Rewrite
1980年代、空前の女子プロレスブームで、全国民の敵と呼ばれた最恐ヒールの知られざる物語を描くNetflixシリーズ「極悪女王」。
主役の「ダンプ松本」を演じるのは、お笑いを軸に、音楽や芝居など幅広いフィールドで活躍するゆりやんレトリィバァ。そのライバルとなるクラッシュ・ギャルズの「長与千種」を演じた唐田えりか、「ライオネス飛鳥」を演じた剛力彩芽が脇を固めた。当時の女子プロレスのとてつもない熱狂を、一流のスタッフ&キャストが集結して描ききった一大エンターテインメント作品となっている。
過酷な肉体改造と撮影をともなう新たな表現に挑んだ3人の思いに迫る、6つの質問を投げかけた。
目次
それぞれが演じたレスラーの魅力は?
ゆりやんレトリィバァ(以下、ゆりやん):私が演じさせていただいたダンプ松本さんは最恐のレスラーなんですけど、もともとは松本香さんというめっちゃかわいくて、ピュアで、まっすぐな女の子だったんですね。そんな人が、世の中の全員に嫌われてもヒールという役に徹する。その強さや覚悟、やさしさなど、すべての感情がギュッっと詰まっているところが魅力的で大好きです。
唐田えりか(以下、唐田):長与千種さんは、人の痛みがわかる人だと私は思っていて。自分とすごく向き合ってきたからこそ、自分の弱さをわかっている強さがあって、そこが魅力だと感じました。
剛力彩芽(以下、剛力):ライオネス飛鳥さんは本当に純粋にプロレスが大好きな方で。自分はすごく表に出るわけじゃないけど、クラッシュギャルズでコンビを組む長与さんを助けに行く姿や、ダンプさん相手に挑んでいく姿がすごくかっこいい。信念を持っている姿が魅力的だなと思いました。
オーディション時の意気込みは?
ゆりやん:もともと私生活で3年ぐらいかけて体重を45kg減らして、その直後のオーディションやったんでどうしようって。ほんまはすぐに掴み取りたいって思うべき作品なんですけど、やっぱり身体や健康のこともあるし、めちゃめちゃ悩んで。
でもただのリバウンドじゃなくて、当時のダンプさんに近い、かっこいいプロレスラーさんの身体作りということだったので、覚悟を決めてオーディションに挑みました。
受かったからには絶対にダンプさんになるって決めてましたし、アメリカに進出したいという思いがあるので、これでアメリカに行って「This is me!」って言えるなと(笑)。
唐田:私は自分にお仕事がほとんどなかった時期に、当時のマネージャーさんからオーディションのお話を聞いて。複数の女子レスラーの中からどの役になるかわからないというオーディションだったんですけど、マネージャーさんが「長与千種さんがいいと思う」とおっしゃってくださったんです。
長与さんのことを調べて、知っていくうちに、自分のことのように思えることがたくさんあって、勝手に運命的なものを感じ、この人を演じたいと強く思ってオーディションに挑みました。
剛力:今回のオーディションはちょうど30になる歳で、私が独立したタイミングのあとだったんですよね。プロレスラーというものをなにも知らない中で、増量だったりトレーニングだったり、自分が今まで経験できなかったことに挑戦させていただけた。この作品にこのタイミングで出会えたのは、運命というかご縁だったなというのはすごく思いますね。
強く印象に残っているプロレスシーンは?
ゆりやん:我々は試合の撮影と言わずに「試合」と呼んでいて、全部の試合が印象的ではあるんですけど、ひとつは(長与千種vsダンプ松本の)敗者髪切りデスマッチ。
髪切りが終わったときには、私は切ったほうやから、やってやったみたいな感じなんかと思いきや、とにかく震えも涙も止まらなくなって。ダンプさんもめっちゃすごい覚悟でやってはったんやろなと思ったことが非常に印象的でした。
もうひとつはダンプさんの引退試合。お客さんも全員タイムスリップして、その時代をみんなで体験したかのような信じられない空間でした。
唐田:長与さんは蹴りが得意な選手というのもあって、みんなとは別に居残りして蹴りを練習していました。得意技のニールキックは難しくて、最初は代役を立てるという話もあったんですけど、それが悔しくて、絶対に自分でやりたいと思ってがんばりました。
本当にみんながちゃんとプロレスをやっているので、そういうところも見どころですけど、試合で私を倒したゆりやんさんや剛力さんが、私を見下ろす顔がすごく記憶に残っていて。自分が表現するうえで想像していなかった感情を、試合の中で2人に感じさせてもらったことが大きかったですね。
剛力:私もやっぱり表情で震える瞬間がたくさんありました。唐田さんがニールキックで(水野絵梨奈さん演じる)ジャガーさんを倒して、ジャガーさんに「起きろよ」と言ったときの目がもう忘れられなくて。
そのときに私、鳥肌が立つぐらい「あ、スターだ」って思ったんですよ。長与千種としてだけど、唐田えりかがめちゃくちゃ輝いてるって。私はそのときにライオネス飛鳥として、この人を輝かせるために生きようという覚悟が決まりました。
ゆりやんさんが松本香からダンプ松本になっていく表情、試合でリングの上に立ったときの表情の変わり方もすごくて。そんな2人の情熱やエネルギーをロープの外から見ていると、正直そこに混ざれないのが悔しいなって思う瞬間もあるぐらいでした。
作品に参加して感じたプロレスの魅力は?
ゆりやん:お笑いの舞台は、前からしか見えないじゃないですか。でもプロレスって四方どこから見ても自由で、どこを見てもエンターテインメントなんですね。四方どころか、リングを降りて客席まで来てくれたりして、最高やと思います。
そして観客側も一体感があって、すごくストレス発散になる。お笑いとも歌とも違う、プロレスならではの楽しい魅力ですよね。
レスラー側としては、私はヒールだったんですけど、ほんまに「帰れ!帰れ!」ってコールがめっちゃ気持ちいい。不思議なんですけど、お笑いでいったらウケてるようなアドレナリンが出る。ダンプさんもリングで帰れコールを受けたときに、初めてみんなが自分に注目してくれた快感があったと思うんです。そこからあんなに日本中で嫌われて、大変な思いもしたと思うんですけど、プロレスをやりたいんだという夢を貫く。私はその覚悟を非常に尊敬しますし、わかる気もします。
私は子供のころにアイドルになりたかったんですけど、アイドルの人ってみんな目の下に膨らみがあるのに、私にはないやん……と。そんなときテレビで吉本新喜劇を見たらめっちゃおもしろくて、教室で真似してやったらみんな笑ってくれて、私がスポットライトを浴びれるのはお笑いだと思ったんです。
それから芸人になりたいという思いでずっと生きてきて、もちろんなんでも叩かれたり、批判されたりすることもあって、それでも「知るか」って自分を貫いてやっていくのは大変なんですけど、気持ち良いことでもあるんです。大暴れするのって、めっちゃ楽しいので。
唐田:小学生のときにプロレスを1回見たことがあるんですけど、それがアジャコングさんの試合で座って見てられないぐらい怖くて。今回この作品をやるとなったときに、まずプロレスを好きにならなきゃいけないというので、長与さんにプロレスをどう思っているかを聞いたら、「プロレスは芸術だと思っている」とおっしゃっていたんです。
自分が戦って何回も立ち上がっていく姿を見せていくことで、見ているみんなが自分を投影して、一緒になって戦えるすばらしさがあると。みんなが日々抱えている悔しさだったり、もどかしさだったり、生きづらさだったりを全部、プロレスで自分が体現できる、自分がみんなを主人公にできるというようなことをおっしゃっていて。
実際に演じていく中で、何千人ものエキストラさんの声援や、ゆりやんさん、剛力さんからもらえるパワーをすごく感じられて。本当にプロレスって芸術なんだなと、長与さんの言葉がわかるようになりました。
剛力:私も正直、プロレスはほとんど見たことなかったんですけど、この作品に携わらせていただいて、戦っている相手との信頼関係や、思い合っている感覚がないとできないことを強く感じました。
試合の中でやられている痛さや苦しさ、悔しさをどのように見せていくのか、それはお芝居にも通じるものがあって、すごくエンターテインメント性が高いもので、私自身本当にプロレスへの見方や感じ方が変わりました。
今はプロレスが大好きですし、定期的に試合を見に行かせていただいています。
自らを表現者として突き動かすものは?
ゆりやん:表現することって、生きることと一緒やなと思ってて。私は悔しいとか、腹立つとか、そういうネガティブな感情をコントにして笑いもんにするんですよ。そしたらその感情がポジティブになる。もしかしたらダンプさんも、悔しい気持ちをヒールとして表現することでポジティブに捉えていたのかも知れませんね。
唐田:普段思っていることや感じていることはたくさんあるんですけど、それを言葉にすることが苦手で。でもお芝居を通して、初めて言葉にできるんだということを感じられるようになって。そのときからお芝居が私にとってすごく大事なものになりました。
プロレスも似ていて、技を受ける側もタイミングを合わせないと、技が成立しないんです。言葉じゃなく通じ合うような感覚がありました。
剛力:表現することが好きだという気持ちですね。お芝居にしても、モデルの仕事にしても、ただただ好きなんですよね。飛鳥さんは自分のやりたいプロレスで輝ききれなくても、プロレスのことが大好きだという気持ちが上回った。だからやり続けられたのかなというのは、私自身もすごく似ている部分があるなと思います。
私もうまくいかないときや、後悔して落ち込むときもあるけど、この仕事以外は考えられなくて。それでもやってみたら達成感があるし、作品を観てくれた人から「よかったよ」って言ってもらえたときのうれしさは、他に代えがたいものがあるんですよね。
本作を経て得たものは?
ゆりやん:得たものがありすぎて、逆に「極悪女王」に出させてもらってなかったら私ってどうなってたのって思って怖くなるぐらい、私の人生にとって分厚いものです。最初にオーディションに受かったときは「やったー、ネットフリックス、いえーい」って感じやったんですよ。でもそれ以上のものがありました。
キャストの皆さんと出会えたこと、白石和彌監督、茂木克仁監督をはじめ、スタッフさん全員が作り上げた世界にめっちゃ長い間一緒におらせてもらえたこと、自分だけではできない表情を引き出してもらえたこと、自分の本当の感情が湧き上がるという体験ができたこと。芸人としても人間としても今まで表現の仕方さえわからなかったような、自分自身を思いっきりさらけ出すことができました。
唐田:私もこの作品に出られていなかったら自分はどうなってたんだろうと思うくらい、自分にとって大きい作品です。やっと自分の代表作だと胸を張って言える作品ができたかもしれません。自分にお仕事がなかった時期に決まった作品ということもあり、その時期にすごく向き合ってくださった事務所の社長やマネージャーさん、家族たちに届けられる作品ができたことも率直にうれしいです。
剛力:たぶん皆さんがイメージしてなかった役に挑戦させてもらえて、どういうふうに見られるかわからない不安ももちろんあるんですけど、ここまで挑戦したんだなと思ってもらえたらうれしいです。ここまでできたのはプロフェッショナルなスタッフさんやキャストのみなさんが、それぞれの場所で全力を出し切ってくださったおかげです。
そして私自身は自分を俯瞰で見ることを学んだなと思います。もちろんリングの上では本気でぶつかり合うんですけど、でもどこか冷静な自分がちゃんといて、相手にケガさせない、自分もケガしないように俯瞰で見ることを感じられたことが大きかったです。最近はお芝居をしていてもどこか冷静な自分がいるというか、違う自分が見ているような感覚があって、これまでとは違うお芝居の仕方を発見できたのはおもしろいなと思います。
Profile _ ゆりやんレトリィバァ
1990年生まれ、奈良県出身。関西大学4年生のときに、NSC(吉本総合芸能学院)大阪校の35期生として入学。「NSC大ライブ2013 ~史上最多1000人の芸人が本日誕生!?」の大阪校で優勝し、NSCを首席で卒業。17年の在阪賞レース「第47回 NHK上方漫才コンテスト」で、女性ピン芸人初の優勝をはたす。同年、第1回「女芸人No.1決定戦 THE W」でも優勝。19年にはア メリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に出場し、米国旗柄の水着を着て手首を回すダンスで、世界から注目される。「R-1グランプリ2021」では、悲願の初優勝。昨年はお笑いタレントに加え、ラッパーとしてもデビュー。アイドル、俳優、声優ほか、マルチな才能で活躍中。
jacket ¥100,100・pants ¥100,100 / alexanderwang (︎03-6418-5174), earrings ¥176,000・necklace ¥374,000・gold ring ¥286,000 / under the rose (undertherose.jp), boots ¥33,000 / ALM.(almofficial.com), Other stylist’s own
Profile _ 唐田えりか(からた・えりか)
1997年生まれ、千葉県出身。高校生のときにマザー牧場でスカウトされる。15年、ドラマ『恋仲』(フジ系)第1話にゲスト出演して、女優デビュー。濱口竜介監督作『寝ても覚めても』(18年)で映画初主演を飾り、山路ふみ子映画賞で新人女優賞、ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を受賞。『の方へ、流れる』(22年)では、遠藤雄弥とダブル主演を務める。主演作『朝がくるとむなしくなる』(23年)はアジア各国でも公開。「第77回カンヌ国際映画祭」で国際批評家連盟賞を受賞した映画『ナミビアの砂漠』(24年)にも出演。
jacket ¥66,000・tops ¥26,400・belt ¥30,800・pants ¥49,500 / LEINWANDE (LEINWANDE CUSTOMER SUPPORT customer@leinwande.com), shoes ¥181,500 / Gianvito Rossi (Gianvito Rossi Japan 03-3403-5564), ear cuff on right ear ¥20,900・ear cuff on left ear upside: ¥37,400 downside: ¥39,600・necklace ¥74,800・chain necklace (short) ¥25,300・coin charm ¥39,600・chain necklace (long) ¥17,600・pearl charm ¥34,100・bangle ¥44,000・bracelet ¥62,700・ring ¥49,500 / ENEY (ENEY Matsuya Ginza 03-3566-2139)
Profile _ 剛力彩芽(ごうりき・あやめ)
1992年生まれ、神奈川県出身。08年〜13年、雑誌『SEVENTEEN』(現『Seventeen』)専属 モデルとして活躍。11年に「大切なことはすべて君が教えてくれた」(CX)で本格的に女優デビュー。 以後、ドラマ・映画・CM・舞台などで幅広く活躍。今年は舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』で藤原紀香、高島礼子とトリプル主演を務め、主演映画『私が俺の人生!?』が公開。ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』も放送された。
coat ¥440,000・gilet ¥286,000 / ZIN KATO, boots ¥206,800 / Christian Louboutin (Christian Louboutin Japan), earrings ¥2,970 / Mon Amie, ring on right middle finger ¥184,800・ring on left index finger ¥112,200 / e.m. (e.m. AOYAMA), Other stylist’s own
Information
Netflixシリーズ「極悪女王」
2024年9月19日(木)よりNetflixにて世界独占配信!
出演:ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽、仙道敦子、音尾琢真、黒田大輔、斎藤 工、村上 淳
企画・プロデュース・脚本:鈴木おさむ
総監督:白石和彌
監督:白石和彌(1〜3話)、茂木克仁(4〜5話)
主題歌:「Are you serious?」Awich
in HTML format, including tags, to make it appealing and easy to read for Japanese-speaking readers aged 20 to 40 interested in fashion. Organize the content with appropriate headings and subheadings (h1, h2, h3, h4, h5, h6), translating all text, including headings, into Japanese. Retain any existing tags from
1980年代、空前の女子プロレスブームで、全国民の敵と呼ばれた最恐ヒールの知られざる物語を描くNetflixシリーズ「極悪女王」。
主役の「ダンプ松本」を演じるのは、お笑いを軸に、音楽や芝居など幅広いフィールドで活躍するゆりやんレトリィバァ。そのライバルとなるクラッシュ・ギャルズの「長与千種」を演じた唐田えりか、「ライオネス飛鳥」を演じた剛力彩芽が脇を固めた。当時の女子プロレスのとてつもない熱狂を、一流のスタッフ&キャストが集結して描ききった一大エンターテインメント作品となっている。
過酷な肉体改造と撮影をともなう新たな表現に挑んだ3人の思いに迫る、6つの質問を投げかけた。
それぞれが演じたレスラーの魅力は?
ゆりやんレトリィバァ(以下、ゆりやん):私が演じさせていただいたダンプ松本さんは最恐のレスラーなんですけど、もともとは松本香さんというめっちゃかわいくて、ピュアで、まっすぐな女の子だったんですね。そんな人が、世の中の全員に嫌われてもヒールという役に徹する。その強さや覚悟、やさしさなど、すべての感情がギュッっと詰まっているところが魅力的で大好きです。
唐田えりか(以下、唐田):長与千種さんは、人の痛みがわかる人だと私は思っていて。自分とすごく向き合ってきたからこそ、自分の弱さをわかっている強さがあって、そこが魅力だと感じました。
剛力彩芽(以下、剛力):ライオネス飛鳥さんは本当に純粋にプロレスが大好きな方で。自分はすごく表に出るわけじゃないけど、クラッシュギャルズでコンビを組む長与さんを助けに行く姿や、ダンプさん相手に挑んでいく姿がすごくかっこいい。信念を持っている姿が魅力的だなと思いました。
オーディション時の意気込みは?
ゆりやん:もともと私生活で3年ぐらいかけて体重を45kg減らして、その直後のオーディションやったんでどうしようって。ほんまはすぐに掴み取りたいって思うべき作品なんですけど、やっぱり身体や健康のこともあるし、めちゃめちゃ悩んで。
でもただのリバウンドじゃなくて、当時のダンプさんに近い、かっこいいプロレスラーさんの身体作りということだったので、覚悟を決めてオーディションに挑みました。
受かったからには絶対にダンプさんになるって決めてましたし、アメリカに進出したいという思いがあるので、これでアメリカに行って「This is me!」って言えるなと(笑)。
唐田:私は自分にお仕事がほとんどなかった時期に、当時のマネージャーさんからオーディションのお話を聞いて。複数の女子レスラーの中からどの役になるかわからないというオーディションだったんですけど、マネージャーさんが「長与千種さんがいいと思う」とおっしゃってくださったんです。
長与さんのことを調べて、知っていくうちに、自分のことのように思えることがたくさんあって、勝手に運命的なものを感じ、この人を演じたいと強く思ってオーディションに挑みました。
剛力:今回のオーディションはちょうど30になる歳で、私が独立したタイミングのあとだったんですよね。プロレスラーというものをなにも知らない中で、増量だったりトレーニングだったり、自分が今まで経験できなかったことに挑戦させていただけた。この作品にこのタイミングで出会えたのは、運命というかご縁だったなというのはすごく思いますね。
強く印象に残っているプロレスシーンは?
ゆりやん:我々は試合の撮影と言わずに「試合」と呼んでいて、全部の試合が印象的ではあるんですけど、ひとつは(長与千種vsダンプ松本の)敗者髪切りデスマッチ。
髪切りが終わったときには、私は切ったほうやから、やってやったみたいな感じなんかと思いきや、とにかく震えも涙も止まらなくなって。ダンプさんもめっちゃすごい覚悟でやってはったんやろなと思ったことが非常に印象的でした。
もうひとつはダンプさんの引退試合。お客さんも全員タイムスリップして、その時代をみんなで体験したかのような信じられない空間でした。
唐田:長与さんは蹴りが得意な選手というのもあって、みんなとは別に居残りして蹴りを練習していました。得意技のニールキックは難しくて、最初は代役を立てるという話もあったんですけど、それが悔しくて、絶対に自分でやりたいと思ってがんばりました。
本当にみんながちゃんとプロレスをやっているので、そういうところも見どころですけど、試合で私を倒したゆりやんさんや剛力さんが、私を見下ろす顔がすごく記憶に残っていて。自分が表現するうえで想像していなかった感情を、試合の中で2人に感じさせてもらったことが大きかったですね。
剛力:私もやっぱり表情で震える瞬間がたくさんありました。唐田さんがニールキックで(水野絵梨奈さん演じる)ジャガーさんを倒して、ジャガーさんに「起きろよ」と言ったときの目がもう忘れられなくて。
そのときに私、鳥肌が立つぐらい「あ、スターだ」って思ったんですよ。長与千種としてだけど、唐田えりかがめちゃくちゃ輝いてるって。私はそのときにライオネス飛鳥として、この人を輝かせるために生きようという覚悟が決まりました。
ゆりやんさんが松本香からダンプ松本になっていく表情、試合でリングの上に立ったときの表情の変わり方もすごくて。そんな2人の情熱やエネルギーをロープの外から見ていると、正直そこに混ざれないのが悔しいなって思う瞬間もあるぐらいでした。
作品に参加して感じたプロレスの魅力は?
ゆりやん:お笑いの舞台は、前からしか見えないじゃないですか。でもプロレスって四方どこから見ても自由で、どこを見てもエンターテインメントなんですね。四方どころか、リングを降りて客席まで来てくれたりして、最高やと思います。
そして観客側も一体感があって、すごくストレス発散になる。お笑いとも歌とも違う、プロレスならではの楽しい魅力ですよね。
レスラー側としては、私はヒールだったんですけど、ほんまに「帰れ!帰れ!」ってコールがめっちゃ気持ちいい。不思議なんですけど、お笑いでいったらウケてるようなアドレナリンが出る。ダンプさんもリングで帰れコールを受けたときに、初めてみんなが自分に注目してくれた快感があったと思うんです。そこからあんなに日本中で嫌われて、大変な思いもしたと思うんですけど、プロレスをやりたいんだという夢を貫く。私はその覚悟を非常に尊敬しますし、わかる気もします。
私は子供のころにアイドルになりたかったんですけど、アイドルの人ってみんな目の下に膨らみがあるのに、私にはないやん……と。そんなときテレビで吉本新喜劇を見たらめっちゃおもしろくて、教室で真似してやったらみんな笑ってくれて、私がスポットライトを浴びれるのはお笑いだと思ったんです。
それから芸人になりたいという思いでずっと生きてきて、もちろんなんでも叩かれたり、批判されたりすることもあって、それでも「知るか」って自分を貫いてやっていくのは大変なんですけど、気持ち良いことでもあるんです。大暴れするのって、めっちゃ楽しいので。
唐田:小学生のときにプロレスを1回見たことがあるんですけど、それがアジャコングさんの試合で座って見てられないぐらい怖くて。今回この作品をやるとなったときに、まずプロレスを好きにならなきゃいけないというので、長与さんにプロレスをどう思っているかを聞いたら、「プロレスは芸術だと思っている」とおっしゃっていたんです。
自分が戦って何回も立ち上がっていく姿を見せていくことで、見ているみんなが自分を投影して、一緒になって戦えるすばらしさがあると。みんなが日々抱えている悔しさだったり、もどかしさだったり、生きづらさだったりを全部、プロレスで自分が体現できる、自分がみんなを主人公にできるというようなことをおっしゃっていて。
実際に演じていく中で、何千人ものエキストラさんの声援や、ゆりやんさん、剛力さんからもらえるパワーをすごく感じられて。本当にプロレスって芸術なんだなと、長与さんの言葉がわかるようになりました。
剛力:私も正直、プロレスはほとんど見たことなかったんですけど、この作品に携わらせていただいて、戦っている相手との信頼関係や、思い合っている感覚がないとできないことを強く感じました。
試合の中でやられている痛さや苦しさ、悔しさをどのように見せていくのか、それはお芝居にも通じるものがあって、すごくエンターテインメント性が高いもので、私自身本当にプロレスへの見方や感じ方が変わりました。
今はプロレスが大好きですし、定期的に試合を見に行かせていただいています。
自らを表現者として突き動かすものは?
ゆりやん:表現することって、生きることと一緒やなと思ってて。私は悔しいとか、腹立つとか、そういうネガティブな感情をコントにして笑いもんにするんですよ。そしたらその感情がポジティブになる。もしかしたらダンプさんも、悔しい気持ちをヒールとして表現することでポジティブに捉えていたのかも知れませんね。
唐田:普段思っていることや感じていることはたくさんあるんですけど、それを言葉にすることが苦手で。でもお芝居を通して、初めて言葉にできるんだということを感じられるようになって。そのときからお芝居が私にとってすごく大事なものになりました。
プロレスも似ていて、技を受ける側もタイミングを合わせないと、技が成立しないんです。言葉じゃなく通じ合うような感覚がありました。
剛力:表現することが好きだという気持ちですね。お芝居にしても、モデルの仕事にしても、ただただ好きなんですよね。飛鳥さんは自分のやりたいプロレスで輝ききれなくても、プロレスのことが大好きだという気持ちが上回った。だからやり続けられたのかなというのは、私自身もすごく似ている部分があるなと思います。
私もうまくいかないときや、後悔して落ち込むときもあるけど、この仕事以外は考えられなくて。それでもやってみたら達成感があるし、作品を観てくれた人から「よかったよ」って言ってもらえたときのうれしさは、他に代えがたいものがあるんですよね。
本作を経て得たものは?
ゆりやん:得たものがありすぎて、逆に「極悪女王」に出させてもらってなかったら私ってどうなってたのって思って怖くなるぐらい、私の人生にとって分厚いものです。最初にオーディションに受かったときは「やったー、ネットフリックス、いえーい」って感じやったんですよ。でもそれ以上のものがありました。
キャストの皆さんと出会えたこと、白石和彌監督、茂木克仁監督をはじめ、スタッフさん全員が作り上げた世界にめっちゃ長い間一緒におらせてもらえたこと、自分だけではできない表情を引き出してもらえたこと、自分の本当の感情が湧き上がるという体験ができたこと。芸人としても人間としても今まで表現の仕方さえわからなかったような、自分自身を思いっきりさらけ出すことができました。
唐田:私もこの作品に出られていなかったら自分はどうなってたんだろうと思うくらい、自分にとって大きい作品です。やっと自分の代表作だと胸を張って言える作品ができたかもしれません。自分にお仕事がなかった時期に決まった作品ということもあり、その時期にすごく向き合ってくださった事務所の社長やマネージャーさん、家族たちに届けられる作品ができたことも率直にうれしいです。
剛力:たぶん皆さんがイメージしてなかった役に挑戦させてもらえて、どういうふうに見られるかわからない不安ももちろんあるんですけど、ここまで挑戦したんだなと思ってもらえたらうれしいです。ここまでできたのはプロフェッショナルなスタッフさんやキャストのみなさんが、それぞれの場所で全力を出し切ってくださったおかげです。
そして私自身は自分を俯瞰で見ることを学んだなと思います。もちろんリングの上では本気でぶつかり合うんですけど、でもどこか冷静な自分がちゃんといて、相手にケガさせない、自分もケガしないように俯瞰で見ることを感じられたことが大きかったです。最近はお芝居をしていてもどこか冷静な自分がいるというか、違う自分が見ているような感覚があって、これまでとは違うお芝居の仕方を発見できたのはおもしろいなと思います。
Profile _ ゆりやんレトリィバァ
1990年生まれ、奈良県出身。関西大学4年生のときに、NSC(吉本総合芸能学院)大阪校の35期生として入学。「NSC大ライブ2013 ~史上最多1000人の芸人が本日誕生!?」の大阪校で優勝し、NSCを首席で卒業。17年の在阪賞レース「第47回 NHK上方漫才コンテスト」で、女性ピン芸人初の優勝をはたす。同年、第1回「女芸人No.1決定戦 THE W」でも優勝。19年にはア メリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に出場し、米国旗柄の水着を着て手首を回すダンスで、世界から注目される。「R-1グランプリ2021」では、悲願の初優勝。昨年はお笑いタレントに加え、ラッパーとしてもデビュー。アイドル、俳優、声優ほか、マルチな才能で活躍中。
jacket ¥100,100・pants ¥100,100 / alexanderwang (︎03-6418-5174), earrings ¥176,000・necklace ¥374,000・gold ring ¥286,000 / under the rose (undertherose.jp), boots ¥33,000 / ALM.(almofficial.com), Other stylist’s own
Profile _ 唐田えりか(からた・えりか)
1997年生まれ、千葉県出身。高校生のときにマザー牧場でスカウトされる。15年、ドラマ『恋仲』(フジ系)第1話にゲスト出演して、女優デビュー。濱口竜介監督作『寝ても覚めても』(18年)で映画初主演を飾り、山路ふみ子映画賞で新人女優賞、ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を受賞。『の方へ、流れる』(22年)では、遠藤雄弥とダブル主演を務める。主演作『朝がくるとむなしくなる』(23年)はアジア各国でも公開。「第77回カンヌ国際映画祭」で国際批評家連盟賞を受賞した映画『ナミビアの砂漠』(24年)にも出演。
jacket ¥66,000・tops ¥26,400・belt ¥30,800・pants ¥49,500 / LEINWANDE (LEINWANDE CUSTOMER SUPPORT customer@leinwande.com), shoes ¥181,500 / Gianvito Rossi (Gianvito Rossi Japan 03-3403-5564), ear cuff on right ear ¥20,900・ear cuff on left ear upside: ¥37,400 downside: ¥39,600・necklace ¥74,800・chain necklace (short) ¥25,300・coin charm ¥39,600・chain necklace (long) ¥17,600・pearl charm ¥34,100・bangle ¥44,000・bracelet ¥62,700・ring ¥49,500 / ENEY (ENEY Matsuya Ginza 03-3566-2139)
Profile _ 剛力彩芽(ごうりき・あやめ)
1992年生まれ、神奈川県出身。08年〜13年、雑誌『SEVENTEEN』(現『Seventeen』)専属 モデルとして活躍。11年に「大切なことはすべて君が教えてくれた」(CX)で本格的に女優デビュー。 以後、ドラマ・映画・CM・舞台などで幅広く活躍。今年は舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』で藤原紀香、高島礼子とトリプル主演を務め、主演映画『私が俺の人生!?』が公開。ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』も放送された。
coat ¥440,000・gilet ¥286,000 / ZIN KATO, boots ¥206,800 / Christian Louboutin (Christian Louboutin Japan), earrings ¥2,970 / Mon Amie, ring on right middle finger ¥184,800・ring on left index finger ¥112,200 / e.m. (e.m. AOYAMA), Other stylist’s own
Information
Netflixシリーズ「極悪女王」
2024年9月19日(木)よりNetflixにて世界独占配信!
出演:ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽、仙道敦子、音尾琢真、黒田大輔、斎藤 工、村上 淳
企画・プロデュース・脚本:鈴木おさむ
総監督:白石和彌
監督:白石和彌(1〜3話)、茂木克仁(4〜5話)
主題歌:「Are you serious?」Awich
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