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グレン・マーティンスがエイチアンドエムと編むファッション美学

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ベルギー・ブルージュ出身のデザイナー グレン・マーティンス(Glenn Martens)がスウェーデン発のファッションブランド〈H&M(エイチ・アンド・エム)〉と初コラボレーションを実現。

ブルージュの芸術学校でインテリアデザインを学んでいたグレンは、空間の構成や造形のバランスに魅了されるうちに、“人の身体を包み込む建築”としての服に関心を持つようになった。その後、アントワープ王立美術アカデミーへ進学し、ファッションを「構築」と「表現」の交差点として捉え、独自の視点を磨く。卒業後は〈Jean Paul Gaultier(ジャンポール・ゴルチエ)〉のアトリエでキャリアをスタートさせ、クラシックなクチュールの技術と挑発的な発想が共存する現場で経験を積んだ。その中で、自身の中に“緻密さと自由さ”という二つの軸を確立する。

2013年、フランス発のファッションブランド〈Y/PROJECT(ワイプロジェクト)〉創業者 ヨハン・セルファティ(Yohan Serfaty)の死去を受け、同ブランドのアシスタントだったグレンがクリエイティブ・ディレクターに指名される。左右非対称のシルエットや可変する構造など、“服を常識から解放する”デザインで注目を集め、2016年に「LVMH Prize」のファイナリストにノミネートされたほか、2017年には「ANDAM Fashion Awards」を受賞。アヴァンギャルドと日常性を融合させた新たなモードの象徴となり、世界中のファッションウィークで高い評価を得た。しかし、2024年9月にグレンが同ブランドを退任し、翌年14年の歴史に幕を閉じた。

2020年に〈DIESEL(ディーゼル)〉のクリエイティブ・ディレクターに抜擢され、2025年には〈Maison Margiela(メゾン・マルジェラ) 〉の新クリエイティブ・ディレクターを兼任。ストリートとラグジュアリー、実験と伝統という2つの極を横断するデザイナーとしての立場を確立した。ベルギー的な揶揄とユーモアを忘れず、時に風刺的で、時に詩的なコレクションを発表し続けるグレンのアプローチは、“再構築”という言葉の意味を超えて、ファッションを“進化する対話”へと変えている。

2004年から続く〈H&M〉のデザイナーコラボレーションに、異色の経歴をもつグレンが抜擢されたのは、ごく自然な成り行きだ。

本コレクションは、〈H&M〉の膨大なアーカイブを綿密に掘り下げられ、ワードローブの定番を再発見し、再解釈する試みとなっている。人気の定番アイテムであるTシャツやチェックシャツ、ボンバージャケット、ジーンズなどを選び出し、トロンプルイユ(だまし絵)など、ワイヤーやフォイルを仕込んだ自由に変形できるデザインを構築した。着る人によって形が変わるシルエットが特徴的だ。構築美と立体的なグレンのシグネチャーが美しいシンフォニーを奏で、よりディテールが際立つコレクションとなった。

イギリスを代表する俳優 ジョアンナ・ラムリー(Joanna Lumley)やリチャード・E・グラント(Richard E. Grant)をはじめ、豪華キャストを採用したキャンペーンのビジュアルは、「ユーモア」「クラシシズム」そして「ブリティッシュネス(英国らしさ)」をキーワードに、「ファミリーポートレート」のコンセプトで撮影された。

今回『Hypebeast Japan』は、グレン・マーティンスと〈H&M〉クリエイティブアドバイザーであるアン・ソフィー・ヨハンソン(Ann-Sofie Johansson)に取材を行い、2人の声を『Hypebeast Japan』読者に届ける。


Hypebeast Japan:グレン・マーティンスとH&Mの出会い、そして今回のプロジェクトが動き出したきっかけを教えてください。

Ann-Sofie Johansson(以下、A):グレンが生み出していたY/PROJECTを見ていたので、彼と一緒に何かをつくりたかったんです。彼の生み出す世界には独自の感性があり、とても特別でユニーク。そして、新鮮で惹きつけられるものがありました。だからこそ、私たちは“次に声をかけるならグレン・マーティンスだ”と考えていて、コンタクトを取りました。そこからこのプロジェクトが動き出したんです。最初のミーティングから2年ほどが経過し、長い時間をかけて進めてきたプロジェクトなので、ようやくお披露目できて本当にうれしく思っています。

2年の歳月をかけて実現したと伺いましたが、その期間の中で、特に印象に残っているターニングポイントやブレイクスルーはありますか?

Glenn Martens(以下、G):僕にとって1番の転機は、2024年9月にY/PROJECTを離れ、その後にブランドが閉鎖したことです。この出来事は本コレクションの方向性を大きく変えるきっかけになったと言えます。H&Mと話を始めたときは、まだY/PROJECTに在籍していたので、ブランドのヘリテージにあまり踏み込みすぎないようにしていました。ブランドが閉鎖したとき、これまで築いてきたデザインにリスペクトを込めるような形で“Y/PROJECTのスパイスを引き継ぐべき”と感じたんです。約12年間にわたって生み出してきたアイデアやディテールを、今回のコレクションで新たなバリエーションとして蘇らせることができたのは特別なことです。

H&Mの膨大な過去の資料の中から、どのように“アーキタイプ(原型)”を選び出したのでしょうか?

G:僕はいつも、人々が日常で本当に着ている服に惹かれます。そうしたアイテムこそ、多くのストーリーを語ってくれるからです。本コレクションでは、ドレスやセーター、トレンチコート、デニムまで、幅広いカテゴリーを網羅しました。ブランドの歴史の中で最も愛され、支持されてきたベストセラーアイテムであるTシャツやチェックシャツ、トレンチコート、ジーンズといった“ワードローブの原型”を意識してH&Mとのリサーチしセレクトをしたんです。人々がそれらをどう着るか、どんな文脈でスタイリングするか想像しながらデザインを展開していきました。それぞれの服が個性を持ち、時にはフォーマルに、時には自由奔放に振る舞う。毎日変化し、成長し、違う表情を見せてくれるのが特徴的です。僕自身のデザイン哲学と、H&Mというブランドの歴史、その両方を映し出すコレクションを目指しました。

H&Mのアーカイブアイテムに触れる中で、あらためて気づいたことや再発見はありましたか?

G:正直に言うと、ベストセラーという概念そのものは、少し退屈ですよね。どんなブランドでも人気の定番は似ていて、それがDIESELやH&Mであっても、グレーのパーカーや白いTシャツ、ブルーのデニム、トレンチコート──どれも美しいけれど、ある意味で“グローバル・ワードローブ”として共通していると思います。とはいえ、それを出発点にできたのは面白かったです。僕はよくデザインの中に“ひねり”や“トリック”を加えることが多いので、こうしたクラシックなアイテムからスタートし、それをどう再構築するかというプロセスは新鮮でした。H&Mのアーカイブを見せてもらったときは、完璧に計算されたベースアイテムが揃っていたので、そこに少し僕のスパイスを入れて、思い切り“再構築”しました。

Y/PROJECT時代のスタイルや実験的なアプローチも今回のコレクションに反映されていると思いますが、どのようにご自身のDNAを再構築しましたか?

G:僕のデザインの原点は、Y/PROJECTでの経験にあります。この経験は、僕自身の美学を築き上げた時間です。2025年1月に閉鎖したY/PROJECTのエネルギーをこのまま眠らせておくのではなく、H&Mとのコラボレーションで新しい命を吹き込みたいと思いました。ワイヤーやメタル、しわ加工などといった僕の代名詞的なディテールを、今までの限られた層だけでなく、より多くの人たち──特に若い世代にも届けられるのを楽しみにしています。

本コレクションを一言で表すとしたら?

A:とても難しい質問ですね(笑)。“Glenness(グレンのスタイル)”という言葉も浮かんだけれど、もっと“ Experimental(実験的)”に近いニュアンスかもしれません。だけどやっぱり、“Witty(知的で洗練されたユーモアや機転の利いたセンス)”の方があっているかな。

G:ファッションレビューで“Experimental”と評価されたら「う〜ん」ってなっちゃうかも(笑)。僕は、一言で表すと“Explosive(創造性・エネルギーが一気に溢れ出すような強さ)”かな。でも確かに、“Witty”もいいね。

複雑な構造やディテールを手の届く価格帯に落とし込むのは、決して簡単なことではなかったと思います。今回のプロジェクトでは、どのような工夫や挑戦があったのでしょうか?

A:フォイル加工やグレンのシグネチャーでもある特殊なウォッシュ加工を再現するのは私たちにとって大きな課題でした。特に“汚れ加工”や“色落ち加工”といったニュアンスのある加工は、思い描いた通りの風合いを出すのが難しく、何度もサンプルを作り直したんです。試行錯誤を重ねて、ようやく納得のいく仕上がりにたどり着きました。H&Mのチームが一体となり、このプロジェクトを通じて新しい学びと成長を得ることができたと思います。

シグネチャーである変形するアイテムや質感、ダメージ加工など、こうした“壊す美学”はどこから生まれたのか教えてください。

G:僕のバックグラウンドは建築、それもインテリアデザインなんです。大学に入ってから“建築”を通して、自分の中にクリエイティブな部分が芽生え始めました。そこが、ものづくりの原点だと思っています。その後、アントワープ王立美術アカデミーに進学してからは、服を“衣服”としてではなく、身体を包む建築物のように捉えるようになりました。“身体のまわりにどう構築物を作るか”という視点で服を考えていたんです。最初の頃は、少しコンセプチュアルに走りすぎていたと思います(笑)。

けれど、時間をかけて素材の強さや流動性──つまり“布が持つ生命力”を理解していきました。構築や実験という考え方は、僕のクリエイティビティの根底に今もずっとあります。新しい構造を見つけて、服の動き方や存在の仕方を変えていくこと、それが僕にとっての“壊す美学”なんです。

ベルギー出身としてのカルチャー的背景はデザインにどのような影響を与えていますか?

G:ベルギーは決して華やかな国ではありません。空はいつも曇りがちで、風景はグレー。スウェーデンのような豊かな自然も、イタリアのような壮麗な美術や建築もない。もちろん美しい場所もあるけれど、全体的には少し陰鬱で静かな国なんです。だからこそ、その中で生きるベルギー人は、揶揄やブラックジョークで日常を楽しむ術を身につけてきました。おそらく寒くて灰色の世界で育った人々は、自然と笑いに救いを求めるのだと思います。同時に、ユーモアは生きるためのクリエイティブな方法であり、ファッションをもっと自由にするためのエネルギーです。

たとえば、Maison Margielaでの仕事には少しシュルレアリスティックな要素があり、DIESELでのウィットの効いたアプローチなどにも通じています。僕にとってファッションは、とても美しく、そして真剣に向き合うべきクラフトであり、“楽しむためのもの”でもあるんです。この感覚は、きっとベルギーという環境で育ったことが大きいと思います。

学生時代、限られた予算の中でヴィンテージショップやハイストリートブランドを巡っていたと伺いましたがアントワープで通っていた古着ショップを教えてください。

G:アントワープ王立美術アカデミーの近くにあった『Episode』。ほかは、アントワープの北のエリアにある古着ショップに行ってました。いわゆるクールなヴィンテージショップというよりは、セレクトされていないリアルな昔のスーツやオーバーサイズの古着のジャケットなどが山のように並んでいるようなお店です。

最後に、あなたにとって『ファッション』とはどんな意味を持っていますか?

G:僕にとってファッションとは、“エンパワーメント(力を与えること)”です。服を通して人が強くなれたり、自分らしくいられたり、幸せを感じられる──そのためのプラットフォームこそがファッションだと思っています。

たとえば、H&Mのようにアクセスしやすいブランドもあれば、Maison Margielaのようにラグジュアリーで限定的な世界もある。でも根底にある目的は同じで、服は“着る人を幸せにすること”なんです。Maison Margielaのクチュール・コレクションでは、実際にその服を着られる人は世界で50人程しかいません。そのショーを見て、ほんの10分でも夢を見て、想像して、クリエイティビティを感じてくれた人がいるなら、それもまた“幸せを与えること”なんです。どんな価格帯やフォーマットであっても、服は人を元気づけ、自由にし、“自分はこうありたい”と思わせてくれる。このコレクションもそうです。シルエットを変えたり、シワを寄せたり、着る人自身が手を加えながら、自分の気分やキャラクターを表現できる。それこそがファッションの喜びであり、僕にとってのファッションの本質──幸せと自由、そしてエンパワーメントのためのアートだと信じています。

A:私にとってファッションは、“自己表現”そのものです。自分が誰でありたいのか、どう見られたいのか──そのすべてを言葉の代わりに伝える手段だと思っています。

ファッションは、ひとつの“言語”なんです。服を通して自分を語り、人とつながり、世界とコミュニケーションを取るためのもの。だからこそ、服には常に自由とストーリーがあると思います。


本コレクションはメンズ、ユニセックス、ウィメンズ、アクセサリーのラインアップで構成され、10月30日(木)より、『H&M渋谷』『新宿店』および公式オンラインストアにて限定発売される。

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ベルギー・ブルージュ出身のデザイナー グレン・マーティンス(Glenn Martens)がスウェーデン発のファッションブランド〈H&M(エイチ・アンド・エム)〉と初コラボレーションを実現。

ブルージュの芸術学校でインテリアデザインを学んでいたグレンは、空間の構成や造形のバランスに魅了されるうちに、“人の身体を包み込む建築”としての服に関心を持つようになった。その後、アントワープ王立美術アカデミーへ進学し、ファッションを「構築」と「表現」の交差点として捉え、独自の視点を磨く。卒業後は〈Jean Paul Gaultier(ジャンポール・ゴルチエ)〉のアトリエでキャリアをスタートさせ、クラシックなクチュールの技術と挑発的な発想が共存する現場で経験を積んだ。その中で、自身の中に“緻密さと自由さ”という二つの軸を確立する。

2013年、フランス発のファッションブランド〈Y/PROJECT(ワイプロジェクト)〉創業者 ヨハン・セルファティ(Yohan Serfaty)の死去を受け、同ブランドのアシスタントだったグレンがクリエイティブ・ディレクターに指名される。左右非対称のシルエットや可変する構造など、“服を常識から解放する”デザインで注目を集め、2016年に「LVMH Prize」のファイナリストにノミネートされたほか、2017年には「ANDAM Fashion Awards」を受賞。アヴァンギャルドと日常性を融合させた新たなモードの象徴となり、世界中のファッションウィークで高い評価を得た。しかし、2024年9月にグレンが同ブランドを退任し、翌年14年の歴史に幕を閉じた。

2020年に〈DIESEL(ディーゼル)〉のクリエイティブ・ディレクターに抜擢され、2025年には〈Maison Margiela(メゾン・マルジェラ) 〉の新クリエイティブ・ディレクターを兼任。ストリートとラグジュアリー、実験と伝統という2つの極を横断するデザイナーとしての立場を確立した。ベルギー的な揶揄とユーモアを忘れず、時に風刺的で、時に詩的なコレクションを発表し続けるグレンのアプローチは、“再構築”という言葉の意味を超えて、ファッションを“進化する対話”へと変えている。

2004年から続く〈H&M〉のデザイナーコラボレーションに、異色の経歴をもつグレンが抜擢されたのは、ごく自然な成り行きだ。

本コレクションは、〈H&M〉の膨大なアーカイブを綿密に掘り下げられ、ワードローブの定番を再発見し、再解釈する試みとなっている。人気の定番アイテムであるTシャツやチェックシャツ、ボンバージャケット、ジーンズなどを選び出し、トロンプルイユ(だまし絵)など、ワイヤーやフォイルを仕込んだ自由に変形できるデザインを構築した。着る人によって形が変わるシルエットが特徴的だ。構築美と立体的なグレンのシグネチャーが美しいシンフォニーを奏で、よりディテールが際立つコレクションとなった。

イギリスを代表する俳優 ジョアンナ・ラムリー(Joanna Lumley)やリチャード・E・グラント(Richard E. Grant)をはじめ、豪華キャストを採用したキャンペーンのビジュアルは、「ユーモア」「クラシシズム」そして「ブリティッシュネス(英国らしさ)」をキーワードに、「ファミリーポートレート」のコンセプトで撮影された。

今回『Hypebeast Japan』は、グレン・マーティンスと〈H&M〉クリエイティブアドバイザーであるアン・ソフィー・ヨハンソン(Ann-Sofie Johansson)に取材を行い、2人の声を『Hypebeast Japan』読者に届ける。


Hypebeast Japan:グレン・マーティンスとH&Mの出会い、そして今回のプロジェクトが動き出したきっかけを教えてください。

Ann-Sofie Johansson(以下、A):グレンが生み出していたY/PROJECTを見ていたので、彼と一緒に何かをつくりたかったんです。彼の生み出す世界には独自の感性があり、とても特別でユニーク。そして、新鮮で惹きつけられるものがありました。だからこそ、私たちは“次に声をかけるならグレン・マーティンスだ”と考えていて、コンタクトを取りました。そこからこのプロジェクトが動き出したんです。最初のミーティングから2年ほどが経過し、長い時間をかけて進めてきたプロジェクトなので、ようやくお披露目できて本当にうれしく思っています。

2年の歳月をかけて実現したと伺いましたが、その期間の中で、特に印象に残っているターニングポイントやブレイクスルーはありますか?

Glenn Martens(以下、G):僕にとって1番の転機は、2024年9月にY/PROJECTを離れ、その後にブランドが閉鎖したことです。この出来事は本コレクションの方向性を大きく変えるきっかけになったと言えます。H&Mと話を始めたときは、まだY/PROJECTに在籍していたので、ブランドのヘリテージにあまり踏み込みすぎないようにしていました。ブランドが閉鎖したとき、これまで築いてきたデザインにリスペクトを込めるような形で“Y/PROJECTのスパイスを引き継ぐべき”と感じたんです。約12年間にわたって生み出してきたアイデアやディテールを、今回のコレクションで新たなバリエーションとして蘇らせることができたのは特別なことです。

H&Mの膨大な過去の資料の中から、どのように“アーキタイプ(原型)”を選び出したのでしょうか?

G:僕はいつも、人々が日常で本当に着ている服に惹かれます。そうしたアイテムこそ、多くのストーリーを語ってくれるからです。本コレクションでは、ドレスやセーター、トレンチコート、デニムまで、幅広いカテゴリーを網羅しました。ブランドの歴史の中で最も愛され、支持されてきたベストセラーアイテムであるTシャツやチェックシャツ、トレンチコート、ジーンズといった“ワードローブの原型”を意識してH&Mとのリサーチしセレクトをしたんです。人々がそれらをどう着るか、どんな文脈でスタイリングするか想像しながらデザインを展開していきました。それぞれの服が個性を持ち、時にはフォーマルに、時には自由奔放に振る舞う。毎日変化し、成長し、違う表情を見せてくれるのが特徴的です。僕自身のデザイン哲学と、H&Mというブランドの歴史、その両方を映し出すコレクションを目指しました。

H&Mのアーカイブアイテムに触れる中で、あらためて気づいたことや再発見はありましたか?

G:正直に言うと、ベストセラーという概念そのものは、少し退屈ですよね。どんなブランドでも人気の定番は似ていて、それがDIESELやH&Mであっても、グレーのパーカーや白いTシャツ、ブルーのデニム、トレンチコート──どれも美しいけれど、ある意味で“グローバル・ワードローブ”として共通していると思います。とはいえ、それを出発点にできたのは面白かったです。僕はよくデザインの中に“ひねり”や“トリック”を加えることが多いので、こうしたクラシックなアイテムからスタートし、それをどう再構築するかというプロセスは新鮮でした。H&Mのアーカイブを見せてもらったときは、完璧に計算されたベースアイテムが揃っていたので、そこに少し僕のスパイスを入れて、思い切り“再構築”しました。

Y/PROJECT時代のスタイルや実験的なアプローチも今回のコレクションに反映されていると思いますが、どのようにご自身のDNAを再構築しましたか?

G:僕のデザインの原点は、Y/PROJECTでの経験にあります。この経験は、僕自身の美学を築き上げた時間です。2025年1月に閉鎖したY/PROJECTのエネルギーをこのまま眠らせておくのではなく、H&Mとのコラボレーションで新しい命を吹き込みたいと思いました。ワイヤーやメタル、しわ加工などといった僕の代名詞的なディテールを、今までの限られた層だけでなく、より多くの人たち──特に若い世代にも届けられるのを楽しみにしています。

本コレクションを一言で表すとしたら?

A:とても難しい質問ですね(笑)。“Glenness(グレンのスタイル)”という言葉も浮かんだけれど、もっと“ Experimental(実験的)”に近いニュアンスかもしれません。だけどやっぱり、“Witty(知的で洗練されたユーモアや機転の利いたセンス)”の方があっているかな。

G:ファッションレビューで“Experimental”と評価されたら「う〜ん」ってなっちゃうかも(笑)。僕は、一言で表すと“Explosive(創造性・エネルギーが一気に溢れ出すような強さ)”かな。でも確かに、“Witty”もいいね。

複雑な構造やディテールを手の届く価格帯に落とし込むのは、決して簡単なことではなかったと思います。今回のプロジェクトでは、どのような工夫や挑戦があったのでしょうか?

A:フォイル加工やグレンのシグネチャーでもある特殊なウォッシュ加工を再現するのは私たちにとって大きな課題でした。特に“汚れ加工”や“色落ち加工”といったニュアンスのある加工は、思い描いた通りの風合いを出すのが難しく、何度もサンプルを作り直したんです。試行錯誤を重ねて、ようやく納得のいく仕上がりにたどり着きました。H&Mのチームが一体となり、このプロジェクトを通じて新しい学びと成長を得ることができたと思います。

シグネチャーである変形するアイテムや質感、ダメージ加工など、こうした“壊す美学”はどこから生まれたのか教えてください。

G:僕のバックグラウンドは建築、それもインテリアデザインなんです。大学に入ってから“建築”を通して、自分の中にクリエイティブな部分が芽生え始めました。そこが、ものづくりの原点だと思っています。その後、アントワープ王立美術アカデミーに進学してからは、服を“衣服”としてではなく、身体を包む建築物のように捉えるようになりました。“身体のまわりにどう構築物を作るか”という視点で服を考えていたんです。最初の頃は、少しコンセプチュアルに走りすぎていたと思います(笑)。

けれど、時間をかけて素材の強さや流動性──つまり“布が持つ生命力”を理解していきました。構築や実験という考え方は、僕のクリエイティビティの根底に今もずっとあります。新しい構造を見つけて、服の動き方や存在の仕方を変えていくこと、それが僕にとっての“壊す美学”なんです。

ベルギー出身としてのカルチャー的背景はデザインにどのような影響を与えていますか?

G:ベルギーは決して華やかな国ではありません。空はいつも曇りがちで、風景はグレー。スウェーデンのような豊かな自然も、イタリアのような壮麗な美術や建築もない。もちろん美しい場所もあるけれど、全体的には少し陰鬱で静かな国なんです。だからこそ、その中で生きるベルギー人は、揶揄やブラックジョークで日常を楽しむ術を身につけてきました。おそらく寒くて灰色の世界で育った人々は、自然と笑いに救いを求めるのだと思います。同時に、ユーモアは生きるためのクリエイティブな方法であり、ファッションをもっと自由にするためのエネルギーです。

たとえば、Maison Margielaでの仕事には少しシュルレアリスティックな要素があり、DIESELでのウィットの効いたアプローチなどにも通じています。僕にとってファッションは、とても美しく、そして真剣に向き合うべきクラフトであり、“楽しむためのもの”でもあるんです。この感覚は、きっとベルギーという環境で育ったことが大きいと思います。

学生時代、限られた予算の中でヴィンテージショップやハイストリートブランドを巡っていたと伺いましたがアントワープで通っていた古着ショップを教えてください。

G:アントワープ王立美術アカデミーの近くにあった『Episode』。ほかは、アントワープの北のエリアにある古着ショップに行ってました。いわゆるクールなヴィンテージショップというよりは、セレクトされていないリアルな昔のスーツやオーバーサイズの古着のジャケットなどが山のように並んでいるようなお店です。

最後に、あなたにとって『ファッション』とはどんな意味を持っていますか?

G:僕にとってファッションとは、“エンパワーメント(力を与えること)”です。服を通して人が強くなれたり、自分らしくいられたり、幸せを感じられる──そのためのプラットフォームこそがファッションだと思っています。

たとえば、H&Mのようにアクセスしやすいブランドもあれば、Maison Margielaのようにラグジュアリーで限定的な世界もある。でも根底にある目的は同じで、服は“着る人を幸せにすること”なんです。Maison Margielaのクチュール・コレクションでは、実際にその服を着られる人は世界で50人程しかいません。そのショーを見て、ほんの10分でも夢を見て、想像して、クリエイティビティを感じてくれた人がいるなら、それもまた“幸せを与えること”なんです。どんな価格帯やフォーマットであっても、服は人を元気づけ、自由にし、“自分はこうありたい”と思わせてくれる。このコレクションもそうです。シルエットを変えたり、シワを寄せたり、着る人自身が手を加えながら、自分の気分やキャラクターを表現できる。それこそがファッションの喜びであり、僕にとってのファッションの本質──幸せと自由、そしてエンパワーメントのためのアートだと信じています。

A:私にとってファッションは、“自己表現”そのものです。自分が誰でありたいのか、どう見られたいのか──そのすべてを言葉の代わりに伝える手段だと思っています。

ファッションは、ひとつの“言語”なんです。服を通して自分を語り、人とつながり、世界とコミュニケーションを取るためのもの。だからこそ、服には常に自由とストーリーがあると思います。


本コレクションはメンズ、ユニセックス、ウィメンズ、アクセサリーのラインアップで構成され、10月30日(木)より、『H&M渋谷』『新宿店』および公式オンラインストアにて限定発売される。

and integrate them seamlessly into the new content without adding new tags. Ensure the new content is fashion-related, written entirely in Japanese, and approximately 1500 words. Conclude with a “結論” section and a well-formatted “よくある質問” section. Avoid including an introduction or a note explaining the process.

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