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去る1月21~26日(現地時間)に開催された2025年秋冬シーズンのパリ・ファッションウィーク・メンズ。例年、冬のおパリは、東京とは次元の違う寒さに打ちのめされるので、アウターを重ね着するなどの対策をしてきた。今年も戦々恐々と現地に乗り込んだが、1週間を通して「ん、あまり寒くないぞ(東京と同じレベル)」。しかし侮るなかれ、来る日も来る日も雨のち雨……。パリは渋滞が半端なく、徒歩や自転車移動が多くなるので、雨は寒いより辛い(うざい)。もはやパリでしか穿く機会のなくなった筆者の極厚レザーパンツの出番もほぼなかった。
花の都の天候事情はさておき、パリコレメンズ初日といえば、泣く子も黙る〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉だろう。今季はファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)とNIGO®️(ニゴー)大先生のコラボレーションが予告されていたため、これまでにも増して業界内外の関心を集めたが、結果的に〈Louis Vuitton〉で打ち出してきたファレル色は薄め。2000年代初頭を彷彿させるピースの数々など、両者の歴史を紐解き、昇華させたような内容だった(詳細はこちらから)。メインストリームの観点から見たストリートウェアの始祖の1人であるNIGO®️と〈Louis Vuitton〉のコラボは、今回で2度目だが、ある意味これが“真のラグジュアリーストリート”なのかもしれない。時代的にストリートは逆風と言えるが、本コレクションは今後の指針となり得るのか注目したい。
ファレル就任以降は〈Louis Vuitton〉のおかげで初日がハイライトになることも多いが、その前の枠で行われた〈AURALEE(オーラリー)〉を今季の本命に推したい。デザイナー 岩井良太の友人の着こなしがインスピレーション源になったという本コレクション。「ある日には洗練されたスーツを着こなし、また別の日には着古したTシャツを着ていました。どちらも違和感なく、彼らしさを放っていました。彼の飾らない個性に心を打たれたのです。お気に入りの古いTシャツが、ラグジュアリーなカシミアコートと同じくらい重要な意味を持つような、過去と現在が調和して未来の大切な宝物へと繋がる、新しい価値観を提案しています」と語る岩井氏。右も左もロゴものだらけという時代から貫いてきたミニマリズムは、トレンドに踊らされず続けてきたからこそ、より力強いものに。今季のキーとなったヴィンテージ調のピース。加工をやり過ぎるブランドが散見される中、綺麗目に仕上げるあたりは〈AURALEE〉らしい。着古して縮んだかのようなサイズ感のアイテムをインナーに、ダブルブレストコートやオーバーコートなどを合わせたスタイリングも秀逸だ。各アウターは、過去にも展開していたレザーやムートンを使った異素材カラーが特徴的。カラーリングは、ワークぽさを感じさせるブラウン系やオリーブ系を中心に、ブランドらしい明るめのカラーが随所に差し込まれた。時代が〈AURALEE〉に追いついたのか、いま店頭に並んでいたら飛ぶように売れそう……。
2日目は、こちらもお決まりの朝一〈LEMAIRE(ルメール)〉。ブランドのHQで開催されるショーは、その優雅さから慌ただしいファッションウィーク期間中に最もパリを感じるひと時な気がする。序盤に登場した長めのジップカラーにバラクラバを縫い付けたニットなど、ディテールが目を引く。いつも通り流麗なシルエットのアウターは、大振りのカラーが多かったのも特徴だろう。レイヤードで魅せるスタイリングは、ウォッシュをかけたブラックデニムに、薄いグレーのシャツやオーバーコートなど、同系色でまとめたルックが個人的には好みだった。3日目は〈HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE(オム プリッセ イッセイミヤケ)〉に代わり、パリコレ初参戦となる〈IM MEN(アイム メン)〉に始まり、〈Rick Owens(リック・オウエンス)〉〈Yohji Yamamoto POUR HOMME(ヨウジヤマモト プールオム)〉、トリに移動した〈Amiri(アミリ)〉。過去数シーズンにわたって、ぶっ飛んだショーを行ってきた〈Rick Owens〉だが、今回ランウェイ自体はストレートな表現に回帰した。リックが“ドラキュラカラー”と呼ぶ襟元がポイントのコートやジャケットはベジタブルタンニングされたカーフレザーで製作。ジッパーとハーネスのディテールが印象的なコート類は、ドイツの実験的バンド アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン(Einstürzende Neubauten)のブリクサ・バーゲルト(Blixa Bargeld)に敬意を表してたものだという。〈Rick Owens〉といえば奇抜なフットウェアが話題になることも多いが、今季は羽根のような大量のフリンジが取り付けられたブーツが強烈なインパクトを放っていた。〈Yohji Yamamoto POUR HOMME〉は、ブランドとしてはかなり珍しい中綿を多用。コートやシャツ、さらにはパンツまで薄手のダウン系のルックが続く。ゆったりと歩くモデル同士が、ランウェイでアイテムを交換するなどユニークな演出も観客を惹きつけた。多くのLAブランドが2~3年で消えてしまった中、同カテゴリーの出世頭として年々規模感を増すマイク・アミリ(Mike Amiri)率いる〈Amiri〉は、3日目の最終枠として開催。本拠地であるハリウッドおよびロサンゼルスにオマージュを捧げた2025年秋冬コレクションでは、メンズに加えてウィメンズウェアも披露された。60年代~70年代のLAをモチーフにしたクラシカルなピースは、型押しのレザーからベルベットまでさまざまな素材を用いたテーラリングが軸。ブラウンやバーガンディなど深みのあるカラーリング、煌めくクリスタルの装飾がレザージャケットやニットウェアを彩った。刺繍やジャガードの柄は、ハリウッドのアイコニックなスポットである『グローマンズ・チャイニーズ・シアター』や『Formosa Cafe』に着想を得たという。
4日目は〈Junya Watanabe MAN(ジュンヤ ワタナベ マン)〉からの〈Maison MIHARA YASUHIRO(メゾン ミハラヤスヒロ)〉〈DIOR(ディオール)〉〈COMME des GARÇONS Homme Plus(コム デ ギャルソン・オム プリュス)〉〈KENZO(ケンゾー)〉という満腹コースだ。ワークに全振りした今季の〈Junya Watanabe MAN〉。1897年創業の老舗アウトドアブランド〈Filson(フィルソン)〉とのコラボレーションが主役となり、武骨さを打ち出したショーを展開。また、期待通り〈New Balance(ニューバランス)〉との最新コラボスニーカーや〈New Manual(ニューマニュアル)〉との協業によるブラックデニム、さらにショーには使われなかったが、〈eYe JUNYA WATANABE MAN(アイ ジュンヤ ワタナベ マン)〉と〈Rebuild By Needles(リビルド バイ ニードルズ)〉とのコラボアイテムもあったりする。〈Maison MIHARA YASUHIRO〉は、フランスのラッパー Take A Micがショーの最初から最後までパフォーマンスするという斬新な演出。ウォッシュ加工を施した生地を多用され、上下を逆さにドッキングしたジャケットやウエストを二重にしたパンツ(余剰スペースにフランスパンを差し込んでいるルックもあり)、さらにはイタリアのシューズブランド〈AUTRY(オートリー)〉とのコラボスニーカーなどが登場。続く〈DIOR〉は、後日発表された通り、今季はキム・ジョーンズ(Kim Jones)にとってのラストダンスに。1954年秋冬オートクチュール コレクションの“Hライン”をインスピレーション源とし、同コレクションのムーランルージュコートをメンズウェアに再解釈したオペラコートは、ブラックとピンクの2カラーで製作。トワル ドゥ ジュイの刺繍が施された煌びやかな後者は最終ルックを飾った。ムッシュ ディオールが好んだというリボンを、背面、ベルト、シューズに装飾。目隠し的なマスクとしても使用され、レーザーカットで目元に〈DIOR〉ロゴを入れたものなど複数バリエーションを展開した。“Hライン”が出発点ということで、全体的に丸みのあるデザインが多く、中でもネオプレン技術を用いたレザージャケットは独特のシルエットに。1つ1つのピースもさることながら、ショー全体の熱量の高さに圧倒された。これ以上ない有終の美だったのではないだろうか。7年間にわたってメンズのクリエイティブ ディレクターを務めたキム・ジョーンズ。退任時に「この素晴らしい旅をともにしてくれた私のスタジオとアトリエの皆さんに深く感謝します。彼らは私のクリエイションに命を吹き込んでくれました」とコメントしている通り、メゾンの伝統を重んじ、チームと二人三脚でその歴史を紡いできた。今後の彼の活躍に期待しよう。〈COMME des GARÇONS Homme Plus〉は「To Hell with War(戦争なんかくたばれ)」という力強いタイトルを冠した圧巻のコレクションを披露。ナポレオンジャケットやフィールドジャケットといった軍服を解体・再構築したピースが大半を占め、ヘルメットに花を装飾したヘッドピースなど、メッセージ性の高いものに。まるで中指を立てているかのように、つま先が垂直に反り上がる〈KIDS LOVE GAITE(キッズ ラブ ゲイト)〉とのコラボによるブーツもコレクションの中核を担った。ショーが終わると拍手がしばらく鳴り止まず、筆者も隣の席の見知らぬ男性客と思わず「最高だったな」と話したほどだ。そして4日目の最後は、今季のパリコレ2度目の出陣となるNIGO®️による〈KENZO〉だ。エッフェル塔を一望できる『シャイヨー宮』という絶好のロケーションで開催されたショーでは、生きる伝説 フューチュラ(Futura)を招聘。彼のアトムモチーフと〈KENZO〉を象徴するボケの花を組み合わせたオリジナルデザインを、トラックスーツ、ニードルパンチ加工のワークウェア、デニムアイテムなどに採用した。また来場したフューチュラ本人にも着ていたシアリング素材のバーシティジャケットには、彼のデザインによる〈KENZO〉ロゴが刺繍されていた。
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5日目も〈Kiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)〉〈White Mountaineering(ホワイト マウンテニアリング)〉〈Hermès(エルメス)〉〈Y-3(ワイスリー)〉〈kolor(カラー)〉〈KidSuper(キッドスーパー)〉と、〈Loewe(ロエベ)〉不在は寂しいが十二分に盛りだくさんな1日に。落ち葉を敷き詰めた会場で開催された〈Kiko Kostadinov〉は、ハンガリーやブルガリアの伝統的クラフトや軍服をモチーフとしたピースが多く登場。中でもブルガリア軍のカモフラ柄をトーナルフロック加工で落とし込み、それを削ることで光沢を出したというウールコートはインパクト大。アシンメトリーなデザインはコレクションを通じて展開され、オーバーサイズのレザーベルトや〈ASICS(アシックス)〉との新作コラボなど、細部まで注目ポイントの多い内容に。ヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)手掛ける〈Hermès〉は、安定の◎。「時を生きる。くつろぎを求めるように服に袖を通し、温かく迎えられるように服をまとって」を掲げた今シーズン。ハイネック/タートルネックのニット、カシミアのバラクラバが多くのルックで見られ、取り外しできるブランケットのライニングを備えたアウター、ライダース調のレザートレンチ、光沢感のあるコーティングが特徴のダッフルコートなどなど、目が離せない。カラーパレットは、チャコールグレー、クロームグリーン、ブロンズなどの落ち着いた色味を基調に、バニラやブラッドオレンジの差し色が。〈Y-3〉のプレゼンテーションには、モータースポーツをテーマとした〈NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)〉とのコラボピースが計5ルックで登場。これらのレザーアイテムには、“Y-3-N”のグラフィックやDeath Spray Customによるアートワークが施され、一際存在感を放っていた。続く〈kolor〉では、会場入り口で「T-shirt and Letter」と記されたシルバーの包みが渡され、ショー前に開封するように告げられる。中には、60歳を迎えるデザイナー 阿部潤一が、今季限りでの”定年退職”をアナウンスするメッセージカードと過去現在未来を表すような「Was Is Will」というグラフィックをプリントしたTシャツが。ラストを感じさせるキムとは対照的に〈kolor〉はいつも通り。淡々と締めくくる阿部潤一の姿が印象的で、ショー終了後には、堀内太郎の新デザイナー就任を発表する対談動画が公開された。阿部さん、20年間お疲れ様でした。シアトリカルなランウェイで知られる〈KidSuper〉の今季は、アーティストのダニエル・ワーツェル(Daniel Wurtzel)とタッグを組んだファッション x パフォーマンスアートという、どのブランドとも一線を画すユニークな演出。その中で〈BAPE®️(ベイプ)〉〈WILDSIDE Yohji Yamamoto(ワイルドサイド ヨウジヤマモト)〉とそれぞれタッグを組んだコラボカプセルがお披露目された。
最終日となる6日目は〈sacai(サカイ)〉〈doublet(ダブレット)〉〈Post Archive Faction (PAF)(ポスト アーカイブ ファクション)〉という流れ。予定していた〈TAAKK(ターク)〉は諸事情により欠席させていただきました。関係者の皆様申し訳ございません。デザイナー/クリエイティブディレクター 阿部千登勢の手掛ける〈sacai〉は、実質パリコレ・メンズの大トリと言えるだろう。毎シーズン期待を裏切らない内容であるが、今季は過去数年でも1、2を争うと感じたのは筆者だけではないだろう。映画『Where the wild things are / かいじゅうたちのいるところ』が着想源になったという本コレクション。ルック冒頭から多用されたユニークな形状のニットファー、未加工の襟元が目を引くジャケット、両脚に配置されたオーバーサイズのポケットによってシルエットが変形したパンツなどが登場し、〈Carhartt WIP(カーハート WIP)〉との3度目のコラボレーションでは、ダック地にニットやダウンをドッキングしたジャケット、さらにはレザーピースも。自然がキーワードとなっているので、コレクションを通じて深みのあるブラウンやグリーンの配色を採用。〈UGG(アグ)〉とのコラボフットウェアも良い意味で可愛すぎる仕上がりで、リリース時には争奪戦となることが予想される。〈doublet〉はコレクションテーマに“Villan(ヴィラン)”を掲げ、世の中に溢れる“欠陥”や“悪”にフォーカス。捻じ曲がったラインのデニム、悪の象徴?的なお札をモチーフにしたバッグ、ランダムなパッチワークが面白いレザージャケット&パンツ、ドローコードに蛇を用いたフーディ、制服調のデザインを採用したボアジャケット、つま先が口元のように開いている個性的なシューズが登場。プレゼンテーションという形で実施されたドンジュン・リム(Dongjoon Lim)の〈Post Archive Faction (PAF)〉2025年秋冬コレクションは、最新ピースを纏ったモデルたちが床に置かれたベッドの上で寝ているというユニークな演出(中には本当に寝ている人もいた)。筆者は時間に間に合わなかったが、1度だけ行われたランウェイでは、モデルが次のモデルを起こして1周するという、これまた面白い内容に。「FUTURE PAST PRESENT」というスローガンは、アーカイブを目覚めさせ、未来の夢と融合し、現在に息吹を吹き込むという意味合いとのこと。また、昨年人気を博した〈On(オン)〉との最新コラボスニーカーもお披露目された。
渡仏前はややトピックが乏しいかと思いきや、蓋を開けてみれば、ファレル・ウィリアムス x NIGO®️に始まり、キム・ジョーンズと阿部潤一の退任など、熱狂と寂しさが入り混じる話題に事欠かないシーズンとなった。さらには先述した〈DIOR〉〈COMME des GARÇONS Homme Plus〉〈Hermès〉のように、来場者を魅了し、終了後のスタンディングオベーションが止まない素晴らしいショーがいつも以上に多かった印象だ。ファッションウィークを通じて、トレンドというトレンドは見受けられず、各々のブランドがそれぞれの持ち味を発揮したと言えるだろう。
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去る1月21~26日(現地時間)に開催された2025年秋冬シーズンのパリ・ファッションウィーク・メンズ。例年、冬のおパリは、東京とは次元の違う寒さに打ちのめされるので、アウターを重ね着するなどの対策をしてきた。今年も戦々恐々と現地に乗り込んだが、1週間を通して「ん、あまり寒くないぞ(東京と同じレベル)」。しかし侮るなかれ、来る日も来る日も雨のち雨……。パリは渋滞が半端なく、徒歩や自転車移動が多くなるので、雨は寒いより辛い(うざい)。もはやパリでしか穿く機会のなくなった筆者の極厚レザーパンツの出番もほぼなかった。
花の都の天候事情はさておき、パリコレメンズ初日といえば、泣く子も黙る〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉だろう。今季はファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)とNIGO®️(ニゴー)大先生のコラボレーションが予告されていたため、これまでにも増して業界内外の関心を集めたが、結果的に〈Louis Vuitton〉で打ち出してきたファレル色は薄め。2000年代初頭を彷彿させるピースの数々など、両者の歴史を紐解き、昇華させたような内容だった(詳細はこちらから)。メインストリームの観点から見たストリートウェアの始祖の1人であるNIGO®️と〈Louis Vuitton〉のコラボは、今回で2度目だが、ある意味これが“真のラグジュアリーストリート”なのかもしれない。時代的にストリートは逆風と言えるが、本コレクションは今後の指針となり得るのか注目したい。
ファレル就任以降は〈Louis Vuitton〉のおかげで初日がハイライトになることも多いが、その前の枠で行われた〈AURALEE(オーラリー)〉を今季の本命に推したい。デザイナー 岩井良太の友人の着こなしがインスピレーション源になったという本コレクション。「ある日には洗練されたスーツを着こなし、また別の日には着古したTシャツを着ていました。どちらも違和感なく、彼らしさを放っていました。彼の飾らない個性に心を打たれたのです。お気に入りの古いTシャツが、ラグジュアリーなカシミアコートと同じくらい重要な意味を持つような、過去と現在が調和して未来の大切な宝物へと繋がる、新しい価値観を提案しています」と語る岩井氏。右も左もロゴものだらけという時代から貫いてきたミニマリズムは、トレンドに踊らされず続けてきたからこそ、より力強いものに。今季のキーとなったヴィンテージ調のピース。加工をやり過ぎるブランドが散見される中、綺麗目に仕上げるあたりは〈AURALEE〉らしい。着古して縮んだかのようなサイズ感のアイテムをインナーに、ダブルブレストコートやオーバーコートなどを合わせたスタイリングも秀逸だ。各アウターは、過去にも展開していたレザーやムートンを使った異素材カラーが特徴的。カラーリングは、ワークぽさを感じさせるブラウン系やオリーブ系を中心に、ブランドらしい明るめのカラーが随所に差し込まれた。時代が〈AURALEE〉に追いついたのか、いま店頭に並んでいたら飛ぶように売れそう……。
2日目は、こちらもお決まりの朝一〈LEMAIRE(ルメール)〉。ブランドのHQで開催されるショーは、その優雅さから慌ただしいファッションウィーク期間中に最もパリを感じるひと時な気がする。序盤に登場した長めのジップカラーにバラクラバを縫い付けたニットなど、ディテールが目を引く。いつも通り流麗なシルエットのアウターは、大振りのカラーが多かったのも特徴だろう。レイヤードで魅せるスタイリングは、ウォッシュをかけたブラックデニムに、薄いグレーのシャツやオーバーコートなど、同系色でまとめたルックが個人的には好みだった。3日目は〈HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE(オム プリッセ イッセイミヤケ)〉に代わり、パリコレ初参戦となる〈IM MEN(アイム メン)〉に始まり、〈Rick Owens(リック・オウエンス)〉〈Yohji Yamamoto POUR HOMME(ヨウジヤマモト プールオム)〉、トリに移動した〈Amiri(アミリ)〉。過去数シーズンにわたって、ぶっ飛んだショーを行ってきた〈Rick Owens〉だが、今回ランウェイ自体はストレートな表現に回帰した。リックが“ドラキュラカラー”と呼ぶ襟元がポイントのコートやジャケットはベジタブルタンニングされたカーフレザーで製作。ジッパーとハーネスのディテールが印象的なコート類は、ドイツの実験的バンド アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン(Einstürzende Neubauten)のブリクサ・バーゲルト(Blixa Bargeld)に敬意を表してたものだという。〈Rick Owens〉といえば奇抜なフットウェアが話題になることも多いが、今季は羽根のような大量のフリンジが取り付けられたブーツが強烈なインパクトを放っていた。〈Yohji Yamamoto POUR HOMME〉は、ブランドとしてはかなり珍しい中綿を多用。コートやシャツ、さらにはパンツまで薄手のダウン系のルックが続く。ゆったりと歩くモデル同士が、ランウェイでアイテムを交換するなどユニークな演出も観客を惹きつけた。多くのLAブランドが2~3年で消えてしまった中、同カテゴリーの出世頭として年々規模感を増すマイク・アミリ(Mike Amiri)率いる〈Amiri〉は、3日目の最終枠として開催。本拠地であるハリウッドおよびロサンゼルスにオマージュを捧げた2025年秋冬コレクションでは、メンズに加えてウィメンズウェアも披露された。60年代~70年代のLAをモチーフにしたクラシカルなピースは、型押しのレザーからベルベットまでさまざまな素材を用いたテーラリングが軸。ブラウンやバーガンディなど深みのあるカラーリング、煌めくクリスタルの装飾がレザージャケットやニットウェアを彩った。刺繍やジャガードの柄は、ハリウッドのアイコニックなスポットである『グローマンズ・チャイニーズ・シアター』や『Formosa Cafe』に着想を得たという。
4日目は〈Junya Watanabe MAN(ジュンヤ ワタナベ マン)〉からの〈Maison MIHARA YASUHIRO(メゾン ミハラヤスヒロ)〉〈DIOR(ディオール)〉〈COMME des GARÇONS Homme Plus(コム デ ギャルソン・オム プリュス)〉〈KENZO(ケンゾー)〉という満腹コースだ。ワークに全振りした今季の〈Junya Watanabe MAN〉。1897年創業の老舗アウトドアブランド〈Filson(フィルソン)〉とのコラボレーションが主役となり、武骨さを打ち出したショーを展開。また、期待通り〈New Balance(ニューバランス)〉との最新コラボスニーカーや〈New Manual(ニューマニュアル)〉との協業によるブラックデニム、さらにショーには使われなかったが、〈eYe JUNYA WATANABE MAN(アイ ジュンヤ ワタナベ マン)〉と〈Rebuild By Needles(リビルド バイ ニードルズ)〉とのコラボアイテムもあったりする。〈Maison MIHARA YASUHIRO〉は、フランスのラッパー Take A Micがショーの最初から最後までパフォーマンスするという斬新な演出。ウォッシュ加工を施した生地を多用され、上下を逆さにドッキングしたジャケットやウエストを二重にしたパンツ(余剰スペースにフランスパンを差し込んでいるルックもあり)、さらにはイタリアのシューズブランド〈AUTRY(オートリー)〉とのコラボスニーカーなどが登場。続く〈DIOR〉は、後日発表された通り、今季はキム・ジョーンズ(Kim Jones)にとってのラストダンスに。1954年秋冬オートクチュール コレクションの“Hライン”をインスピレーション源とし、同コレクションのムーランルージュコートをメンズウェアに再解釈したオペラコートは、ブラックとピンクの2カラーで製作。トワル ドゥ ジュイの刺繍が施された煌びやかな後者は最終ルックを飾った。ムッシュ ディオールが好んだというリボンを、背面、ベルト、シューズに装飾。目隠し的なマスクとしても使用され、レーザーカットで目元に〈DIOR〉ロゴを入れたものなど複数バリエーションを展開した。“Hライン”が出発点ということで、全体的に丸みのあるデザインが多く、中でもネオプレン技術を用いたレザージャケットは独特のシルエットに。1つ1つのピースもさることながら、ショー全体の熱量の高さに圧倒された。これ以上ない有終の美だったのではないだろうか。7年間にわたってメンズのクリエイティブ ディレクターを務めたキム・ジョーンズ。退任時に「この素晴らしい旅をともにしてくれた私のスタジオとアトリエの皆さんに深く感謝します。彼らは私のクリエイションに命を吹き込んでくれました」とコメントしている通り、メゾンの伝統を重んじ、チームと二人三脚でその歴史を紡いできた。今後の彼の活躍に期待しよう。〈COMME des GARÇONS Homme Plus〉は「To Hell with War(戦争なんかくたばれ)」という力強いタイトルを冠した圧巻のコレクションを披露。ナポレオンジャケットやフィールドジャケットといった軍服を解体・再構築したピースが大半を占め、ヘルメットに花を装飾したヘッドピースなど、メッセージ性の高いものに。まるで中指を立てているかのように、つま先が垂直に反り上がる〈KIDS LOVE GAITE(キッズ ラブ ゲイト)〉とのコラボによるブーツもコレクションの中核を担った。ショーが終わると拍手がしばらく鳴り止まず、筆者も隣の席の見知らぬ男性客と思わず「最高だったな」と話したほどだ。そして4日目の最後は、今季のパリコレ2度目の出陣となるNIGO®️による〈KENZO〉だ。エッフェル塔を一望できる『シャイヨー宮』という絶好のロケーションで開催されたショーでは、生きる伝説 フューチュラ(Futura)を招聘。彼のアトムモチーフと〈KENZO〉を象徴するボケの花を組み合わせたオリジナルデザインを、トラックスーツ、ニードルパンチ加工のワークウェア、デニムアイテムなどに採用した。また来場したフューチュラ本人にも着ていたシアリング素材のバーシティジャケットには、彼のデザインによる〈KENZO〉ロゴが刺繍されていた。
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5日目も〈Kiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)〉〈White Mountaineering(ホワイト マウンテニアリング)〉〈Hermès(エルメス)〉〈Y-3(ワイスリー)〉〈kolor(カラー)〉〈KidSuper(キッドスーパー)〉と、〈Loewe(ロエベ)〉不在は寂しいが十二分に盛りだくさんな1日に。落ち葉を敷き詰めた会場で開催された〈Kiko Kostadinov〉は、ハンガリーやブルガリアの伝統的クラフトや軍服をモチーフとしたピースが多く登場。中でもブルガリア軍のカモフラ柄をトーナルフロック加工で落とし込み、それを削ることで光沢を出したというウールコートはインパクト大。アシンメトリーなデザインはコレクションを通じて展開され、オーバーサイズのレザーベルトや〈ASICS(アシックス)〉との新作コラボなど、細部まで注目ポイントの多い内容に。ヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)手掛ける〈Hermès〉は、安定の◎。「時を生きる。くつろぎを求めるように服に袖を通し、温かく迎えられるように服をまとって」を掲げた今シーズン。ハイネック/タートルネックのニット、カシミアのバラクラバが多くのルックで見られ、取り外しできるブランケットのライニングを備えたアウター、ライダース調のレザートレンチ、光沢感のあるコーティングが特徴のダッフルコートなどなど、目が離せない。カラーパレットは、チャコールグレー、クロームグリーン、ブロンズなどの落ち着いた色味を基調に、バニラやブラッドオレンジの差し色が。〈Y-3〉のプレゼンテーションには、モータースポーツをテーマとした〈NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)〉とのコラボピースが計5ルックで登場。これらのレザーアイテムには、“Y-3-N”のグラフィックやDeath Spray Customによるアートワークが施され、一際存在感を放っていた。続く〈kolor〉では、会場入り口で「T-shirt and Letter」と記されたシルバーの包みが渡され、ショー前に開封するように告げられる。中には、60歳を迎えるデザイナー 阿部潤一が、今季限りでの”定年退職”をアナウンスするメッセージカードと過去現在未来を表すような「Was Is Will」というグラフィックをプリントしたTシャツが。ラストを感じさせるキムとは対照的に〈kolor〉はいつも通り。淡々と締めくくる阿部潤一の姿が印象的で、ショー終了後には、堀内太郎の新デザイナー就任を発表する対談動画が公開された。阿部さん、20年間お疲れ様でした。シアトリカルなランウェイで知られる〈KidSuper〉の今季は、アーティストのダニエル・ワーツェル(Daniel Wurtzel)とタッグを組んだファッション x パフォーマンスアートという、どのブランドとも一線を画すユニークな演出。その中で〈BAPE®️(ベイプ)〉〈WILDSIDE Yohji Yamamoto(ワイルドサイド ヨウジヤマモト)〉とそれぞれタッグを組んだコラボカプセルがお披露目された。
最終日となる6日目は〈sacai(サカイ)〉〈doublet(ダブレット)〉〈Post Archive Faction (PAF)(ポスト アーカイブ ファクション)〉という流れ。予定していた〈TAAKK(ターク)〉は諸事情により欠席させていただきました。関係者の皆様申し訳ございません。デザイナー/クリエイティブディレクター 阿部千登勢の手掛ける〈sacai〉は、実質パリコレ・メンズの大トリと言えるだろう。毎シーズン期待を裏切らない内容であるが、今季は過去数年でも1、2を争うと感じたのは筆者だけではないだろう。映画『Where the wild things are / かいじゅうたちのいるところ』が着想源になったという本コレクション。ルック冒頭から多用されたユニークな形状のニットファー、未加工の襟元が目を引くジャケット、両脚に配置されたオーバーサイズのポケットによってシルエットが変形したパンツなどが登場し、〈Carhartt WIP(カーハート WIP)〉との3度目のコラボレーションでは、ダック地にニットやダウンをドッキングしたジャケット、さらにはレザーピースも。自然がキーワードとなっているので、コレクションを通じて深みのあるブラウンやグリーンの配色を採用。〈UGG(アグ)〉とのコラボフットウェアも良い意味で可愛すぎる仕上がりで、リリース時には争奪戦となることが予想される。〈doublet〉はコレクションテーマに“Villan(ヴィラン)”を掲げ、世の中に溢れる“欠陥”や“悪”にフォーカス。捻じ曲がったラインのデニム、悪の象徴?的なお札をモチーフにしたバッグ、ランダムなパッチワークが面白いレザージャケット&パンツ、ドローコードに蛇を用いたフーディ、制服調のデザインを採用したボアジャケット、つま先が口元のように開いている個性的なシューズが登場。プレゼンテーションという形で実施されたドンジュン・リム(Dongjoon Lim)の〈Post Archive Faction (PAF)〉2025年秋冬コレクションは、最新ピースを纏ったモデルたちが床に置かれたベッドの上で寝ているというユニークな演出(中には本当に寝ている人もいた)。筆者は時間に間に合わなかったが、1度だけ行われたランウェイでは、モデルが次のモデルを起こして1周するという、これまた面白い内容に。「FUTURE PAST PRESENT」というスローガンは、アーカイブを目覚めさせ、未来の夢と融合し、現在に息吹を吹き込むという意味合いとのこと。また、昨年人気を博した〈On(オン)〉との最新コラボスニーカーもお披露目された。
渡仏前はややトピックが乏しいかと思いきや、蓋を開けてみれば、ファレル・ウィリアムス x NIGO®️に始まり、キム・ジョーンズと阿部潤一の退任など、熱狂と寂しさが入り混じる話題に事欠かないシーズンとなった。さらには先述した〈DIOR〉〈COMME des GARÇONS Homme Plus〉〈Hermès〉のように、来場者を魅了し、終了後のスタンディングオベーションが止まない素晴らしいショーがいつも以上に多かった印象だ。ファッションウィークを通じて、トレンドというトレンドは見受けられず、各々のブランドがそれぞれの持ち味を発揮したと言えるだろう。
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