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フェムテック業界の注目企業Flo Healthに迫る
アマゾンのCTOであるWerner Vogels氏によって、2024年の注目分野として予測されたフェムテックは、資金調達が難しい分野だったが、ヨーロッパで初めてのフェムテックユニコーン企業が誕生した。
Flo Health、ユニコーン企業誕生を発表
イギリスのFlo Healthが月経管理アプリ「Flo」を展開し、シリーズCラウンドで2億ドル以上を調達し、評価額が10億ドルを超えたことが2024年7月30日に発表されました。
Flo Healthがユニコーン企業になったことはフェムテック業界における重要な節目です。しかし、同社の設立者が全員男性であることから、この分野でも男性の成功例が目立つことについて議論が巻き起こっています。
月経管理・妊活・妊婦用の3つのモード
120人以上の医師や専門家が開発に携わったFloは、一般的には「月経管理アプリ」とされていますが、実際には月経トラッキング、妊活、妊婦向けの3つのモードで利用可能です。
月経管理アプリとして、正確な月経周期や身体の70以上の症状を追跡しモニタリングします。妊娠を希望するユーザーには、収集した情報に基づいて多様なアドバイスを提供します。カレンダーやアシスタント機能を活用して妊活をサポートし、妊婦向けの「妊娠モード」では胎児の成長トラッキングや産婦人科の予約リマインダーなどを提供します。
専用チャットスペース「Secret Chats」では、他のFloユーザーと交流できるSNS的な機能も備えています。匿名で安全な環境で会話し、身体の悩みを共有することができます。
さらに、2023年に導入された「Flo for Partners」機能により、パートナーと情報共有が可能に。科学的な根拠に基づいた女性の身体情報をわかりやすく説明し、パートナーの理解を深める仕組みとなっています。画像や動画、クイズを通じて学習できます。
医療関係者との連携、性に関する正確な情報提供
Flo公式サイトには「For Clinicians」(医療関係者向け)ページも用意されています。診察時間が限られている中、正確な情報提供が難しい状況を解決するため、Floの活用を推奨し、次回の診察に備えたフォローアップが可能です。
「リプロダクティブヘルスに関する誤った情報は、多くの女性の健康に悪影響を与えています」とし、患者の知識不足を明確にしています。
その結果、93%の人が「月経の全過程を正確に把握できない」と認識し、63%の人が「通常の月経周期について知識が不足している」との報告があります。特に米国の18〜24歳の女性の約60%がSNSから月経に関する情報を入手しているとの統計も示されています。
Floではこれらの信頼性の高い情報を活用し、リプロダクティブヘルスおよび性教育に力を入れています。また、「Health Library」では月経周期や妊活、LGBTQ+などのトピックに関する正確な情報を提供しています。
個人情報漏洩に関する疑惑、カナダでの集団訴訟が進行中
「世界中で3億8000万人が利用している」という自社アプリがユーザーから支持される理由は、正確な予測、医学的信頼性、プライバシー保護の三つの要素によるとされています。しかし、過去には個人情報の漏洩に関する報道がありました。
2019年2月、ウォールストリートジャーナルが「ユーザーがアプリに機密情報を提供し、それがFacebookに伝わる」と報じた記事が公表されました。この中で、ClueやFloなどの月経管理アプリが不正な情報漏洩があるとされています。
この報道を受け、FTC(アメリカ連邦取引委員会)が調査を開始し、2021年1月にFloに問題を指摘。和解条件として、情報開示の通知、情報を受け取った第三者に情報破棄を指示、ユーザーに対する虚偽報告の禁止などが確定しています。
ただし、Flo Healthは漏洩を認めておらず、「社内に不正行為がなかった」とコメント。しかし、カナダでは今年の3月にFloに対する集団訴訟が進行中です。
新興国でのユーザー数増加目指すFlo、日本語サイトも
Flo Healthは2024年7月にシリーズCラウンドを完了し、成長株投資企業General Atlanticと連携を発表しました。
2024年6月時点で、約7000万人の月間アクティブユーザーと約500万人の有料会員を抱えるFlo Health。共同設立者兼CEOのDmitry Gurski氏は、グローバルな向社会的プログラムを通じて10億人の女性にアプローチすることを目指すと述べています。
このプログラムは、インド、インドネシア、ナイジェリアなど66の国でFloプレミアムの無料アクセスを提供しており、すでにこれらの新興国で約1200万人の女性が利益を享受しています。
日本語の公式サイトも提供されているFlo。ただし、8月13日時点では、「プライバシーとセキュリティについての詳細」へのリンクで英語表記に切り替わる状況です。現時点では日本語情報がまだ充分ではないものの、今後日本市場に本格的に参入する可能性が高いと考えられます。
参照:Flo Health
(文:澤田真一)
結論
Flo Healthはフェムテック業界で注目を集