「フィジカル形式限定」東コレの新方針
今シーズンのコンセプトは「突然、未来は生まれない」。キーヴィジュアルは、ファッションが生み出される原点であり、デザイナーの純粋なクリエイションが最初に表出される“デザインスケッチ”をモチーフに制作し、クリエイターやファッションウィークが積み重ねた歴史へのリスペクトと未来への希望を表現したという。
JFWOは、今回から東コレ公式スケジュールへの参加条件を「フィジカルショーを開催するブランド」に限定。JFWOの古茂田博事務局長は「世界的にフィジカル発表が主流へと戻っていること、また、デジタルでの表現が溢れる時代だからこそ、より一層フィジカルを尊重すべきだと考えた」とし、この姿勢は今後も継続していく予定だと説明した。全37ブランドが参加した先シーズンと比較すると、参加ブランド数は14ブランド減、そのうち単独でフィジカルショーを開催するブランドで比較すると12ブランド減と大幅に縮小した開催となる。
ブランドにとって金銭的にも負担の大きいフィジカル形式を東コレ公式スケジュールへの参加条件として定めることは、若手ブランドの機会損失に繋がるのではないかという会場からの指摘に対して古茂田事務局長は、規模を拡大している関連イベントでフォローしていく姿勢をアピール。その一例として、フランス・パリ発の国際的な合同展示会「トラノイ(TRANOÏ)」とのパートナーシップのもと今季も開催する第3回「TRANOÏ TOKYO」は、会場を先シーズンのベルサール渋谷ファーストから国立代々木競技場 第一体育館に移し、規模拡大を図る。出展ブランドは約250で、国外からもヨーロッパやアジア、中東、南米など約30ヶ国からの参加が決定。ユニバーサルミュージックが立ち上げた「ユーミュージック(umusic)」や、弓削匠がデザイナーを務める「アダルト オリエンテッド ローブス(Adult Oriented Robes)」、パリ・マレ地区のアートブックショップ「オーエフアール・パリ(Ofr. Paris)」も参加し、ファッションに限らない音楽やアートを含むさまざまなカルチャーを横断したコンテンツを提供する。
目玉は7年半ぶりショー開催のツモリ チサト、バイアールはフェティコに
初日のトップバッターは、2022年にJFWOが発足したサポートプログラム「JFW NEXT BRAND AWARD 2026」グランプリを受賞し、今回が東コレ初参加となる木村由佳の「ムッシャン(mukcyen)」。メディア向けに開催された2026年春夏東コレの説明会には、同アワードの受賞者と審査員も登壇した。グランプリを受賞した木村は「初めてのランウェイ形式での発表に向けては、ブランドとしての軸を大切にしながら、これからも新しい視点を提案できるよう、前向きに取り組んで参ります」とコメント。同アワードの審査員を務めた「無印良品」のクリエイティブディレクターを務める滝沢直己は、「デザイナーの熱意や想い、デザイナー像そのものが伝わる服作りをしている」と同ブランドを評価した。ムッシャンは同アワードの副賞として、パリで開催されるファッション素材見本市「プルミエール・ビジョン」に招聘され、作品を展示する。また、同アワードの特別賞は、デビューから2シーズン目となる山本淳による「ジュンワイ(Jun.y)」が受賞。開催直前の8月29日に関係者向けに実施される、東コレ2026年春夏の開幕とJFWOの20周年を記念したセレモニーイベントで展示を行う。ムッシャンと同様に初参加となる植田みずきによる「ナゴンスタンス(någonstans)」と山近和也の「アンセルム(ANCELLM)」も初日に、津吉学による「ファンダメンタル(FDMTL)」は9月4日、折見健太による「オリミ(ORIMI)」は最終日のトリにコレクションを発表する。