1 美学の殿堂：西洋美術館と植民地主義の解体

美学の殿堂：西洋美術館と植民地主義の解体

西洋美術館の暴挙

美術館に足を踏み入れると、神聖で静謐な空間に足を踏み入れたときのような気持ちになることがよくあります。この神聖な雰囲気は、アートワークや工芸品自体から純粋かつ自然に発せられると想像されるかもしれませんが、もちろん、すべての美術館やギャラリーは丁寧にキュレーションされ、構築された体験です。

絶対的混乱のプログラム：美術館の植民地主義の解体

最新の著書である絶対的混乱のプログラム：美術館の植民地主義(プルート出版社刊)、高級フェロー研究者で活動家のフランソアーズ・ヴェルジェが、西洋の美術館が何世紀にもわたって、普遍性、保存、適切さの看板をつけて自らを包み隠してきたことを詳述しています – 刑罰や人間の遺体によって生じた豊かさ、奴隷貿易の産物、採取、搾取、没収の果実。

補償と返還の議論

この数年間、補償と返還に関する議論が美術館を巡って活発になっています。多くの人々が、ルーブル美術館、大英博物館、メトロポリタン美術館などの西洋の機関がグローバルサウスから盗まれた工芸品やアートによって力をつけてきたことを理解しています。過去数十年間、各国は略奪されたオブジェクトを取り戻すよう要請してきました- フランスの美術館には9万個のアフリカのオブジェクトが取り残されています。ヨーロッパは、ゆっくりとためらいながらも、いくつかのオブジェクトを元の発祥地に返すことで緊張を和らげ始めました。

絶対的混乱のプログラムについて

補償の問題は氷山の一角であると位置付ける絶対的混乱のプログラム。フランソアーズ・ヴェルジェは、それを必要な始まり、越えなければならない閾値と捉えています。しかし、真の戦い、植民地主義の解体の真の行為は、西洋の美術館の真実を暴くことにあり、その顔を鏡で照らし、その犯罪を認めさせ、その礼儀正しさ-普遍性の仮面-を引き裂くことにあります。ヴェルジェは返還の問題を一旦置いて、絶対的混乱のプログラムを実施する大きな必要性を掲げ、その言葉を「空の美学」や「隠喩」に転じさせないようにしています。

美術館の解体プログラム

本書は、絶対的混乱のプログラムに必要な内容と具体的な反植民地戦術の例を挙げ、西洋の展示や保存のモデルを拒否するアンチレイシストのポスト美術館空間の姿を描いています。

過去の暴力性と取り除かれたもの

「植民地奴隷制と植民地主義に取り組んでいた私は、黒人、イスラム教徒、アジア人、先住民の女性、子供、男性の人々の人種化や非人間化の過程で、画像-絵画、ドローイング、写真、後に映画-が果たす重要な役割に興味を持っていました。美術館は、採取や没収の制度的な暴力が中和されてきた方法、植民地での生活の画像が平和な生活を表現してきた方法を探求するのに最適な場所でした。」

略奪は利益をもたらすために行われ、すべての人類のためにアートを保存する名目で正当化されました。非西洋の人々は保存や遺産を理解していないという論点で- フランソアーズ・ヴェルジェ

ヴェルジェは、その犯罪を美術館の誕生に位置付けます-18世紀のユーロ啓蒙で生まれた機関であり、没収、採取、横領、奴隷貿易の利益によってのみ維持されてきました。ヴェルジェは、文明化された平和な美術館の幻想を打ち砕き、「無名の死者が納骨なく残り、人々や共同体を喪失し、富を奪われる」墓所、「喪失した葬儀や富を奪い去る」霊安所としてそれを描写しています。

西洋の美術館は、略奪された工芸品や人骨がガラスの背後に展示される場所に留まるだけでなく、「支配の強力な道具であり(… )混沌から保護された瞑想空間として提示される」、「美の神聖な神殿」として成功した美術館であると説明されています。プルート出版社によって出版された絶対的混乱のプログラム：美術館の植民地主義を執筆しているヴェルジェは、西洋の美術館の中立性の幻想を終わらせることを目指しており、その目的を明らかにすることによって- 「国家の壮大さを演じる」-白人のヨーロッパの’文明化の使命’を促進し、美術館が「あらゆる文化からの富の収蔵庫」となり、「人類の歴史」が保存されるのに最適でより正当化されると主張します。

「利益をもたらすために略奪されたものは、すべての人類のためにアートを保存する名目で正当化されました」と彼女は私に語ります。「非西洋の人々は保存や遺産を理解していないという論拠でした。ヨーロッパは、ユーロ中心の芸術史と世界のマッピングに基づいて、保全、保存、伝達の使命を自らに負っていました。」

このヨーロッパの壮大な幻想とユートピアン的な普遍主義は、2002年に最大の西洋の美術館によって署名された普遍美術館の価値で記され、略奪された工芸品の返還要求の増加に続いて:「美術館は1つの国の市民だけでなく、すべての国の人々に奉仕しています。(…)美術館は人類に奉仕しています。」彼らの他の主張は、ヨーロッパがこれらの工芸品を数百年間保存しているため、それらを保持できるはずだという考えにあった。しかし、「泥棒が私から盗んだ物を取り戻す見返りとして、私がそれを彼らに返さなければならないわけではありません」とヴェルジェは記しています。

美術館は、制度的な暴力の中和がどのように行われたかを探るのに最適な場所でした- フランソアーズ・ヴェルジェ

本書では、西洋の特殊性と普遍主義の源泉を「宇宙で最も偉大な美術館、規模や名声において無類の」- ルーブル美術館にたどり着きます。フランス革命から生まれたその著作の矛盾に1章が捧げられており、それは自由の名目の下で革命的でナポレオン軍による略奪の産物です。その着想は、委任政府から解放されたアートを人々に返すという革命の教義を通じて多くの国々からの没収を正当化することでした。

彼女は私たちに、「アートの略奪と破壊は過去のことではなく、今も起こっている」と思い起こさせます。「ロシアの侵攻直後、ICOMはウクライナのアートの保護を組織し、ガザでは、西洋の美術館による強い非難や抗議やパレスチナのアートや遺跡を保存、保護する提案はなかった。しかし、2024年2月の段階では、パレスチナ文化省によると、320,207の博物館、歴史的な重要な発掘地、考古学的サイトのうち、イスラエル軍の爆発により、瓦礫にされ、コレクションが消失し、略奪されたりその行方不明となったものがいくつかありました。パレスチナの芸術家が殺害され、彼らの作品が消滅しました。」

アートの略奪と破壊は過去のことではなく、今も起こっている- フランソアーズ・ヴェルジェ

解体された美術館の可能性

将来的に解植民地化された美術館が存在する可能性を考えると、「現在の文脈で反植民地主義が何であるかを説明し、現在展開されている入植植民地主義の意識と政治、植民地主義の模範がどのように残っているかを示すことが必要となります。」とヴェルジェは述べています。しかし、彼女は慎重な楽観主義者です。「現在、世界中で、蓄積、有毒な保存、横領を退け、対象を環境から分離する命令を拒否し、コミュニティの多様なニーズに応え、ダイナミックであることを保とうとする’美術館’の形式に多くの実験があります」と述べています。