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ドイツ・ミュンヘン発のラグジュアリーブランド〈MCM(エムシーエム)〉は、韓国のファッションの中心地であるソウル・清潭に位置するフラッグシップスペース『MCM HAUS(エムシーエム ハウス)』にて没入型エキシビション “BE@RBRICK in MCM Wonderland”を、2025年9月に開催した。また、本展のために限定のカプセルコレクションも制作し、会期中に展示会場で販売を実施。このスペシャルなコレクションは、現在〈MCM〉の公式オンラインストアなどで数量限定で販売中だ。
“BE@RBRICK in MCM Wonderland”は、ソウルで行われた国際的な現代アートフェア「FRIEZE SEOUL 2025(フリーズ・ソウル2025)」のオープニングに合わせて開催。「FRIEZE」はロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、ソウルで展開される世界屈指のアートフェアであり、世界中のギャラリーやアーティスト、コレクターが集う国際的な文化イベントとして知られる。1976年に誕生した〈MCM〉は、創設当初から音楽やアート、デザインの世界とのつながりを育んできた。
今回のエキシビションは「MCM JAPAN」社長の金海利が企画し、同ブランドと関係の深い「MEDICOM TOY(メディコム・トイ)」の赤司竜彦がキュレーションを担当。会場では、フランス・パリを拠点に活躍する帽子デザイナーの日爪ノブキ、日本の伝統技法である“木目込み(きめこみ)”を用いた作品で知られるアーティスト・谷敷謙、1582年創業の“印伝(いんでん)”の老舗「印傳屋上原勇七」の3組がBE@RBRICK(ベアブリック)をテーマに制作した作品を展示した。これは〈MCM〉にとって初のBE@RBRICK特化型エキシビションであり、ブランドの文化的イノベーションを象徴する試みといえる。本稿では〈MCM〉が創出した幻想的な空間 “BE@RBRICK in MCM Wonderland”の全貌を、参加アーティストへのインタビューとともに振り返る。
世界的に著名な建築デュオ Neri & Hu(ネリ&フー)の設計した端正な佇まいの『MCM HAUS』の屋上を見上げると、巨大なBE@RBRICKが出現。ショーウィンドウから、日爪ノブキの手掛けたBE@RBRICKのアートピースが来場者を迎える。1Fスペース中央には〈MCM〉とBE@RBRICKがこれまで制作してきたコラボレーションプロダクトが集結。また、本展のための限定カプセルコレクションも店内に並び、アートギャラリーのような空間構成に。一般公開に先駆けて9月2日(火)に実施されたオープニングパーティには、ATEEZのミンギ、xikersのイェチャン、MAMAMOOのムンビョル、タイの女優ナムターン、中国のインフルエンサー・イーモンリンといったセレブリティを含む、700名以上のゲストが来場。ルーフトップでもDJを招聘したアフターパーティが行われ、大きな盛り上がりをみせた。
目次
日爪ノブキ(Nobuki Hizume)
日爪ノブキは、日本を代表する帽子・ヘッドピースデザイナー/帽子職人。世界有数のファッションアトリエで研鑽を積み、2019年に日本人として初めて帽子職人部門におけるフランス国家最優秀職人章(MEILLEUR OUVRIER DE FRANCE)を受賞。2020年春夏シーズンより自身の名を冠したブランド〈HIZUME(ヒヅメ)〉する傍ら、数々のオートクチュールブランドと協業を行っている。本展では、オートクチュールの技法で仕上げた彫刻的なヘッドピースを纏う真っ赤なBE@RBRICKを中心に据えたウィンドウディスプレイを発表し、シルエットとアイデンティティの関係性を問い直す。強烈な存在感を放つこのアートピースについて、日爪氏に話を聞いた。
日爪さんが“BE@RBRICK in MCM Wonderland”に参加した経緯を教えていただけますか?
日爪ノブキ(以下、N):実はこのエキシビジョンへの参加が決まる前から、既にMEDICOM TOYさんとのコラボレーションが進行していたんです。そのための作品を制作しているうちに、赤司さんからFRIEZE SEOULのエキシビジョンのお話をいただきました。
今回の展示作品のコンセプトを教えてください。
N:僕の過去のコレクションピースで『オリンピアレッド』という帽子があるのですが、その帽子をイメージしたBE@RBRICKを作ってほしいという依頼を受けました。僕自身もともとBE@RBRICKには憧れがありましたし、あのデザインはマスプロダクトの完成形だと捉えています。今回のコラボレーションのお話をいただき、自分もBE@RBRICKのような普遍的なプロダクトを作りたいという思いを込めて作品を制作しました。
結果的に一点物のアートピースが出来上がったわけですが、今後はBE@RBRICKのような量産可能なプロダクトを作ってみたいという気持ちはありますか?
N:もちろん、機会があれば挑戦したいですし、近い将来実現する可能性はあるんじゃないかと思っています。今回ご一緒したMCMさんもアイコニックなプロダクトを作られていますよね? あのロゴとレザーの組み合わせは、一目見れば誰もがMCMの製品だとわかります。完成されたプロダクトを生み出した2つのブランドとのコラボレーションは、僕にとって非常に学びの多い機会でした。
谷敷謙(Ken Yashiki)
谷敷謙は、日本の伝統技法を現代美術に融合させ、独自の創造的世界を築いてきたアーティスト。彼は木に溝を彫り、そこへ布をはめ込む人形制作の伝統技法 “木目込み”を長年にわたって追求し、現代的な視点でアートへと昇華した作品を作り続けてきた。日常から収集した古着や繊維、その中に宿る時間の痕跡や人々の記憶を素材とし、過去・現在・未来が交錯する地点を芸術として表現している。本展の3Fスペースでは、彼の代表作のひとつである『PAUSE-Usa Usa』をもとに制作したBE@RBRICKを初披露。また、MCM製品の端切れを用いたロゴサインも発表。色鮮やかな花々に囲まれたスペースは、時空が歪むような不思議な空間を創出していた。
谷敷さんが“BE@RBRICK in MCM Wonderland”に参加した経緯を教えてください。
谷敷謙(以下、K):Goyo Gallery(ゴヨウ ギャラリー)さんのご紹介でMEDICOM TOYの赤司さんとお会いする機会があり、色々なお話をしました。その後、赤司さんが“BE@RBRICK in MCM Wonderland”のキュレーションを担当することになり、MCMさんへ候補のアーティストを数名提案したところ、金社長が僕の『-PAUSE- Usa Usa』という作品を気に入っていただいたようで、参加が決まりました。
展示作品について説明していただけますか?
K:今回は『-PAUSE- Usa Usa』と同じ手法でBE@RBRICKを作りました。オリジナルの『-PAUSE- Usa Usa』は2009年ごろの作品で、僕の娘が0歳から2歳までに着ていた服を使用しているんですが、今回は2~12歳の時期に着ていた服を集めて作りました。
オリジナルと比較すると、今回の方が全体的に色味が明るく感じます。
K:そうなんです。例えば赤ちゃんの着てる服っておくるみだったりするので、ダブルガーゼや柔らかくて肌に優しい生地のものが中心になります。あと赤ちゃん服って総柄のものが多いんですよ。それから大きくなっていくにつれて、綿100パーセントの服や無地のものを着ることが増えるので、娘の成長に合わせて何らかの変化が感じられる作品になっていればなと。
K:僕の中では、ファッションの本質はコミュニケーションだと思っています。もちろん、みんな自分が着たい服を着ればいいとは思いますが、それぞれが「他者からどう見られるか」といったことまで意識して装うことができると、その服を通して社会性が生まれるんじゃないかな。『-PAUSE- Usa Usa』シリーズは個人的なストーリーを反映した作品ですが、この服の総体を見てもらうことで、今を生きる人々と同じ時代の空気を纏ったものだという風に認識していていただけたら、すごく嬉しいですね。
展示空間も華やかですね。これも谷敷さんのアイデアですか?
K:具体的なプランについてはMCMさんとMEDICOM TOYさんに考えていただいたんですが、会場に花を入れてくださいとだけお伝えしたんです。実際に出来上がった空間を見たら、予想以上にたくさんの花に囲まれていて、素敵に仕上げていただいて感謝しています。
他の作家の方の展示をご覧になって、どのように感じましたか?
K:それぞれのフロアにトーンとマナーがあって、非常に考えられた構成になっているなと思いました。僕のフロアは少しファンシーで、ポップで明るい要素を表現しています。一方で、1Fの日爪さんの展示はよりシックで、MCMさんのもの作り、クラフトマンシップにフォーカスした見せ方をされてるなと。5Fの印傳屋さんの展示は、より伝統を重んじた空間になっていると感じました。
印傳屋上原勇七(INDEN-YA Uehara Yushichi)
日本が誇るヘリテージブランド「印傳屋上原勇七」は、鹿革に漆で模様を施す伝統技法 “甲州印伝(こうしゅういんでん)”の技を400年以上にわたり伝承してきた。その繊細な技術と美しい仕上がりは、国内外で高く評価されている。今回のエキシビジョンでは、この伝統技術を用いてBE@RBRICKを再構築。〈MCM〉のモノグラムを漆で表現することで、文化的遺産を現代的なアート作品へ生まれ変わらせ、伝統工芸の新たな可能性を示した。展示のコンセプトについて、「印傳屋上原勇七」専務取締役・上原伊三男、そして作品の制作を担当したアーティストの小泉裕太郎(IVXLCDM®︎ レザークラフトマン)に話を聞いた。
今回の展示空間や作品のコンセプトについて説明していただけますか?
上原伊三男(以下、U):伝統と革新をテーマに空間を構成しました。印傳屋は普段はバッグや革小物を制作していますが、我々の伝統技術をBE@RBRICKに取り入れるのは新しいチャレンジでした。特にBE@RBRICKの形状にあわせて革を張り込む技術は前例がないため、小泉裕太郎さんにご協力をお願いしました。
制作する上でどのような点が大変でしたか?
小泉裕太郎:漆を施した鹿革は伸ばすとロゴが歪んでしまうので、そうならないようにきっちりと張り込む必要があります。また、厚みも均等ではないため、部分的にシワが寄ったり突っ張ったりしてしまい、綺麗に仕上げるのは難しいんです。何度も試行錯誤を繰り返し、納得のいくものが完成するまで1年くらいかかりましたね。
今回のプロジェクトを終えた感想、印傳屋の今後の展望を聞かせてください。
U:印傳屋は伝統工芸の魅力をより多くの人々に伝えることを目指しています。今回の展示は、その第一歩となる重要な機会でした。今後も伝統と現代をつなぐ新たな挑戦を続け、国内外の多くの方々に印伝の魅力を発信していきたいと思います。
赤司竜彦(Tatsuhiko Akashi:MEDICOM TOY CEO)
最後は、BE@RBRICKの生みの親であり、本展のキュレーターを務めた「MEDICOM TOY」代表取締役社長・赤司竜彦のコメント締めくくりたい。それぞれのアーティストへの思いや、展示の背景について語ってくれた。
今回のエキシビジョンの参加クリエーターに、この3組を指名した理由を教えてください。
赤司竜彦(以下、A):MCMさんからこのエキシビジョンのお話があり、「日本を感じさせるアーティスト」をキャスティングしてほしいとオファーを受けました。まず最初に、創業400年以上の歴史を持つ印傳屋さんとのコラボレーションを草案として思いついたんです。次に、京都発祥の伝統技法 “木目込み”をベースにしたアーティストである谷敷さんにもぜひ参加していただきたいなと思いました。その2組が決まった段階で、もう1組は少し違ったタイプの作家の方にお願いしたく、LOEWE(ロエベ)やCHANEL(シャネル)といった錚々たるブランドの帽子を作られている日爪さんにお声掛けしたところ、ご快諾いただきました。
実際に出来上がった作品をご覧になった感想を聞かせてください。
A:私の想像を遥かに超えて、本当に面白いものができたと思います。それぞれのアーティストとどんな作品にするか、どんな展示空間で作品を見せるかといったやり取りを繰り返し、何ヶ月もかけて準備をしてきました。ですから、皆さんとは一緒に何かを作っただけでなく、お互いの絆がより深まったと感じています。
この展示がFRIEZE SEOULという国際的なアートフェアの一環として行われた点も重要だと思います。MEDICOM TOYさんとしては、今後もアート界へのコミットメントを継続していくのでしょうか?
A:今回MCMさんのおかげで非常にアーティスティックな取り組みを実現することができ、私自身とても楽しめました。ありがたいことに、現在もさまざまな方面からオファーをいただいているので、またこのような機会があればやってみたいですね。
MCM HAUS
住所:ソウル特別市 江南区 清潭洞 狎鴎亭路 412
営業時間:11:00-20:00
TEL:+82-2-540-1404
“BE@RBRICK in MCM Wonderland”の会期中に会場で販売されたスペシャルなカプセルコレクションは、現在も〈MCM〉の直営店舗および公式オンラインストア、「MEDICOM TOY」直営店舗とオンラインストアにて入手可能だ。
谷敷謙の『PAUSE-Usa Usa』を水転写プリントで全面に施した100% & 400% BE@RBRICKセット(33,000円)を筆頭に、印傳屋の職人によるハンドメイドの400% BE@RBRICK(46万2,000円)、日本の老舗木製家具メーカー「カリモク家具」製作による特別な木製400% BE@RBRICK(MCMのロゴ入り、22万円)がラインアップ。
その他にも、〈MCM〉仕様のBE@RBRICKのグラフィックをシルクスクリーンでプリントしたTシャツ(20,900円)、〈MCM〉x BE@RBRICK 400% プリントTシャツ(20,900円)、〈MCM〉x BE@RBRICK x 谷敷謙Tシャツ(20,900円)に加え、アクリル製BE@RBRICKチャームの付属したナイロンショルダーバッグ(全3色展開、各41,800円)、レザーストラップ付きのBE@RBRICKチャーム(4,620円)、マグネット式ポップグリップ(3,300円)といった遊び心あるアイテムが揃う。〈MCM〉の革新性とアーティストの化学反応から生まれた特別なコレクションを、ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。(*本文中の商品価格は全て税込)
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ドイツ・ミュンヘン発のラグジュアリーブランド〈MCM(エムシーエム)〉は、韓国のファッションの中心地であるソウル・清潭に位置するフラッグシップスペース『MCM HAUS(エムシーエム ハウス)』にて没入型エキシビション “BE@RBRICK in MCM Wonderland”を、2025年9月に開催した。また、本展のために限定のカプセルコレクションも制作し、会期中に展示会場で販売を実施。このスペシャルなコレクションは、現在〈MCM〉の公式オンラインストアなどで数量限定で販売中だ。
“BE@RBRICK in MCM Wonderland”は、ソウルで行われた国際的な現代アートフェア「FRIEZE SEOUL 2025(フリーズ・ソウル2025)」のオープニングに合わせて開催。「FRIEZE」はロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、ソウルで展開される世界屈指のアートフェアであり、世界中のギャラリーやアーティスト、コレクターが集う国際的な文化イベントとして知られる。1976年に誕生した〈MCM〉は、創設当初から音楽やアート、デザインの世界とのつながりを育んできた。
今回のエキシビションは「MCM JAPAN」社長の金海利が企画し、同ブランドと関係の深い「MEDICOM TOY(メディコム・トイ)」の赤司竜彦がキュレーションを担当。会場では、フランス・パリを拠点に活躍する帽子デザイナーの日爪ノブキ、日本の伝統技法である“木目込み(きめこみ)”を用いた作品で知られるアーティスト・谷敷謙、1582年創業の“印伝(いんでん)”の老舗「印傳屋上原勇七」の3組がBE@RBRICK(ベアブリック)をテーマに制作した作品を展示した。これは〈MCM〉にとって初のBE@RBRICK特化型エキシビションであり、ブランドの文化的イノベーションを象徴する試みといえる。本稿では〈MCM〉が創出した幻想的な空間 “BE@RBRICK in MCM Wonderland”の全貌を、参加アーティストへのインタビューとともに振り返る。
世界的に著名な建築デュオ Neri & Hu(ネリ&フー)の設計した端正な佇まいの『MCM HAUS』の屋上を見上げると、巨大なBE@RBRICKが出現。ショーウィンドウから、日爪ノブキの手掛けたBE@RBRICKのアートピースが来場者を迎える。1Fスペース中央には〈MCM〉とBE@RBRICKがこれまで制作してきたコラボレーションプロダクトが集結。また、本展のための限定カプセルコレクションも店内に並び、アートギャラリーのような空間構成に。一般公開に先駆けて9月2日(火)に実施されたオープニングパーティには、ATEEZのミンギ、xikersのイェチャン、MAMAMOOのムンビョル、タイの女優ナムターン、中国のインフルエンサー・イーモンリンといったセレブリティを含む、700名以上のゲストが来場。ルーフトップでもDJを招聘したアフターパーティが行われ、大きな盛り上がりをみせた。
日爪ノブキ(Nobuki Hizume)
日爪ノブキは、日本を代表する帽子・ヘッドピースデザイナー/帽子職人。世界有数のファッションアトリエで研鑽を積み、2019年に日本人として初めて帽子職人部門におけるフランス国家最優秀職人章(MEILLEUR OUVRIER DE FRANCE)を受賞。2020年春夏シーズンより自身の名を冠したブランド〈HIZUME(ヒヅメ)〉する傍ら、数々のオートクチュールブランドと協業を行っている。本展では、オートクチュールの技法で仕上げた彫刻的なヘッドピースを纏う真っ赤なBE@RBRICKを中心に据えたウィンドウディスプレイを発表し、シルエットとアイデンティティの関係性を問い直す。強烈な存在感を放つこのアートピースについて、日爪氏に話を聞いた。
日爪さんが“BE@RBRICK in MCM Wonderland”に参加した経緯を教えていただけますか?
日爪ノブキ(以下、N):実はこのエキシビジョンへの参加が決まる前から、既にMEDICOM TOYさんとのコラボレーションが進行していたんです。そのための作品を制作しているうちに、赤司さんからFRIEZE SEOULのエキシビジョンのお話をいただきました。
今回の展示作品のコンセプトを教えてください。
N:僕の過去のコレクションピースで『オリンピアレッド』という帽子があるのですが、その帽子をイメージしたBE@RBRICKを作ってほしいという依頼を受けました。僕自身もともとBE@RBRICKには憧れがありましたし、あのデザインはマスプロダクトの完成形だと捉えています。今回のコラボレーションのお話をいただき、自分もBE@RBRICKのような普遍的なプロダクトを作りたいという思いを込めて作品を制作しました。
結果的に一点物のアートピースが出来上がったわけですが、今後はBE@RBRICKのような量産可能なプロダクトを作ってみたいという気持ちはありますか?
N:もちろん、機会があれば挑戦したいですし、近い将来実現する可能性はあるんじゃないかと思っています。今回ご一緒したMCMさんもアイコニックなプロダクトを作られていますよね? あのロゴとレザーの組み合わせは、一目見れば誰もがMCMの製品だとわかります。完成されたプロダクトを生み出した2つのブランドとのコラボレーションは、僕にとって非常に学びの多い機会でした。
谷敷謙(Ken Yashiki)
谷敷謙は、日本の伝統技法を現代美術に融合させ、独自の創造的世界を築いてきたアーティスト。彼は木に溝を彫り、そこへ布をはめ込む人形制作の伝統技法 “木目込み”を長年にわたって追求し、現代的な視点でアートへと昇華した作品を作り続けてきた。日常から収集した古着や繊維、その中に宿る時間の痕跡や人々の記憶を素材とし、過去・現在・未来が交錯する地点を芸術として表現している。本展の3Fスペースでは、彼の代表作のひとつである『PAUSE-Usa Usa』をもとに制作したBE@RBRICKを初披露。また、MCM製品の端切れを用いたロゴサインも発表。色鮮やかな花々に囲まれたスペースは、時空が歪むような不思議な空間を創出していた。
谷敷さんが“BE@RBRICK in MCM Wonderland”に参加した経緯を教えてください。
谷敷謙(以下、K):Goyo Gallery(ゴヨウ ギャラリー)さんのご紹介でMEDICOM TOYの赤司さんとお会いする機会があり、色々なお話をしました。その後、赤司さんが“BE@RBRICK in MCM Wonderland”のキュレーションを担当することになり、MCMさんへ候補のアーティストを数名提案したところ、金社長が僕の『-PAUSE- Usa Usa』という作品を気に入っていただいたようで、参加が決まりました。
展示作品について説明していただけますか?
K:今回は『-PAUSE- Usa Usa』と同じ手法でBE@RBRICKを作りました。オリジナルの『-PAUSE- Usa Usa』は2009年ごろの作品で、僕の娘が0歳から2歳までに着ていた服を使用しているんですが、今回は2~12歳の時期に着ていた服を集めて作りました。
オリジナルと比較すると、今回の方が全体的に色味が明るく感じます。
K:そうなんです。例えば赤ちゃんの着てる服っておくるみだったりするので、ダブルガーゼや柔らかくて肌に優しい生地のものが中心になります。あと赤ちゃん服って総柄のものが多いんですよ。それから大きくなっていくにつれて、綿100パーセントの服や無地のものを着ることが増えるので、娘の成長に合わせて何らかの変化が感じられる作品になっていればなと。
K:僕の中では、ファッションの本質はコミュニケーションだと思っています。もちろん、みんな自分が着たい服を着ればいいとは思いますが、それぞれが「他者からどう見られるか」といったことまで意識して装うことができると、その服を通して社会性が生まれるんじゃないかな。『-PAUSE- Usa Usa』シリーズは個人的なストーリーを反映した作品ですが、この服の総体を見てもらうことで、今を生きる人々と同じ時代の空気を纏ったものだという風に認識していていただけたら、すごく嬉しいですね。
展示空間も華やかですね。これも谷敷さんのアイデアですか?
K:具体的なプランについてはMCMさんとMEDICOM TOYさんに考えていただいたんですが、会場に花を入れてくださいとだけお伝えしたんです。実際に出来上がった空間を見たら、予想以上にたくさんの花に囲まれていて、素敵に仕上げていただいて感謝しています。
他の作家の方の展示をご覧になって、どのように感じましたか?
K:それぞれのフロアにトーンとマナーがあって、非常に考えられた構成になっているなと思いました。僕のフロアは少しファンシーで、ポップで明るい要素を表現しています。一方で、1Fの日爪さんの展示はよりシックで、MCMさんのもの作り、クラフトマンシップにフォーカスした見せ方をされてるなと。5Fの印傳屋さんの展示は、より伝統を重んじた空間になっていると感じました。
印傳屋上原勇七(INDEN-YA Uehara Yushichi)
日本が誇るヘリテージブランド「印傳屋上原勇七」は、鹿革に漆で模様を施す伝統技法 “甲州印伝(こうしゅういんでん)”の技を400年以上にわたり伝承してきた。その繊細な技術と美しい仕上がりは、国内外で高く評価されている。今回のエキシビジョンでは、この伝統技術を用いてBE@RBRICKを再構築。〈MCM〉のモノグラムを漆で表現することで、文化的遺産を現代的なアート作品へ生まれ変わらせ、伝統工芸の新たな可能性を示した。展示のコンセプトについて、「印傳屋上原勇七」専務取締役・上原伊三男、そして作品の制作を担当したアーティストの小泉裕太郎(IVXLCDM®︎ レザークラフトマン)に話を聞いた。
今回の展示空間や作品のコンセプトについて説明していただけますか?
上原伊三男(以下、U):伝統と革新をテーマに空間を構成しました。印傳屋は普段はバッグや革小物を制作していますが、我々の伝統技術をBE@RBRICKに取り入れるのは新しいチャレンジでした。特にBE@RBRICKの形状にあわせて革を張り込む技術は前例がないため、小泉裕太郎さんにご協力をお願いしました。
制作する上でどのような点が大変でしたか?
小泉裕太郎:漆を施した鹿革は伸ばすとロゴが歪んでしまうので、そうならないようにきっちりと張り込む必要があります。また、厚みも均等ではないため、部分的にシワが寄ったり突っ張ったりしてしまい、綺麗に仕上げるのは難しいんです。何度も試行錯誤を繰り返し、納得のいくものが完成するまで1年くらいかかりましたね。
今回のプロジェクトを終えた感想、印傳屋の今後の展望を聞かせてください。
U:印傳屋は伝統工芸の魅力をより多くの人々に伝えることを目指しています。今回の展示は、その第一歩となる重要な機会でした。今後も伝統と現代をつなぐ新たな挑戦を続け、国内外の多くの方々に印伝の魅力を発信していきたいと思います。
赤司竜彦(Tatsuhiko Akashi:MEDICOM TOY CEO)
最後は、BE@RBRICKの生みの親であり、本展のキュレーターを務めた「MEDICOM TOY」代表取締役社長・赤司竜彦のコメント締めくくりたい。それぞれのアーティストへの思いや、展示の背景について語ってくれた。
今回のエキシビジョンの参加クリエーターに、この3組を指名した理由を教えてください。
赤司竜彦(以下、A):MCMさんからこのエキシビジョンのお話があり、「日本を感じさせるアーティスト」をキャスティングしてほしいとオファーを受けました。まず最初に、創業400年以上の歴史を持つ印傳屋さんとのコラボレーションを草案として思いついたんです。次に、京都発祥の伝統技法 “木目込み”をベースにしたアーティストである谷敷さんにもぜひ参加していただきたいなと思いました。その2組が決まった段階で、もう1組は少し違ったタイプの作家の方にお願いしたく、LOEWE(ロエベ)やCHANEL(シャネル)といった錚々たるブランドの帽子を作られている日爪さんにお声掛けしたところ、ご快諾いただきました。
実際に出来上がった作品をご覧になった感想を聞かせてください。
A:私の想像を遥かに超えて、本当に面白いものができたと思います。それぞれのアーティストとどんな作品にするか、どんな展示空間で作品を見せるかといったやり取りを繰り返し、何ヶ月もかけて準備をしてきました。ですから、皆さんとは一緒に何かを作っただけでなく、お互いの絆がより深まったと感じています。
この展示がFRIEZE SEOULという国際的なアートフェアの一環として行われた点も重要だと思います。MEDICOM TOYさんとしては、今後もアート界へのコミットメントを継続していくのでしょうか?
A:今回MCMさんのおかげで非常にアーティスティックな取り組みを実現することができ、私自身とても楽しめました。ありがたいことに、現在もさまざまな方面からオファーをいただいているので、またこのような機会があればやってみたいですね。
MCM HAUS
住所:ソウル特別市 江南区 清潭洞 狎鴎亭路 412
営業時間:11:00-20:00
TEL:+82-2-540-1404
“BE@RBRICK in MCM Wonderland”の会期中に会場で販売されたスペシャルなカプセルコレクションは、現在も〈MCM〉の直営店舗および公式オンラインストア、「MEDICOM TOY」直営店舗とオンラインストアにて入手可能だ。
谷敷謙の『PAUSE-Usa Usa』を水転写プリントで全面に施した100% & 400% BE@RBRICKセット(33,000円)を筆頭に、印傳屋の職人によるハンドメイドの400% BE@RBRICK(46万2,000円)、日本の老舗木製家具メーカー「カリモク家具」製作による特別な木製400% BE@RBRICK(MCMのロゴ入り、22万円)がラインアップ。
その他にも、〈MCM〉仕様のBE@RBRICKのグラフィックをシルクスクリーンでプリントしたTシャツ(20,900円)、〈MCM〉x BE@RBRICK 400% プリントTシャツ(20,900円)、〈MCM〉x BE@RBRICK x 谷敷謙Tシャツ(20,900円)に加え、アクリル製BE@RBRICKチャームの付属したナイロンショルダーバッグ(全3色展開、各41,800円)、レザーストラップ付きのBE@RBRICKチャーム(4,620円)、マグネット式ポップグリップ(3,300円)といった遊び心あるアイテムが揃う。〈MCM〉の革新性とアーティストの化学反応から生まれた特別なコレクションを、ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。(*本文中の商品価格は全て税込)
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