Rewrite
カリブ海の北東部に浮かぶアメリカ領の島、プエルトリコ。日本では残念ながら馴染みが薄く、かろうじてMLB選手の輩出国というイメージがある程度かもしれない。だが実は、“世界で最もストリーミング再生されたアーティスト”の座に3年連続(2020〜2022年)で輝いたラテン・トラップの牽引者 バッド・バニー(Bad Bunny)をはじめ、ラテン音楽界の重鎮ギタリスト/シンガー ホセ・フェリシアーノ(José Feliciano)、郷ひろみが“GOLDFINGER’99”としてカバーした楽曲 “Livin’ La Vida Loca”で知られるリッキー・マーティン(Ricky Martin)、ラテン・ポップ界の歌姫 ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、1990年代のイースト・コースト・ヒップホップを代表するラッパーの1人 ファット・ジョー(Fat Joe)らは、いずれもプエルトリコにルーツがある。そう、同地は世界有数の“音楽的名産地”なのだ。
そして、この独自の豊かな土壌を持つプエルトリコのラテン音楽シーンで、いま最も重要な存在がシンガー・ソングライターのラウ・アレハンドロ(Rauw Alejandro)である。ピンときていない方々のために噛み砕いて説明すると、現在31歳のラウはプエルトリコの首都サン・フアンで生まれ、両親がミュージシャンという音楽一家に育ち、2014年より本格的に音楽活動を開始。わずか数年でラテン音楽シーンの期待株として注目を集めると、2021年にリリースした2ndアルバム『Vice Versa』が、“ラテンポップやレゲトンシーンに革命を起こした傑作”と各所で大絶賛され一躍時の人に。また、数字が全てではないが『Spotify(スポティファイ)』における2024年11月の月間リスナー数はタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)とほぼ同数の4,500万人超えで、『Instagram(インスタグラム)』でも約2,000万フォロワーを抱える、紛れもない俊英だ。
去る10月中旬、そんなラウが日本コカ・コーラ主催のライブイベント「Coke STUDIOライブ 2024」に出演するため来日を果たした。そこで、事前に彼が“無類のラーメン好き”という情報を耳にしていた『Hypebeast』編集部は、元フレンチの巨匠・松村康史が営む東銀座の名店ラーメン屋『八五』に協力を仰ぎ、店内にてスペシャルインタビューを実施。ラウと松村氏の緊急対談から始まり、地元プエルトリコとラーメンへの熱い想い、ジャパノファイル(親日家)な側面、先週リリースした最新アルバムについてまで、彼の人柄が垣間見えるレイドバックな問答の様子をお届けする。
自分の家で全ての食材をそろえてラーメンを作りたいし、ラーメン屋を開くのが夢
Hypebeast:今日は、八五でのインタビューということで、まずはお話を伺う前にラーメンを召し上がっていただければと思います。
ラウ・アレハンドロ(以下、ラウ):ありがとう! ラーメンが世界で一番好きな食べ物で、今日はマスター(松村氏)の作る1杯を心から堪能したくて、朝から何も食べていないんだ(笑)。ただ、インタビューの前にマスターと話したいんだけど、いいかな?
もちろんです!
ラウ:マスター、ラーメンは日本発祥の食べ物なんですか?
松村靖(以下、松村):発祥自体は中国なんですが、100年ほど前から日本でオリジナリティのある日本式中華料理として発展したんですよ。
ラウ:そうだったんですね! マスターはいつから料理の世界に?
松村:料理人としては47年目で、ラーメンはまだ10年。その前は、36年ほどフレンチの道を歩んでいました。
ラウ:そのような経歴であれば、世界中のどの料理も作ることができそうですね。(ここでラーメンが提供される)あぁ、待望の瞬間が来ました……! 信じられないくらい美味しそうですね……! 僕もこんなラーメンを作りたいんですが、習得するまでにはどれくらいの修行が必要ですか?
松村:簡単なラーメンでしたら数日の修行で作ることができると思いますが、うちの“中華そば”はスープの仕上げだけで前日に6時間、当日に2時間かかっていますね。
ラウ:そんなにかかるんですか……。どれだけ高額でもいいので、この秘伝のスープの作り方を教えてほしいです(笑)。僕は自分の家で全ての食材をそろえてラーメンを作りたいし、ラーメン屋を開くのが夢なので、プエルトリコに教えに来ていただけませんか?
松村:それなら、2週間ほど教えに行きましょうか?
ラウ:2週間でこのラーメンが作れるようになるなら、本当にお願いしたいです! 無事にお店を出して、もし「美味しい」と言ってもらえることがあれば、マスターのお墨付きになりますしね。それか、2026年に6カ月ほど日本に住もうと思っているので、その時に“マスターコース”を開いてくだされば絶対に受講します。指導を仰ぐ様子を密着してもらって、YouTubeにアップさせてください(笑)。
結局、音楽は言語よりも感情なんだ
ラーメンを食べ終え、率直に八五はいかがでしたか?
ラウ:想像以上で、この後ダンスのリハーサルがあるから“味玉中華そば”だけの予定だったけど、我慢できずに“ラビオリグルマンディーズ中華そば”までおかわりしてしまったよ(笑)。
「ラーメンが世界で一番好きな食べ物」とおっしゃっていましたもんね。
小さい頃、NARUTOのアニメを観て育ったんだけど、作中でラーメンを食べるシーンがよくあるから、日本で美味しいラーメンを食べることが憧れだったんだ。
なるほど!いま、あなたの口からNARUTOのワードが出てきたことにビックリです。
吹き替え版だけど、プエルトリコでも日本のアニメは流行っているからね。あまりにも多くの作品を観てきたから、日本のアニメを自分の頭の中から切り離すことはできないよ。
お気に入りを挙げるとするなら?
犬夜叉、ワンパンマン、進撃の巨人、ワンピース、HUNTERxHUNTER、ドラゴンボール、ポケモン、遊☆戯☆王、鬼滅の刃、新世紀エヴァンゲリオンとか、クラシックから最新まで数え切れないほどあるね。キャラクターだとるろうに剣心の緋村剣心が好きで、右腕のひじ先には彼のイラストのタトゥーを彫っているよ。
そもそも今回の来日は、Coke STUDIOライブ 2024への出演のためですが、何日間の滞在で、他に何をされましたか?
今回が4度目の来日なんだけど、滞在は11日間だね。母親と妹も連れてきて、東京や京都のお気に入りスポットを案内したよ。なんてったって、僕は自分のことを日本在住のプエルトリコ人だと思っているからね(笑)。
そういえば、9月に発売されたCrocsとのコラボモデル LAS SENSEIのキャンペーンビジュアルも東京で撮影していましたよね。
そうそう! LAS SENSEIは日本の下駄が着想源で、Crocsのオリジナルのシルエットを保ちつつ少し厚底にアップデートして、アッパーに鼻緒のような紐を走らせたデザインにしたんだ。だから、日本へのリスペクトの気持ちも込めて、東京でキャンペーンビジュアルを撮影したのさ。
ファッションというと、今日はカプリシャツでキメられていますが、普段のスタイルでこだわりはありますか?
音楽とファッションの関係は密接で、自分をどう伝えたいか、どう見せたいか。実は、僕のファッションはアルバムのコンセプトに準じていて、11月15日にリリースした5thアルバム Cosa Nuestraが1970年代風のクラシックな内容だから、今年はクラシックかつエレガントなスタイルにしているんだ。要するに、アルバムがリリースされるたびにファンは別のラウ・アレハンドロが楽しめるのさ。
アルバムごとにファッションスタイルを変更する考えは、初めて耳にしました。
本当? ベースのラウ・アレハンドロは、家の中でサンダルとショートパンツのラフな格好なんだけどね(笑)。だから、家を出る時に着る洋服は、ユニフォームのような感覚に近いかもしれない。
先ほど話に上がった5thアルバム Cosa Nuestraについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
ルーツであるプエルトリコの音楽に立ち返り、母国の豊かな文化にインスパイアを受けた作品で、なおかつ祖父母のようにアメリカ・ニューヨークへ渡った移民の背景とヨーロッパ文化の要素も融合しているね。サウンドとしては、アコースティックでオーガニックなものと、現代的でエレクトロニックなものをミックスしていて、これまでのキャリアの中で最高傑作と言える1枚だと思っているよ。
制作面で意識的に取り組んだことはありますか?
今回だけではなくて全てに言えることだけど、同じような音楽を繰り返し制作することが嫌いだから、ファンが気に入ってくれている自分らしいエッセンスは残しつつ、新しいサウンドを常に探求しているね。だから、どのアルバムも似ていないんだ。僕がアーティストとして成功できた秘訣、それは“リスクを取ること”。ファンに「前作から雰囲気が変わったね」などと言われることを恐れるアーティストもいるけれど、僕は自ら危険に飛び込むのさ。
また、先日リリースされたMILLENNIUM PARADEの新曲 KIZAOに、ラテンポップシーンの人気プロデューサーで友人のタイニーと共に参加されていましたが、この経緯を教えていただけますか?
プエルトリコのアーティストである自分の音楽を世界に、特にアジアにもっと広めたくて、アジアのアーティストとの楽曲制作は長年の夢だったんだ。とはいえアジアは広いから、日本という大好きな国のアーティストとコラボしたい気持ちが強かった。そんなある日、ダイキ(常田大希)と知り合ったんだけど、彼も「アメリカ大陸に自分の音楽を広めたい」と、僕と同じように模索していたんだ。だから自然と友だちになり、その後、タイニーも加わってKIZAOを制作することになったのさ。異なる大陸で生まれた2人が出逢い、共鳴し、一緒に楽曲を制作するなんて、音楽の美しき魅力そのものだよ。
今年の3月には、King Gnuの札幌ドーム公演を観に行っていましたよね。
ちょうどダイキと「何かやろう」と話していた頃で、彼のライブを観たことがなかったから招待してもらったんだ。超巨大な会場で数万人が熱狂する様子を目の当たりにして、改めて彼が日本でどれだけ人気のあるアーティストかを知ることができたよ。世界は、日本人アーティストのクオリティーの高さをもっと知るべきだと思うね。
もしかすると、日本語が障壁になっているかもしれません。
僕は国によっては障壁になる母国語のスペイン語と英語を、ダイキも日本語と英語を混ぜて歌っているように、世界は言語でアーティストの限界領域を定めるべきじゃないんだ。結局、音楽は言語よりも感情なんだから。
ありがとうございます! 最後に、あなたが思うプエルトリコや首都サン・フアンの魅力を教えてください。
東京は世界最大級の都市だけど、プエルトリコは国自体が大きくないから(四国の半分ほどの国土面積)、サン・フアンもとても小さいんだ。街中にスペインの植民地時代に建てられたヨーロッパ風の建築物が残っていながら、山間部には先住民やアフリカの文化が残っている不思議な国だよ。8時間もあれば、プエルトリコの観光地は全て回れるかな。よかったら遊びにおいで!
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カリブ海の北東部に浮かぶアメリカ領の島、プエルトリコ。日本では残念ながら馴染みが薄く、かろうじてMLB選手の輩出国というイメージがある程度かもしれない。だが実は、“世界で最もストリーミング再生されたアーティスト”の座に3年連続(2020〜2022年)で輝いたラテン・トラップの牽引者 バッド・バニー(Bad Bunny)をはじめ、ラテン音楽界の重鎮ギタリスト/シンガー ホセ・フェリシアーノ(José Feliciano)、郷ひろみが“GOLDFINGER’99”としてカバーした楽曲 “Livin’ La Vida Loca”で知られるリッキー・マーティン(Ricky Martin)、ラテン・ポップ界の歌姫 ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、1990年代のイースト・コースト・ヒップホップを代表するラッパーの1人 ファット・ジョー(Fat Joe)らは、いずれもプエルトリコにルーツがある。そう、同地は世界有数の“音楽的名産地”なのだ。
そして、この独自の豊かな土壌を持つプエルトリコのラテン音楽シーンで、いま最も重要な存在がシンガー・ソングライターのラウ・アレハンドロ(Rauw Alejandro)である。ピンときていない方々のために噛み砕いて説明すると、現在31歳のラウはプエルトリコの首都サン・フアンで生まれ、両親がミュージシャンという音楽一家に育ち、2014年より本格的に音楽活動を開始。わずか数年でラテン音楽シーンの期待株として注目を集めると、2021年にリリースした2ndアルバム『Vice Versa』が、“ラテンポップやレゲトンシーンに革命を起こした傑作”と各所で大絶賛され一躍時の人に。また、数字が全てではないが『Spotify(スポティファイ)』における2024年11月の月間リスナー数はタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)とほぼ同数の4,500万人超えで、『Instagram(インスタグラム)』でも約2,000万フォロワーを抱える、紛れもない俊英だ。
去る10月中旬、そんなラウが日本コカ・コーラ主催のライブイベント「Coke STUDIOライブ 2024」に出演するため来日を果たした。そこで、事前に彼が“無類のラーメン好き”という情報を耳にしていた『Hypebeast』編集部は、元フレンチの巨匠・松村康史が営む東銀座の名店ラーメン屋『八五』に協力を仰ぎ、店内にてスペシャルインタビューを実施。ラウと松村氏の緊急対談から始まり、地元プエルトリコとラーメンへの熱い想い、ジャパノファイル(親日家)な側面、先週リリースした最新アルバムについてまで、彼の人柄が垣間見えるレイドバックな問答の様子をお届けする。
自分の家で全ての食材をそろえてラーメンを作りたいし、ラーメン屋を開くのが夢
Hypebeast:今日は、八五でのインタビューということで、まずはお話を伺う前にラーメンを召し上がっていただければと思います。
ラウ・アレハンドロ(以下、ラウ):ありがとう! ラーメンが世界で一番好きな食べ物で、今日はマスター(松村氏)の作る1杯を心から堪能したくて、朝から何も食べていないんだ(笑)。ただ、インタビューの前にマスターと話したいんだけど、いいかな?
もちろんです!
ラウ:マスター、ラーメンは日本発祥の食べ物なんですか?
松村靖(以下、松村):発祥自体は中国なんですが、100年ほど前から日本でオリジナリティのある日本式中華料理として発展したんですよ。
ラウ:そうだったんですね! マスターはいつから料理の世界に?
松村:料理人としては47年目で、ラーメンはまだ10年。その前は、36年ほどフレンチの道を歩んでいました。
ラウ:そのような経歴であれば、世界中のどの料理も作ることができそうですね。(ここでラーメンが提供される)あぁ、待望の瞬間が来ました……! 信じられないくらい美味しそうですね……! 僕もこんなラーメンを作りたいんですが、習得するまでにはどれくらいの修行が必要ですか?
松村:簡単なラーメンでしたら数日の修行で作ることができると思いますが、うちの“中華そば”はスープの仕上げだけで前日に6時間、当日に2時間かかっていますね。
ラウ:そんなにかかるんですか……。どれだけ高額でもいいので、この秘伝のスープの作り方を教えてほしいです(笑)。僕は自分の家で全ての食材をそろえてラーメンを作りたいし、ラーメン屋を開くのが夢なので、プエルトリコに教えに来ていただけませんか?
松村:それなら、2週間ほど教えに行きましょうか?
ラウ:2週間でこのラーメンが作れるようになるなら、本当にお願いしたいです! 無事にお店を出して、もし「美味しい」と言ってもらえることがあれば、マスターのお墨付きになりますしね。それか、2026年に6カ月ほど日本に住もうと思っているので、その時に“マスターコース”を開いてくだされば絶対に受講します。指導を仰ぐ様子を密着してもらって、YouTubeにアップさせてください(笑)。
結局、音楽は言語よりも感情なんだ
ラーメンを食べ終え、率直に八五はいかがでしたか?
ラウ:想像以上で、この後ダンスのリハーサルがあるから“味玉中華そば”だけの予定だったけど、我慢できずに“ラビオリグルマンディーズ中華そば”までおかわりしてしまったよ(笑)。
「ラーメンが世界で一番好きな食べ物」とおっしゃっていましたもんね。
小さい頃、NARUTOのアニメを観て育ったんだけど、作中でラーメンを食べるシーンがよくあるから、日本で美味しいラーメンを食べることが憧れだったんだ。
なるほど!いま、あなたの口からNARUTOのワードが出てきたことにビックリです。
吹き替え版だけど、プエルトリコでも日本のアニメは流行っているからね。あまりにも多くの作品を観てきたから、日本のアニメを自分の頭の中から切り離すことはできないよ。
お気に入りを挙げるとするなら?
犬夜叉、ワンパンマン、進撃の巨人、ワンピース、HUNTERxHUNTER、ドラゴンボール、ポケモン、遊☆戯☆王、鬼滅の刃、新世紀エヴァンゲリオンとか、クラシックから最新まで数え切れないほどあるね。キャラクターだとるろうに剣心の緋村剣心が好きで、右腕のひじ先には彼のイラストのタトゥーを彫っているよ。
そもそも今回の来日は、Coke STUDIOライブ 2024への出演のためですが、何日間の滞在で、他に何をされましたか?
今回が4度目の来日なんだけど、滞在は11日間だね。母親と妹も連れてきて、東京や京都のお気に入りスポットを案内したよ。なんてったって、僕は自分のことを日本在住のプエルトリコ人だと思っているからね(笑)。
そういえば、9月に発売されたCrocsとのコラボモデル LAS SENSEIのキャンペーンビジュアルも東京で撮影していましたよね。
そうそう! LAS SENSEIは日本の下駄が着想源で、Crocsのオリジナルのシルエットを保ちつつ少し厚底にアップデートして、アッパーに鼻緒のような紐を走らせたデザインにしたんだ。だから、日本へのリスペクトの気持ちも込めて、東京でキャンペーンビジュアルを撮影したのさ。
ファッションというと、今日はカプリシャツでキメられていますが、普段のスタイルでこだわりはありますか?
音楽とファッションの関係は密接で、自分をどう伝えたいか、どう見せたいか。実は、僕のファッションはアルバムのコンセプトに準じていて、11月15日にリリースした5thアルバム Cosa Nuestraが1970年代風のクラシックな内容だから、今年はクラシックかつエレガントなスタイルにしているんだ。要するに、アルバムがリリースされるたびにファンは別のラウ・アレハンドロが楽しめるのさ。
アルバムごとにファッションスタイルを変更する考えは、初めて耳にしました。
本当? ベースのラウ・アレハンドロは、家の中でサンダルとショートパンツのラフな格好なんだけどね(笑)。だから、家を出る時に着る洋服は、ユニフォームのような感覚に近いかもしれない。
先ほど話に上がった5thアルバム Cosa Nuestraについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
ルーツであるプエルトリコの音楽に立ち返り、母国の豊かな文化にインスパイアを受けた作品で、なおかつ祖父母のようにアメリカ・ニューヨークへ渡った移民の背景とヨーロッパ文化の要素も融合しているね。サウンドとしては、アコースティックでオーガニックなものと、現代的でエレクトロニックなものをミックスしていて、これまでのキャリアの中で最高傑作と言える1枚だと思っているよ。
制作面で意識的に取り組んだことはありますか?
今回だけではなくて全てに言えることだけど、同じような音楽を繰り返し制作することが嫌いだから、ファンが気に入ってくれている自分らしいエッセンスは残しつつ、新しいサウンドを常に探求しているね。だから、どのアルバムも似ていないんだ。僕がアーティストとして成功できた秘訣、それは“リスクを取ること”。ファンに「前作から雰囲気が変わったね」などと言われることを恐れるアーティストもいるけれど、僕は自ら危険に飛び込むのさ。
また、先日リリースされたMILLENNIUM PARADEの新曲 KIZAOに、ラテンポップシーンの人気プロデューサーで友人のタイニーと共に参加されていましたが、この経緯を教えていただけますか?
プエルトリコのアーティストである自分の音楽を世界に、特にアジアにもっと広めたくて、アジアのアーティストとの楽曲制作は長年の夢だったんだ。とはいえアジアは広いから、日本という大好きな国のアーティストとコラボしたい気持ちが強かった。そんなある日、ダイキ(常田大希)と知り合ったんだけど、彼も「アメリカ大陸に自分の音楽を広めたい」と、僕と同じように模索していたんだ。だから自然と友だちになり、その後、タイニーも加わってKIZAOを制作することになったのさ。異なる大陸で生まれた2人が出逢い、共鳴し、一緒に楽曲を制作するなんて、音楽の美しき魅力そのものだよ。
今年の3月には、King Gnuの札幌ドーム公演を観に行っていましたよね。
ちょうどダイキと「何かやろう」と話していた頃で、彼のライブを観たことがなかったから招待してもらったんだ。超巨大な会場で数万人が熱狂する様子を目の当たりにして、改めて彼が日本でどれだけ人気のあるアーティストかを知ることができたよ。世界は、日本人アーティストのクオリティーの高さをもっと知るべきだと思うね。
もしかすると、日本語が障壁になっているかもしれません。
僕は国によっては障壁になる母国語のスペイン語と英語を、ダイキも日本語と英語を混ぜて歌っているように、世界は言語でアーティストの限界領域を定めるべきじゃないんだ。結局、音楽は言語よりも感情なんだから。
ありがとうございます! 最後に、あなたが思うプエルトリコや首都サン・フアンの魅力を教えてください。
東京は世界最大級の都市だけど、プエルトリコは国自体が大きくないから(四国の半分ほどの国土面積)、サン・フアンもとても小さいんだ。街中にスペインの植民地時代に建てられたヨーロッパ風の建築物が残っていながら、山間部には先住民やアフリカの文化が残っている不思議な国だよ。8時間もあれば、プエルトリコの観光地は全て回れるかな。よかったら遊びにおいで!
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