それによって彼は人生の一部を形成する素晴らしい職業を見つけたのだ。

僕の人生の有意性は、音楽以外の何物でも立証することができないということに気付きました。

しかし、その実用主義が次第に彼の音楽へ対する情熱を鎮火することになる。ビデオゲームに時間を費やすようになると、彼自身に対する歪んだ想いを増幅させ、社会性がなく、消極的な人格へと変わっていったのだ。もし仮にメディアがアジア人の活躍する場を示さなければ、TINは夢を叶えるための能力を無駄にしていたかもしれない。彼がいつ、どのような場所で音楽を演奏していようと、それは“隠し芸”以外の何物でもなく感じたこともあったという。しかし、「それは本当にトンネルの終わりのような小さな光でした。それは他とは全く違うもので、僕がかつてクールだと思ったもの以外の何物でもなかったんです。僕の人生の有意性は、音楽以外の何物でも立証することができないということに気付きました」

大学進学のために彼が家を出る時も、音楽は彼にとって欠かせない要素だった。彼は法律学の勉強に勤しむも、結局彼は親からの反対を押し切り、自身の夢を追いかけることを決意する。彼の関心がグラフィックアートへ傾くと、彼は自身の中に忘れかけていたクリエイティビティを再発見する。政治的混乱が世界に蔓延していくにつれて、彼は世界にポジティブな変化をもたらしたいという意欲が込み上げてきたという。しかし、それはニューヨークを出るまで、完璧に実現することはなかった。



そして、彼はこれまで自身が信じていたものと全く異なる価値観と人々が存在する都市に着地することになるのだが、ここでTINは自身の文化や家族へ対するイメージと世間のそれとの不一致に気付く。この瞬間、彼は幼少時代とメディアというものを文脈化し始めたのだ。「僕が生活していた場所には白人しかいませんでした。だから、僕にはそのイメージが染み付いていたのでしょう。両親に非はありません。私が歳を重ねるまで、自分が白人ではないということに気付くことがなく、人々が僕を見る目を認識し、そこで初めて自身が白人ではないと自覚しました」。そうして、彼はクリエイティビティを通して、TINというアイデンティティを確立していくことになる。

僕がどういう人間であるべきかを学ぶキッカケになりました。

2017年は彼の芸術性が開花する記念すべき1年になるが、偶然にもそこから爆発的な飛躍を遂げる。「僕にとって、7年以上の関係にあった彼女が、僕がどういう人間であるべきかを学ぶキッカケになりました。まだ僕はあるべき姿ではなく、ここに引っ越してくるまでそのことに気付くことはできませんでした」。彼は音楽を追求するで自分自身と向き合い、周囲との関係性を探り、そして年月を重ねるにつれて、自身のアイデンティティを内面からコントロールできるようになっていった。自己と文化の両方を正当に評価することで、彼は自分の持つアイディアを確信へと変えていき、そしてエッジの効いたファーストシングルを提げ、鮮烈なデビューを飾ったのだ。

“RGB”は、彼のキャリアの出発点である。赤は熱意と怒りを呼び起こす共感覚を意味し、青は現在探求しているものを描写する。エネルギーに満ち溢れ、大胆ながらもわかりやすい、そんなRGBをテーマにすることで、彼は疑念を抱く人やステレオタイプだった彼自身に一種の挑戦状を突きつけた。このように、彼は意味もなく貼られたレッテルに縛られず、新世代のアジア人が“今、ここで、何をやっているのかを定義する”ことを望み、現代シーンにおいて名を馳せるアイコンたちと同じスケールで、アジア人アーティストのコミュニティを強固なものにすることを望んでいるのだ。

確証を得る素晴らしい経験となりました。これは第1章であり、真摯に受け止め続けるために、私に多くのエネルギーとモチベーションを与えてくれました。

その後、TINはシングルで表現したことをさらに掘り下げながら、アジア系アメリカ人の経験と歴史に世間からの注目を集めようと試みる。彼は「人々が僕らの歴史を忘れ始めると、彼らは我々にどういう過去があって、現在に存在するかを理解できず、結果として共感できることが少なくなってしまう」と口にするが、彼の曲には人生において我々の誰しもが経験することの範疇を超えた魅力が存在する。

彼はその芸術性に磨きをかけることで、個性にも変化が表れてくる。彼の音楽には、自身の声を世界に届けるための強い意思が込められている。「Tiger Beer」のアメリカチームは新進気鋭の才能を見つけることに魅了されており、TINは自らのメッセージを伝えるための15分の映像を提げて、「Tiger Beer」が主宰するコンペティションに参加した。サンフランシスコを拠点とするアジアのクリエイティブ集団にスポットライトをあてるためのプラットフォームを活用し、彼はパワフルなパフォーマンスとシンガーソングライターとしての才能で審査員たちを魅了。彼は本企画の参加したことを、「確証を得る素晴らしい経験となりました。これは第1章であり、真摯に受け止め続けるために、私に多くのエネルギーとモチベーションを与えてくれました」と振り返った。

現在、秋の一大イベントで「Tiger Beer」の「Uncaged Heroes」の一員に参加することを心待ちにしているTINは、サウンドに一層磨きをかけている。彼は現代ミュージシャンが過去に見たことのない、何か新しいことをしようと試みており、これはアジアのクリエイティブネットワークを成長させ、複数の芸術分野を通じて、アジア人の存在価値を高めることを意味するのだ。


TINの楽曲を聴きたいという方は、上のプレーヤーならびに彼の『Soundcloud』から。また、アジアの大手メーカーが主宰する秋の一大イベントについては、「Tiger Beer」のオフィシャルサイトをチェックしてみてはいかがだろうか。

未成年の飲酒は法律で禁止されています。

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Source: HYPE BEAST

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