1961年、現在93歳のゲルハルト・リヒターは、創造的な自律のために自由を冒しました。当時、ドイツは共産主義の支配下にあり、政府はベルリンの壁の建設直前でした。彼は、増加する芸術的な検閲に屈しないことを決意しました。これは、視覚的な芸術の偏見が高まり、彼の鋭い実験的アプローチよりも具象的で楽観的な作品を好む一種の国家主導の承認として現れていました。その代わりに、当時29歳の芸術家は、ポケットに350ドイツマルク（相当する£118）を持って、東ベルリンとなる予定だった自宅から西ベルリンへと向かい、新しい生活を始めました。

‘セルフポートレート’, 1996

純粋な根気と制約からの解放を決意したことで、リヒターは自身のキャリアを芸術の世界で最も尊敬されるものの1つに築き上げ、絵画への貢献は最も重要なものの1つとなりました。この魅力的な旅が、芸術史家であるディーター・シュワルツと現在はイギリス芸術協議会の会長であるニコラス・セロタによってキュレーションされたフォンダシオン・ルイ・ヴィトンの大規模な回顧展にインスピレーションを与えました。3月2日まで開催されるこの展示は、リヒターが創造において一貫性を保ちつつ、常に再発明の名人であることを称賛しています。

1人の芸術家の作品を包括的にカバーするモノグラフィック展示で有名なフォンダシオン・ルイ・ヴィトンとリヒターは、まさに相性が良い組み合わせです。芸術家の進化へのコミットメントに導かれ、彼の作品群は過去60年間にわたって制作された、油絵、ガラスと鋼の彫刻、鉛筆とインクのドローイング、水彩画、そしてオーバーペイントされた写真を包括しています。

シュワルツとセロタによるリヒターの芸術的キャリアへの旅は、1960年代初頭に始まります。リヒターは、ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーで学生時代に制作した全作品を変化の象徴として、庭で焚き火にかけました。リヒターが選んだ主題に焦点を当てると、彼は家族の肖像画（アンクル・ルディ、1965年）やテーブルの写真（ティッシュ、1962年）など、一見平凡な画像を取り上げ、それらに塗りつぶしや塗料の傷をつけることで不気味なメイクオーバーを施しました。この最初の選択では、1970年までの作品がカバーされており、リヒターが写真を自身の作品の源泉としてどのように使用したかの基盤が築かれました。このテクニックは、彼のスタイルの一貫した特徴となり、現実と表現の間の境界をぼかす支柱となりました。

左から：‘レゼンデ’, 1994; ‘アップルバウム’, 1987; ‘ヴェネツィア’, 1985

展示の次のセクションでは、リヒターが絵画を単なる表現だけでなく、何を表現するかという問いに挑戦した方法にさらに深く踏み込んでいます。ここでは、彼の特徴的なぼかし技法の起源や、認識可能なものを取り上げ、それを毎回変化させ、簡単に識別できないようにするという彼の欲望が見られます。1つの例として、5部作のティツィアーノの受胎告知（1973年）があります。これは、ティツィアーノの16世紀の聖母マリアと同名の天使の描写を解釈したものです。

しかし、リヒターによると、それは徐々にコピーされ、ぼかされ、最終的にはティツィアーノのオリジナルを霜や曇ったガラスを通して見た場合のような外観になります。

同様の欲望が、彼の19部作のカラーチャート（1966年）シリーズでも発揮されています。これは当初、古風な芸術界から鼻で笑われ、それは想像力に