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コレクター道。人はなぜものを集めるのか。

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The Collector

コレクター道。人はなぜものを集めるのか。

人はなぜものを集めるのか? 集めることによって、一体何が得られるのか? そんな疑問に対する一つの答えを与えてくれる人物がいます。それが、デニムをメインとするブランド〈ボンクラ(BONCOURA)〉の代表・森島久氏。少年時代から現在に至るまで、常に何かを集めてきたという彼のコレクションから、収集することの醍醐味を探っていきましょう。

  • Photo_Takeshi Kimura
  • Text_Tetsu Takasuka
  • Edit_Yosuke Ishii

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ここは大阪・柏原市にある「SALON BONCOURA」。ブランドの〈ボンクラ〉全ラインナップを揃えた旗艦店であると同時に、代表の森島久の収集物を詰め込んだコレクションスペースとなっています。元々は、農作物の仕分け小屋として使われていた築100年を超える建物をリフォーム。経年変化した風合いに合うように、あえて錆びたトタンを探してきてしつらえるほどのこだわりよう。重厚な扉を開けると、森島氏が長年かけて醸成してきた独自の世界観が拡がります。

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フイナム取材班を迎え入れてくれた森島久氏。20年間のサラリーマン生活を経た後、恵まれたルックスを生かしてモデルに転身。モデル業をつづける傍ら、自身のブランド〈ボンクラ〉を立ち上げ、いまや大手セレクトショップをはじめ、全国の高感度なショップが、こぞってピックアップする人気ブランドへと成長させました。彼のファッションセンスに影響を与えたのが、10代の頃から集めているヴィンテージウェア。まだ、誰も注目していなかった時代から、アメリカのフリーマーケットやスリフトショップを巡って収集してきたヴィンテージウェアのコレクションは膨大な数に上ります。森島氏の収集癖はそれにとどまらず、独自の価値基準で、様々なものを集めてきました。その一部を順にご紹介していきましょう。

COLLECTION 01_柴崎重行の木彫りの熊

素朴なたたずまいの木彫りの熊に魅了される。

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森島氏が5年ほど前から集めているのが、北海道の伝統工芸品である熊の木彫り。中でも、柴崎重行という作家が製作したものを中心にコレクションしている。その数はおよそ100体以上。かつては毛並みまで繊細に彫り込んだリアルな熊の木像を作っていた柴崎氏ですが、60年代頃から円空仏のように荒削りでミニマルな作風を確立。一見すると木片の塊にしか見えないような無駄を削ぎ落とした造形が、近年、脚光を浴びており、その市場価格は高騰しています。

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SALON BONCOURA」の片隅に並んだ柴崎重行・作の木彫りの熊たち。パッと見はただの木片のようですが、よく見ると実に味わい深い表情を醸し出しています。

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SALON BONCOURA」の随所に柴崎作品の熊の木彫りが。面彫りゆえ木の質感が十分に感じられ、素朴な佇まいは見ているだけで心が安らぎます。

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柴崎氏が製作した熊の木彫りを最初に手に入れたのは、北海道で開催されていたフリーマーケットでした。作家の名前も何も知らず、見た目を気に入って購入したのですが、年々、相場が上がって、今では入手が難しくなっています。初めて手に入れた作品は、僕の生まれ年に製作されたものなので、ひと際愛着があります」と森島氏。お土産物屋に並ぶ熊の木彫りとは一線を画すアーティスティックな作風、個体ごとに異なる愛くるしいたたずまい。集めたくなるの気持ちもわかります。

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ほとんど“のっぺらぼう”と言っていいくらい凹凸が少ない木彫りですが、持った時にしっくりと掌に収まるし、触っているだけで落ち着いた気持ちになれるんです」

COLLECTION 02_宮下貞一郎と船木研児の陶芸

二人の作家の器が伝える民藝の真髄。

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森島氏は、宮下貞一郎と船木研児という二人の陶芸家の作品を10年来集め続けています。宮下貞一郎は、北海道出身で民藝運動に携わり、北海道の陶芸の礎を作ったと言われています。 また、島根県出身の陶芸家の父のもとに生まれ、バーナード・リーチや濱田庄司に師事した船木研児自身の作品も高い評価を受けています。宮下貞一郎の作品は北海道の美術館にも多く所蔵されていますが、森島氏はそれよりも多数の作品を収集しているそうです。

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1961年に海外で発行された雑誌「JAPAN」で唯一取り上げられていた陶芸家が宮下貞一郎。その雑誌に掲載されていた器も森島氏は所有しています。

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躍動的な動物のモチーフが印象的な船木研児の作品群。洋のテイストを取り入れながらも日本的な素朴なタッチに仕上げています。

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宮下貞一郎の器との出会いは、北海道で開催されていた骨董の朝市だったそうです。「たたずまいが気に入って、何気なく買ってみたのですが、作家について調べてみてから興味を持ち、以来ずっと見つけては集め続けています。船木研児の作品には島根県・松江市の古道具屋で出会いました。出張などで地方に行く時は、必ず骨董市や古道具屋を訪ねるようにしています。すると意外にいいものとの出会いがあるもんなんですよ。ものを選ぶ基準は、自分に突き刺さるかどうか。有名かどうか、世間の評価が高いかどうかなどは考えません。自分が気に入ったものをひたすら集めているだけなんです」

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同じ作家の作品を集め続けていると、作風の変遷がわかってきます。すると、いつ頃に作られたものかまでわかるようになる。そうやって作家の人生をたどっているような気持ちになれるのも面白さのひとつです」

COLLECTION 03_フランス製ヴィンテージ眼鏡

現代の眼鏡にはない武骨さが魅力。

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ヴィンテージウェアのコレクターとしても知られる森島氏ですが、実はヴィンテージアイウェアにも深い造詣を持っています。中でも、フランス製のフレームに特化してコレクションを続けており、その数はなんと1000本以上! 森島氏は視力はいいというのですから、完全に実用性は度外視のコレクションです。集めているのは、主に30~60年代のもの。極太のセルフレームやクラウンパントゥと呼ばれるフレーム上部がフラットになったデザインが特徴的です。今でこそ、ヴィンテージアイウェアが注目されていますが、森島氏が集め始めたのは、10数年も前のこと。当時はかなり安く大量に手に入ったそうです。

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こちらが特にお気に入りのフレーム4本。どれも40年代頃に作られたものです。手前右はフランスの老舗、〈マックス ピティオン(MAX PITTION)〉の極太フレーム。左手前のクリアフレームは、フランスの古い眼鏡に見られるクラウンパントゥというスタイルを踏襲しています。左奥は当時のフレームでしか見られない深みのあるグリーンの素材を採用。右奥はやわらかな色合いが気に入っています。

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森島氏がヴィンテージアイウェアと出会ったのは、ヨーロッパを旅していた時のことでした。「フリーマーケットを回っていたところ、変わった形の眼鏡を見つけたんです。太いセルフレームやクラウンパントゥといった珍しいデザインが面白くて、目も悪くないのに買ってしまいました。それ以来、フランス製の眼鏡を中心に、イギリス、アメリカのヴィンテージアイウェアを集めるようになりました。素材感やヒンジの作りなど、現代の眼鏡には出せない味わいがやはり魅力ですね。似たようなフレームもありますが、それぞれどこのブランドでどの年代のものか、ほぼ完璧に把握しています」

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モデル業で眼鏡が必要になった時に使うことがあります。いつかコレクションしたモデルをベースに、オリジナルの眼鏡を作ってみたいですね」

COLLECTION 04_SEIKOのアンティークウォッチ

子供の頃に憧れだった国産時計。

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通な時計ファンから厚い支持を受けているのが、〈セイコー(SEIKO)〉のダイバーズウォッチ。1965年に国産初のダイバーズウォッチとして登場して以来、アップデートを繰り返しながら、現代までそのDNAが継承されています。多くの冒険家・探検家たちに愛用されたことでも知られており、セカンドモデルは、あの植村直己も使用していました。森島氏は、そんな〈セイコー〉の「ダイバーズ」の歴代モデルも収集しています。写真の左端がファーストモデルで、左から2~4本目までが当時の最高級モデルの300ダイバー、5~7本目までがセカンドモデル、8~9本目までがサードモデル、右端の4本はクォーツモデルとなっています。

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ダイバーズ」以外の〈セイコー〉の時計も大量に収集。低価格が魅力だった「セイコーファイブ」や世界中の都市の時間が瞬時に分かる「ワールドタイム」など、いま見ると余計に新鮮なデザインの時計が多数。中には、プレミアがついて、1本で30万円を超えるモデルもあるのだとか。高校生の頃から少しずつ集めてきた時計たちが、今では希少なコレクションとなっています。

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ヴィンテージロレックスもコレクションしていますが、子供の頃から憧れだった〈セイコー〉の時計は特に思い入れが強く、ずっと追いかけ続けています。中でも、水に入っても大丈夫な「ダイバーズ」は、小学生の時からの憧れでした。いつか手に入れたいとずっと思っていて、大人になってから歴代モデルを見つけては手に入れるようになりました。「セイコーファイブスポーツ」や「ワールドタイム」シリーズもデザインが好きだったので、地方の時計店でデッドストックを見つけては手に入れるようにしています」

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ワールドタイム」を眺めては、“いつか自分もロンドンに行くことがあるのかな”なんて思っていたものです。子供の頃の憧れをいまだに追い続けている感じですね」

COLLECTION 05_高橋昭一の鉄のオブジェ

早すぎた鉄作家の傑作たち。

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森島氏がよく足を運ぶ北海道出身の彫刻家、高橋昭一が手がけた鉄のオブジェの数々が、「SALON BONCOURA」の空間を独特なものにしています。高橋昭一は、鉄を使った彫刻作品の黎明期に意欲的に作品を作り続け、早すぎた鉄作家と呼ばれています。木材を使った彫刻や絵画も残していますが、森島氏が集めているのは、主に鉄の廃材などをつかった作品。その荒々しく武骨なオブジェは、空間を一変させるほどのパワーを持っています。

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SALON BONCOURA」には、高橋昭一の手による鉄のオブジェが20点近くも陳列されており、ヴィンテージ感あふれるウェアと相まって、独特の世界観を作り上げています。メカニカルな鉄の廃材を使いながらも、人の手が入ったことにより有機的な印象をたたえるオブジェたちは、古い小屋を改装した空間に見事に馴染んでいます。

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高橋昭一の作品にもまた、北海道で出会ったという森島氏。「北海道では、本当にいいものに巡り会えるんです。数年前、古道具屋をのぞいた時にたまたま見つけて、それから徹底的に集めようという気持ちになりました。抽象的な独特の雰囲気が大好きなんです。まだ、世の中的には、大きな評価を受けている作家ではありませんが、僕はこれからも出会いがあるたびに、作品を集めていきたいと思っています」

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有名か無名かは僕にとっては関係無い。その時にグッと惹きつけられるものを集めていきたいんです」

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ここまで、森島氏の収集品の数々をご覧いただきましたが、集めているものは、必ずしもコレクティブルなアイテムとして広く認知されているものではありません。むしろ、森島氏は時代に先駆けて、独自に価値を見出していたものばかり。他人の価値観に縛られないからこそ、成立したコレクションなのです。森島氏は自身の収集癖についてこう語ります。「いいものに沢山触れることで、色々なヒントをもらい、自分自身もいい服を生み出せる。直接的ではなくても、すべてのコレクションが僕のものづくりに役立っているんです。僕が集めたものは、全部好きで手に入れたものだから、それを売って別のものを買うということはない。手に入れたものを売りに出したことは一回もありません」。好きなものだけに囲まれた空間で、コレクションについて楽しげに語る森島氏の姿に、収集は、財布ではなく、心を満たしてくれるものなのだと取材班は実感。あなたもディープなコレクターの世界へ、足を踏み入れてみませんか?

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Source: フィナム

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