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テキスタイルアーティスト、池部ヒロト - 衣服の未来をデザイナーと生産者と共に築く

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テキスタイルアーティスト/デザイナー 池部ヒロト

池部ヒロトはテキスタイルを素材に、独自のリサーチと実験的なアプローチで作品を制作するテキスタイルアーティスト/デザイナーです。2024年に多摩美術大学生産学科テキスタイルデザイン専攻を卒業し、日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」で、若手クリエイター支援プログラム「UNDER 30」に選出されました。

アートワークに込められた意味

伝統的な素材と先進的なプロセスを融合してつくりあげた実験的な作品にはどのような意味がこめられているのだろうか。今回、池部のアトリエを訪れ、その思いに迫った。

池部ヒロト – テキスタイルアーティスト

多摩美術大学生産学科テキスタイルデザイン専攻卒

「布」という存在を民族の内包する文化、習慣、信仰などの記憶が蓄積された“やわらかな化石”と捉え、フィールドワークを基にその土地に存在する素材・技法の記憶や文脈を読み解き、独自の実験的なアプローチによるテキスタイルデザイン、アートワークの制作を行っています。

廃棄されるものを原料に廃棄の少ない生産プロセスでつくる新しい衣服

QUI編集部: 今回の「DESIGNART TOKYO 2024」では《COCOON ANATOMY / 繭を解く》という作品を展示されるそうですね。どのような作品なのでしょうか?

池部ヒロト: これは絹の中でも本来は衣服をつくる工程で廃棄されてしまう「きびそ」という部分をつかった新しい作品です。その「きびそ」を原料にしたパーツを“モジュール化して組み上げる”というプロセスで制作しています。

QUI: 「きびそ」とは具体的にどんなものなんですか?

池部: 絹布をつくる際に生じるものです。絹の生地は蚕がつくった繭から糸をひいて、それを織物にしていくのですが、繭の一番外側の部分が「きびそ」という素材です。

QUI: 繭を全て使えるわけではないんですね。なぜ廃棄されてしまうんですか?

池部: 繭の成分はタンパク質構造が人間の皮膚とすごく近いんです。一番外側は酸素や二酸化炭素などに多く触れることで乾燥し“ささくれ”のようになってしまいます。なのでその部分は糸にせず、普通は廃棄されてしまうんです。

QUI: 繭の外側の部分は廃棄されるなんて、全く知りませんでした。衣服は毎日身につけるものなのに、それがどうやってつくられて手元まで届くのかは普段あまり意識していないところですね。

池部: 衣服の生産工程やサプライチェーンはどんどん複雑化していて、養蚕の文化も化学繊維の出現や職人の減少で徐々に衰退してきています。それに加え人件費などが高騰する中、繭の値段は昭和の時代から変わらないため、養蚕農家の方々の負担が大きくなっているという課題もあります。なので間の工程を減らしてデザイナーと養蚕農家がダイレクトに繋がれたら、もっとシンプルなプロセスで養蚕自体にフォーカスしたものづくりができるんじゃないかと思ったのが制作のきっかけです。

ちょうど昨日も養蚕農家さんのところで写真を撮らせていただきました。

伝統的な素材と先進的な加工プロセスとの出会い

QUI: 池部さんは今年に多摩美術大学生産学科テキスタイルデザイン専攻を卒業されたそうですね。テキスタイルに興味を持ったきっかけはなんでしょうか?

池部: 祖母が伝統舞踊をやっており、幼い頃から祖母の家で多くの着物を見ていました。その中に奄美大島で作られた着物で絹糸を泥で何回も染め、絣(かすり)で模様をつくった「大島紬」という織物があったんです。それを初めて見た時に「“虫が吐く糸”を“泥”で染めて、こんなに美しいものができるんだ!」「布って面白いな」と思ったことがきっかけですね。

QUI: テキスタイルのなかでも繭や和紙といった伝統的な素材を多く使われているように感じたのですが、そういった素材もそうした原体験と繋がっているのでしょうか?

池部: そうですね。それが一番大きいと思います。あとは、こういった興味から様々な工房にうかがい話を聞くうちに、例えば繭は民族信仰に深い関わりがあることも知りました。布は太古からあるもので考古学的にも興味深い面がある一方で、現代ではファッションやアートに使われたりと自分たちの身近な存在でもあります。あらゆる領域で活躍できる多面性のある媒体なのが面白いと思い、そこから深掘りしていきました。

伝統とテクノロジー、日本と西洋、それぞれの違いに気づき融合させた作品

QUI: 池部さんは今年に多摩美術大学生産学科テキスタイルデザイン専攻を卒業されたそうですね。テキスタイルに興味を持ったきっかけはなんでしょうか?

池部: 祖母が伝統舞踊をやっており、幼い頃から祖母の家で多くの着物を見ていました。その中に奄美大島で作られた着物で絹糸を泥で何回も染め、絣(かすり)で模様をつくった「大島紬」という織物があったんです。それを初めて見た時に「“虫が吐く糸”を“泥”で染めて、こんなに美しいものができるんだ!」「布って面白いな」と思ったことがきっかけですね。

QUI: テキスタイルのなかでも繭や和紙といった伝統的な素材を多く使われているように感じたのですが、そういった素材もそうした原体験と繋がっているのでしょうか?

池部: そうですね。それが一番大きいと思います。あとは、こういった興味から様々な工房にうかがい話を聞くうちに、例えば繭は民族信仰に深い関わりがあることも知りました。布は太古からあるもので考古学的にも興味深い面がある一方で、現代ではファッションやアートに使われたりと自分たちの身近な存在でもあります。あらゆる領域で活躍できる多面性のある媒体なのが面白いと思い、そこから深掘りしていきました。

廃棄されるものを原料に廃棄の少な

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