Katharine Hamnett(キャサリン・ハムネット)は“デザイナーの中のデザイナー”だ。彼女はファッション界屈指の社会派であり、イギリスの伝統的なデザインをアバンギャルドに解釈した第一人者として世界中のデザイナーに影響を与えてきた。そのアーカイブはすでに資料的価値を持ち、Kanye West(カニエ・ウェスト)も2015年に『Vogue』のインタビューで自身が影響を受ける人物を問われた際、「Raf Simonsだろ、Helmut、Margiela、Vanessa、そしてKatharine Hamnettだ」と答え、それをインスピレーションソースにクリエイションをしていることを明かしていた。
〈Katharine Hamnett〉というワードを聞いた時、多くの人が“スローガンTシャツ”を頭に思い浮かべるのではないだろうか。彼女が初めてそれを披露したのは1983年のこと。大ぶりなブロック体で“CHOOSE LIFE”とアクティビズム(積極行動主義)的なメッセージを配したアイテムは、Wham!(ワム!)のGeorge Michael(ジョージ・マイケル)が“Wake Me Up Before You Go Go”のMVで、Queen(クイーン)のRoger Taylor(ロジャー・テイラー)が“Hammer To Fall”のMVで着用するなど、世代を代表するミュージシャンたちにいち早く取り上げられたのだ。また、Hamnettが“58% DON’T WANT PERSHING”と書かれたチュニックを着てMargaret Thatcher(マーガレット・サッチャー)と面会した出来事は、『Vogue』の投票でファッションの歴史において最も印象的な瞬間のひとつにも選ばれている。そんな輝かしい過去を持つHamnettは、さらなる進化を求め、メンズコレクションのリローンチを決意。『HYPEBEAST』はメンズウェアを復活させた理由、コレクションのキーピース、そしてKanye Westとともに仕事をした際のことについてなど、業界の重鎮に話しをうかがった。
ー なぜこのタイミングでメインラインを復活させたのですか?
消費者、特に若い消費者ね。彼らたちは倫理的背景を持つ洋服を欲していると思うの。私たちはそれのパイオニアです。最近のブランドは道徳的でありながら、政治的なメッセージを伝えようとしていて、業界はその真っ只中にいるの。
1984年に私がMargaret Thatcherとあった際、“58% DON’T WANT PERSHING”と書かれたメッセージピースを着用していたでしょ? 例えちょっとお金がかかろうとも、あれこそが私たちのブランドのDNAで、いつの時代もキャンペーンの根幹をなすものなんです。だから、ブランドとして完璧な時代精神をマーケットに持ち帰るという意味において、私たちはドリームチームだと思うの。私はここ数年間やってきて危機を感じた、ただ洋服を製造するような仕事に立ち返る気はありません。でも、ちょっと変わった立場にいても、私たちが憧れの存在になれると信じているわ。オンラインストア経由でも、私たちが尊敬に値する確固たる地位を確立したことに疑いの余地はないですからね。
ー 一度中止したコレクションとリローンチを果たした今回で最も大きな違いはどこでしょう?
私はこれをある種の革命だと思っています。アーカイブのシルエットを再考しているから〈Katharine Hamnett〉の80年代の空気感を感じられるはずだけど、同時に現代的なひねりも加えました。私はアイコニックなスタイルとアーカイブを再定義しながら、刷新を続けていきたいと考えています。嬉しいことに、私のクリエイションにはカルト的な人気もあります。だから、このコレクションはファンを楽しませつつアーカイブを再構築するということに基づいて制作しました。
ー コレクションのキーピースは?
過去の私の自信作や、『Harpers & Queen(現 The Anna)』のエディターだったAnna Wintour(アナ・ウィンター)のお気に入りでもある70年代のワイドレッグトラウザー、人気アイテムのひとつである80年代のメンズパンツなど、19世紀に会社員の制服として使用されていたイギリスのツイル素材からヒントを得たオーガニックコットン製のプロダクトかしら。80年代に回顧したスエットシャツやパンツ、パッド入りのシルク製ウェアとかも根強い人気があるわね。パッド入りのシルク地ドレスガウンも着るだけで最高の気持ちになれるから是非チェックしてほしいわ。ちなみに、アーカイブからインスピレーションを受けたシャツや現代的なアイテムは、スイス製のオーガニックコットンとシルクを採用しているの。
ー Kanye Westもあなたのアーカイブを使用しましたよね?
私がサインした約11億円の違約条項のある秘密保持契約では、Kanye Westにあまり多くのことを許可していないんです。でも、彼との仕事ではちょっとしたひらめきもあったわ。あの時、私は自身のアーカイブスタイルから現代のシーンに通じる数多くの関連性を見出すことができたの。私は自分のキャリアの中でファッション性があり、ある種の魂を宿したような洋服を作ろうとしてきたんだけど、今はファッションという枠から外れないように、永遠にワードローブに残るようなものを作りたいと思っているわ。彼がピックアップしたのはそういうもので、そういうスタイルが今の私を駆り立てるものだと感じるわね。
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Source: HYPE BEAST