神奈川県・鵠沼で生まれ育ったアーティスト・baanai(バーナイ)。抽象的なモチーフやペイントのほか、文字を繰り返し並べるアートワークがシグネチャースタイルとして知られるアーティストだ。〈COMME des GARCONS(コム・デ・ギャルソン)〉とのコラボレーションを実現し、グローバルブランド〈RVCA(ルーカ)〉との取り組みや、国内でいよいよスタートした〈CONVERSE SKATEBOARDING(コンバース スケートボーディング)〉へのアートワーク提供も行うbaanai氏。そんな彼は今年、国産クオリティに定評のあるメーカー〈Audio-Technica(オーディオテクニカ)〉ともチームアップ。高音域はもちろん、重低音の音質にこだわったSOLID BASS(ソリッドベース)シリーズの最新プロダクトラインのためのアートワークを手がけている。今回は、独自のスタイルと哲学をストイックに貫く印象のbaanai氏に、ライフワークであるアートについて、長年続けているサーフィンについてなど、彼の実直で私的なエピソードを伺った。
– RVCAやCOMME des GARCONSへの作品提供をされてきたbaanaiさんですが、仕事としてアートを始めたきっかけは何ですか?
小さい頃から絵を描くのは大好きでした。でも周りの大人や学校の先生からは、「絵で生きていくのはやめなさい」って言われ、美大も受けたけどダメで、そのために通っていたアトリエでも、デッサンの成績は最悪っていう、もうおちこぼれ。だから、絵を描いて生きていくことは諦めてたんです。でも、5年くらい前に家族や周りにいろいろあって、人生のどん底を経験したんです。すごく辛くて、本当に死んでしまいたくなるくらいの。ただ、どうせあとは死んでしまうだけなら、自分の人生で心からやりたかったことを死ぬ気でやってみよう、自分は絵が描きたかったんだ、って思ったんです。
– そんなきっかけがあったんですね。その決心をしてから最初に描いた絵は覚えていますか?
はい。“WAVE IS THE HERO”っていう文字です。前からこのフレーズは描いていたんですけど、その時もこれでした。2014年の年末でしたね。
– では今アーティスト活動を続ける理由とは?
まずひとつは、死ぬほどやったら自分はどこまでいけるのかを知りたいっていうことです。それともうひとつは、学歴も実績も何もない自分を、一番最初にピックアップしてくれた方のご恩に背かないためです。
– その方が、COMME des GARCONSの川久保玲さんですか?
そうです。初めて川久保さんに作品を送ったのは2015年の3月で、そこから自分の作品を気に入っていただけ、3度に渡り、洋服やショッパー、DMに作品を使っていただきました。
– すごい!そこが大きな転換期でもあり、活動の幅や注目のされ方も広がっていったのかと思うのですが、今回Audio-Technicaと取り組みをするきっかけは何だったのですか?プロジェクト進行の中で何か工夫した点などあったら教えてください。
Audio-Technicaは長年グラミー賞で使われているマイクを作っている企業で、品質に誇りを持って物作りをしているという事を知って、オファーを受けさせてもらうことにしました。今回SOLID BASSというオーディオシリーズのためのアートワークを作ったんですが、お願いされた“Feel deep, Live deep”という文字には“e”が多くて、工夫した点といえば、リズムやバランスを汲んでその“Feel deep, Live deep”のフレーズにSOLID BASSの文字を加えさせてもらったことです。
– baanaiさんがSOLID BASSの製品で聴いた音楽は何ですか?また、普段どんな音楽を聴きますか?
Deepest Blueの“Deepest Blue”っていう曲です。あと夏になると毎年、彼らの“Give It Away”を聴きたい気分になりますね。なのでこの時期はよく聞きます。でも普段作品を作っているときは、全く詳しくないんですが、ジャズとかヒーリングミュージックみたいなのを聞くことが多いです。
– 先ほど伺った“WAVE IS THE HERO”もそうですが、海とサーフィンにインスパイアされた作品を多く制作していると伺っています。どれくらいの頻度で海に入りますか? baanaiさんにとってサーフィンの魅力とは?
波があればほぼ毎日入ります。波のない日や入れない日もあるので、平均すると週に3〜4日。持論ですけど、波って、自然が作り出す作為のない一番美しい芸術だと思うんです。そしてサーフィンは、それに乗りながら、最前列でその芸術を見て、さらに触れることもできる。それってよく考えるとすごい行為だなって思うんです。それはどんなインプットにもヒーリングにも勝るものがあるって感じるんです。その思いで、というか、それを口実に(笑)、毎日サーフィンに出かけています。
– baanaiさんがお店番をしながら絵を描いていたこともあるというこの『California General Store』ですが、ここにはJoel TudorやBarry McGee、Ray Barbie、Alex Knostといったサーフやアート、スケートのレジェンドたちが訪れていますよね。このお店での彼らとのエピソートや思い出などはありますか?
僕はBarry McGeeの大ファンで、この店に来たときは思わずサインと写真をお願いしました。それで、「僕も絵を描いているんです」ってCOMME des GARCONSのショッパーを渡したら、すごく驚いてくれて、たくさん話してくれたのが嬉しかったです。
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Source: HYPE BEAST